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第215話

 ヘッドギアを外して外を見るとまだ明るかった。


「うーん、お腹空いた」


 同じタイミングで戻ってきた颯音は背伸びをする。


「食材はいっぱいあるし、鍋にするか?」


「八月に鍋かよ……汗だらだらで飯食いたくないんだけど……」


「冷房入れるし、いいんじゃね? さ、準備しますか」


「つか、海都は?」


 未だに戻ってきていない海都を指差して聞いてくる颯音。


「先に戻るって伝えてあるし、戻ってくるんじゃない?」


 海都の方を見るとヘッドギアの起動中の明かりが消え、海都は体を起こしてヘッドギアを外した。


「お帰り。今日は鍋だって」


「……鍋? 夏に?」


「ほら、お前らも手伝えよ」


 颯音と海都に食材の準備をしている間に、土鍋とガスコンロを準備する。


「春名、切り終わったよ」


「おう」


 切った白菜と豚バラ肉を重ねて土鍋に敷き詰める。出汁を入れて数分煮込んだ。

 蓋を開けると美味そうな匂いが広がった。


「美味そう! 早く食べよう!」


「はいはい。少し冷房下げるよ」


 冷房の温度を下げて椅子に腰を下ろして。


「「「いただきます!」」」


 涼しい部屋で熱々の鍋という少し贅沢な夕飯を始めた。

 颯音と海都がモリモリ食べていきあっという間に鍋は空になってしまった。

 結構多めにしたんだけど、量を間違えたな。

 食べ終え食器も洗い終え、くつろいでいると颯音が言う。


「この後さ、どっか行こうよ」


「特に行きたい場所とかないなら火山エリアが良いんだけど」


「火山エリアかぁ……」


「リュウオウの力半減するから俺はパス」


「俺も。他にしない?」


「クロガネのお願いだからなぁ……ちょっと譲れないかな」


 颯音と海都は互いに顔を見て、颯音が聞いてくる。


「どれくらいで終わんの?」


「うーん、火山エリアに行きたいって言われただけだからさ、いつ終わるか分かんない」


「クロガネの願い、か……まぁそれなら仕方ないか。俺と颯音は適当にやっているから終わったら連絡くれ」


 颯音と海都は立ち上がり俺の部屋に向かった。

 水を飲んでから部屋に行くと二人は既にヘッドギアを付けて寝そべっていた。

 ゲームの世界に戻ると二人の姿はなく、プレイヤーカードを見ると雪原エリアにいた。


「さて、火山エリアに行きますか。っと、その前に」


 ウィルに一言言ってから行こうと思い家の中に入ると、ルーシャさんとウィルが一緒に食事をしていた。


「ハルナさん! おかえりなさい」


「ん」


 モグモグと頬を膨らませて答えるルーシャさん。


「おかえり」


「ルーシャさん、こんばんは。仕事終わったんですね」


「ん。一時間前ぐらいに。さっき、ハヤトとカイトいたよ?」


「知ってます。俺の予定が終わってから、あとで合流する予定です」


「ふーん」


 立ち上がったルーシャさんは空になった皿を流しに置く。


「どこか行く?」


「俺は火山エリアに行きますよ」


「火山エリア……私も用あるからついて行く。いいよね?」


「い、いいですけど……」


「やった。早く行こっ!」


 ルーシャさんは俺の手を引いて歩き出す。


「ルーシャさん、ハルナさん。いってらっしゃい!」


「お、おう!」


 家の外に置いてある転移装置に触れ、火山エリアに転移した。


「あっつ……相変わらず暑いなこのエリア……」


「だね。装備投影するんでしょ? いこ」


 お店に着いて装備投影をしてもらう。さっきよりかは暑さは和らいだな。

 お店を後にして街の外に出る。


「で、どこ行くの?」


「ちょっと聞いてみます。クロガネ」


 俺はクロガネを呼び出した。


「クロガネ、どっちへ行けばいい?」


『前に行った洞窟』


 俺はマップを開いて場所を思い出す。


「了解。じゃあ――」


 俺が言う前にクロガネは黒い球体と一体になる。


「どこ?」


「え、あー……ここですね」


 マップをルーシャさんに見せて説明した。


「遠いけど……歩いて行く?」


「飛んでいきます。アカガネ」


 アカガネも呼び出す。


『生まれ故郷だ!』


 いつものよりもテンションが高いアカガネ。


「アカガネ、【共鳴】をお願いしていいか?」


『いいよ!』


 黒い球体と一体になったアカガネは背中に来て、機械の羽を展開した。


「ルーシャさん、目的地に着いたらメッセージを送るんで、転移してください」


 そう言うとルーシャさんは抱っこを求めてくるポーズをしてくる。

 俺は困惑した表情をする。


「え、えっと……」


「空からの景色が見たい」


「あ、そういうことか……分かりました」


 俺はしゃがんで背中を向けた。


「……そうじゃない……」


「ん? なんか言いました?」


「別に」


 ルーシャさんがしっかりと掴んでいるのを確認して目的地に飛び立った。



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