第212話
ログインすると、家の壁を背にして座っているウィルと目が合う。手には大きい紙みたいなのを持っていた。
ウィルは手に持っている物を置いて立ち上がった。
「ハルナさん、おはようございます」
「おはようウィル。何してんだ?」
「絵を描いていました。まだ、完成してませんけど見ますか?」
「おお、見たい見たい!」
ウィルに絵を見せてもらうと、拠点から見える景色が描かれていた。
「へぇー、絵上手いじゃん。この画用紙はどうしたんだ?」
「昨日、皆さんが居なくなった後モレルさんが来て、頂いたんです」
「そうなんだ。完成したらまた見せてくれよ」
「はい!」
「じゃあ俺は行くよ」
「あ、ハルナさん!」
転移装置に触れようとしたらウィルが呼び止める。
「あの、お願いが……」
「お願い?」
「えっと、オピオさんから借りた本を全部読み終わったので返して欲しいのと、新しいのを借りてきて欲しくて」
「ああ、そんなことか。構わないけど……あ、街に連れていこうか? 自分で選んだ方が良いと思うし」
「うーん、ハルナさん多忙ですよね? そうなるとまたここに戻ってきてかなり時間が取られると思うんですけど……それに、ハルナさん耳を付けるの嫌じゃ――」
そう言うウィルの頭を撫でる。
「平気だよ。ほら、行くぞ」
俺は船を出して街に向かった。
特に問題もなく船は進み街に到着した。
桟橋に船を着けてからケモ耳のカチューシャを付けた。
ウィルも帽子を被って船から降りる。
船を回収してオピオさんのお店に行く。
「……お店閉まっているみたいだな」
お店の前に着くとシャッターが下ろされていた。
「ごめんなさいハルナさん。折角、連れてきてくれたのに……」
「謝んなくていいって。さて、これからどうしようか……とりあえず、大通りに戻ろうか」
俺とウィルは来た道を引き返した。
「うーん、このまま帰るのも勿体ないし、どっか行きたいところある?」
「え、そう言われても……うーん……」
「ハルナくーん! おーい!」
モレルさんの声が聞こえ振り向くと、片手に何かを持っているモレルさんが居た。
「モレルさん、こんにちは。今日は休みなんですか?」
「うん、今日は休み! ルーシャは仕事だけどね。あれ? ウィル君?」
モレルさんは俺の近くにいたウィルに気が付く。
「なんでウィル君がここに? 連れてきていいの? ってハルナ君その耳! すっごく似合ってる!」
「あはは……あんまり嬉しくはないですけど……」
俺はモレルさんを路地裏に連れていき、ケモ耳のカチューシャを外した。
「俺も耳を生やせば誤魔化せるってカスティさんのアイデアなんですよ。これで、初めて来た時誤魔化せたんです」
「そのアイデアいいね! ちょっと二人共お店に来て!」
モレルさんに手を引かれて俺とウィルはルーシャさんのお店に連れていかれた。
そうしてモレルさんに押し切られお店を手伝うことになってしまった。
俺は予定があるというとモレルさんは残念がっていたけど、直ぐに切り替えてウィルにウェイターの服を渡した。
「ど、どうですか?」
「「おおお!」」
物凄く似合っていて俺とモレルさんは声を揃えて驚く。
「すっげぇ似合うじゃん」
「うんうん! 超絶イケメン!」
「あ、ありがとうございます」
ちょっと照れたのかウィルは頬を掻いた。
「あ、ハルナ君。そのカチューシャ借りてもいい? 私も付けた方が良いと思うの」
「そうですね。ウィルのことお願いします」
「私に任せて、ハルナ君はいってらっしゃい!」
「ウィル、頑張れよ」
「はい!」
モレルさんはウィルを連れていった。
俺は手を振り見送ってから拠点に戻り、そこから樹海エリアに転移した。
寄り道せずに真っ直ぐヴェルガの家に向かう。家の前に着くと外でヴェルガが待っていた。
「お待たせヴェルガ。外で待ってたの?」
「そろそろ来るかなって思って」
「エスパーかよ。そんでどこでやるんだ?」
「訓練場がいいかなぁ。その方がハルナも全力出せるでしょ?」
「手加減する気はないぜ」
「そう来なくちゃ」
俺とヴェルガは適当に喋りながら訓練場に向かう。
訓練場に着き、お金を払って部屋を借りる。いつもいると思っていたガイアスさんは今回いなかった。
部屋に入ってお互いに距離を開け、ヴェルガは剣とバックラーを装備した。
俺もハガネとニア、ディルたち以外を呼び出した。
「みんな、力を貸してほしい」
『あいつと戦うの?』
頭を下げて言うとコガネが尋ねてきて俺は頷いた。
『……今回だけだからね』
「ありがとうみんな」
コガネたちはそれぞれ黒い球体と一体化していく。
俺は槍に変形させた。
「盾士じゃなかったっけ?」
「盾士だよ? 一応な。行くぜヴェルガ」
「来い、ハルナ!」




