第211話
いつも通りにの時間に起きた俺は朝飯を食べてから軽く掃除をした。
今日から颯音と海都が泊りに来る日。颯音はしばらくは泊まることは決まっているけど、海都もしばらく泊まっていくんだろうか。後で、聞いておこうっと。
粗方、掃除や洗濯を済ますと颯音からメッセージが届く。
「え、もう下にいんのかよ。まだ朝の九時なんだけど……」
道具を片して玄関に行くとチャイムが鳴った。
玄関のドアを変えると大量の荷物を抱えた颯音が立っていた。
「春名、おはよう! しばらくお世話になります! これ、母さんから」
颯音から袋を受け取る。
「お、重いなぁ……何入ってんだ?」
「野菜やら肉やら。春名、買っていると思ったからいらないって言ったんだけどね」
「普通に助かるわ。お礼言っておいて」
「おう」
颯音を家に入れ、食材を冷蔵庫にしまっていく。
これだけあれば兄ちゃんからもらった生活費を節約出来るな。
「海都はいつぐらいになる?」
俺の部屋に荷物を置いてきた颯音が尋ねる。
「昼手前って言ってた。そうだ。昨日さ、面白いことがあってさ……」
俺は昨日の蟹モンスターの襲撃のことを颯音に話した。
「何それ! なんで俺を呼ばなかったんだよ!」
「拠点にいなかっただろうが」
「あの後ログアウトしなければよかった……」
「颯音、布団を運ぶの手伝って」
俺は兄ちゃんの部屋に入って、押入れにある来客用の布団を取り出した。
「春名の部屋に運べばいいのか?」
「とりあえずは俺の部屋だな。二人には悪いけどリビングで寝てもらう予定だ。俺の部屋じゃ流石に三人は無理」
「行けるでしょ」
「お前らがくっついて寝るなら構わないけど?」
「……リビングにします」
「素直でよろしい」
リビングのソファに座ってテレビを見ていると、颯音がスマホをいじりながら言う。
「今さ、拠点襲撃のことを調べてたんだけど、他のクランでもあったらしいよ」
「へぇー、俺たちのところだけじゃないんだ」
「拠点があるクラン限定みたい」
「ふーん」
そんな話をしているとスマホが鳴り、海都から下に着いたとメッセージが来た。
「海都からなんだけど、颯音も来いって」
「なんで俺も?」
「さぁ……?」
俺と颯音はとりあえずにマンションの下に行くことにした。
「お待たせ……って荷物多っ!?」
海都の周りには色とりどりの袋が地面に置かれていた。
「悪い……母親が持っていけって言うもんだからさ……」
「ちなみに中身は何?」
「出かける前に渡されたから中身は知らない」
「海都、中身開けていい?」
「おう」
颯音が黒い紙袋の中を見ると箱が入っていて、蓋を開けると青い色のシャツが入っていた。
他の袋も確認してみたら、同じく洋服や靴、鞄などが入っていた。
海都は深いため息を吐いた。
「須藤、全部俺の部屋に置いてきてくれ」
「かしこまりました」
須藤さんは袋を回収して車の中に放り込んだ。
「春名様、颯音様。坊ちゃまのことよろしくお願い致します」
「もう帰ってくれ須藤!」
海都は須藤さんを無理矢理運転席に押し込んだ。
車内から頭を軽く下げてから車は走り出した。
道行く人の視線に気が付いて二人を連れて家に戻った。
「二人共、まだ早いけど昼飯にする?」
「この後ゲームするしな」
「昼飯作るから手伝えよ」
颯音と海都に料理を手伝ってもらい昼飯を作りあっという間に食べ終わる。
一休みしていると颯音が言う。
「今日何する?」
「俺は知り合いと手合せするから、終わるまでパス」
「春名が手合せ? ずりぃ! 俺もやりたい!」
「嫌だよ。海都はどうすんだ?」
「それなら俺も別行動するわ」
「折角、泊まってるのに全員バラバラかよ……」
口を尖がらせて文句を言う颯音。
「まだ日数あるんだし、別にいいんじゃね? そう言えば海都は何日泊まる予定なんだ?」
「一応、颯音と同じぐらいは泊まる予定だけど……途中、帰るかも」
「ふーん、そうなんだ。よし、じゃあ行きますか」
二人と一緒に自室に戻り、床に二人が横になれるように布団を敷く。
「んじゃ、ゲームの世界で」




