第219話
太陽が登り始め少し空が明るくなったころ、俺は自然と目が覚めた。
背筋を伸ばしてスマホを見る。
「五時かぁ……朝飯作るか」
部屋を出てリビングに行くと家具とか退かして敷いた布団で颯音と海都はまだ寝ていた。
なるべく音を立てないように料理をしていく。
「うん、味は悪くないな」
味噌汁の味見をしていると颯音の布団がガサゴソと動く。
「颯音、起きたのか?」
「……はよう。いい匂い~。顔を洗ってくる」
「おう」
颯音は布団を畳んでから洗面所に向かった。
お皿に料理を盛っているとむくりと海都は体を起こす。
「あ、そうか……春名の家に泊ったんだった」
「寝ぼけているのか? 朝飯出来たから顔洗ってこいよ海都」
「洗面所借りる」
海都も布団を畳んでから洗面所に向かう。
入れ替わりに颯音が戻ってくる。
「颯音、テーブルを運ぶの手伝ってくれ」
「おう」
颯音と一緒にテーブルを元の位置に戻してから他の家具も戻していく。
テーブルの上に朝飯を並べていると海都が戻ってくる。
それぞれが席についてから朝飯を食べ始めた。
「それで、今日はどこ行くんだ?」
「とりあえず、雪原エリアに行こうと思う」
「砂漠エリアにあるピラミッドと同じぐらい広いダンジョンが見つかったんだよ。昨日はそれの下調べで終わったんだ」
「へぇー。そのダンジョンの特徴は?」
颯音が答える。
「ダンジョンの名前はクリスタルタワー。出てくるのは多種多様な氷系のモンスターで、縦に伸びているダンジョンだね。階層の何処かに階段があって、それを見つけて次の階層にいくんだ」
「五階層ごとに中ボスモンスターが配置されているらしい」
「そうそう。今のところ二十四階層まで攻略されているみたいなんだ。このダンジョンがさ、階層が上がるたびに厄介なスキルを持ったモンスターが出現するらしくて、苦戦しているそうだよ」
「なるほどな。そこでいいんじゃね?」
「じゃあそこで決まり!」
颯音はあまり噛まずに朝飯を食べていく。
……どんだけやりたいんだよ。
その時、スマホの着信音が鳴りスマホを見て颯音に聞く。
「颯音、兄ちゃんからメッセージ来たけど」
「え……なんか嫌な予感がする! 聞かない! 言わなくていい!」
耳を塞いで聞かないようにする颯音を無視して伝えた。
「課題をやらなきゃお前の母さんに伝えるって」
高かった颯音のテンションが一気に下がった。
「終わらせた写真を撮って送れって」
「あ、明日でもいい……?」
「今だそうだよ」
俺はスマホの画面を颯音に見せると、颯音は深いため息を零す。
そんな颯音の肩に海都が手を置く。
「頑張れ、応援している」
「……手伝ってくれてもいいじゃん……」
「分からないとこあれば答えるよ」
「そそ。俺も見てやるから頑張れ」
「……頑張ります」
食器を下げ洗い物をしている間に海都が見つつ颯音は必死に課題を進めていく。
俺も途中から参加して一つの課題が終わったのは昼手前だった。
颯音は完全に集中力が切れテーブルに突っ伏している。
この様子だと二つ目は酷だな。
俺は兄ちゃんに写真付きで一つ終わったことを伝えると、続きは明日以降で良いと返信がきた。
スマホをテーブルに置いて、席を離れ冷凍庫からアイスを取り出して颯音に渡す。
「兄ちゃんが続きは明日でいいって」
颯音は無言で袋を開けて一口齧ると唸る。
「ああぁああ!! 頭に効く……!」
海都が俺を見る。
「普通のアイス……だよな?」
「普通の市販のアイスだよ。颯音がオーバーリアクションなだけだ」
俺も一口齧った。
「ふっかーつ! 早くゲームやろうぜ!」
「はいはい」
いつものテンションに戻った颯音は俺と海都を置いて、俺の部屋に向かった。
俺と海都はお互いに顔を見合わせ苦笑した。
アイスを食べてから俺と海都も部屋に行きログインした。
「はっ! やあ!」
ログインすると木人を相手に剣を振っているウィルを見つける。
そう言えば剣も使えたんだっけな。
見ていると俺たちに気づいたウィルが駆け寄ってくる。
「おかえりなさい! 皆さん。何処かに行かれるんですか?」
「雪原エリアのダンジョンに行く予定だ」
「そうなんですね」
「じゃあ行ってくる」
「はい、いってらっしゃい」
俺と颯音と海都の三人は転移装置に触れて雪原エリアに転移した。




