第189話
「コガネ」
前に出た俺はコガネを呼び出す。
『なんか汚い……』
呼び出されたコガネは嫌な顔をして黒い球体と一体になる。
『どういう状況なの、これ? あれ? ハルナのレベル下がってる?』
「それは後で説明するよ、それより、あいつを一緒に倒そうぜ」
『スケルトン? まぁいいけど』
黄色い球体は俺の両手に移動して手の甲にリールがついた特殊な革手袋になる。
そう言えば、トランスした武器を一度だけ改造できるってあったよな。俺の場合は【エキストラトランス・レゾナンス】に統合されたけど、出来んのかな?
「リヴァンプ……なんて……お?」
改造を行う時に使う言葉を唱えると槍が光りだし、球体と一体化しているコガネがはじき出される。槍の口金辺りに球体が嵌る大きさの穴が開き、コガネが一体化した球体がその穴に嵌ってしまった。
球体が嵌ると槍の柄は黄色になり、穂先も稲妻ようにギザギザをしている。この槍の使い方が頭に流れてくる。
『……なにしたのさ? ハルナ』
「説明は後! 来るぞ!」
スケルトンは五月蠅い音を立てながら駆け出してきて剣を振り上げてくる。俺は柄で防ぎ受け止め、槍を回し剣を弾く。
そのまま、体を回転させ足元を薙ぎ払う。
体勢を崩したスケルトンに追い打ちをするが盾で防がれてしまった。
「それならそれで!」
穂先から【電気の糸】を出してスケルトンをぐるぐる巻きにして振り回して壁に叩きつけた。
目玉の部分に穂先を突き立てて俺は叫んだ。
「【サンダーボルト】!!」
穂先から雷が放たれ激しい光と轟音が響き渡り、俺は衝撃により吹き飛ばされ、後ろにいた海都が受け止めてくれた。
「派手にやり過ぎだ」
「あはは……悪い悪い、助かったぜ」
スケルトンがいたところを見ると、スケルトンの姿はどこにもなかった。倒し切ったようだな。流石、コガネの最強のスキルだ、ダメージが痛い。俺は【治癒蜂兵】を召喚して体力を回復させた。
改造をすると武器とコガネたちが合体できるようになり、スキルを武器媒体にして使えるようになった。
コガネたちのスキルを使うと威力や効果が低下するデメリットがあったけど、これのおかげでそのままの威力と効果で使えるのだ。共鳴技を使えないのが残念だけど。
攻撃のレパートリー増えるし槍以外も改造しておくか。
「盾士からかけ離れたことしているぞ、ハルナ」
トオルさんは腹を抱えていう。
「盾士って書いてあるから盾士ですぅー」
『ハルナ、なんかお菓子ない?』
【共鳴】を解除したコガネがお菓子をねだってくる。
「お菓子か。あるけど、ここが終わってからな」
『えー、ケチ。少しぐらいいいじゃん!』
「汚いって言ったところで食いたいのか?」
コガネはキョロキョロと辺りを見渡す。
『あとで食べるからね』
「はいはい」
「ハ、ハルナさん……」
いつの間に物陰に隠れていたミライさんが弱々しく聞いてくる。
「そんなところに隠れてどうかしたんですか?」
「そ、その……く、蜘蛛も……」
ミライさんはコガネを見て怖がっている。
「ミライさん、蜘蛛……苦手で?」
そう聞くとミライさんは頭を激しく振った。
「それも、あるんですが……前に樹海エリアで黄色の蜘蛛に襲われて……」
「樹海エリアで? ……もしかして、ゴブリンに襲われてました?」
「な、何故そのことを知っているのですか?」
「やっぱりかー」
俺は軽く息を吐く。
ミライさんって前に樹海で助けた二人組の女性プレイヤーだったのか。装備が違ってたから気づかなかった。
「実はですね……」
俺はあの時のことをミライさん伝えた。
「そうでしたか……そ、その節は助けて頂きありがとうございました」
ミライさんは怯えながらもコガネに頭を下げてお礼を言う。
「ありがとうだって」
『あっそ』
コガネは素っ気なく答えた。照れているのかな?
『な、なんだよ!』
「別にー」
「話が終わったなら先に進むぞー」
「はーい。コガネ、一旦戻す――」
そう言う前にコガネは再び黒い球体と一体となった。
「まぁ良いけど」
再び歩き出した俺たちは遭遇するモンスターを片っ端から倒して先に進んでいった。




