第188話
乗り込んだ幽霊船はいかにも幽霊が出そうな雰囲気を醸し出した。
床もボロボロでいたるところで抜けてて、今にも落ちそうだ。
俺たちがデッキを歩く度にミシミシと音が聞こえてくる。普通に怖いんだけど!
エントランスの扉に近づくとゆっくりと扉が開く。
不敵な笑みを浮かべるトオルさんが言う。
「入れってことだな……! 面白れぇ!」
俺たちは警戒しながらゆっくり中に入る。船内は豪華なシャンデリアが薄く光っていて視界が少しくらい。俺はアカガネのスキル【蛍火】で視界を確保した。
「うおっ! びっくりした……」
俺が出した火の玉に驚く颯音。
「颯音……ビビってんの?」
「び、びってねーし!」
「あっそ」
俺は火の玉をいくつか生成して船内に飛ばす。船内はボロボロで家具全てがひっくり返ったり、壊れていたりする。それよりも、床や壁についている赤い模様は血の跡か? 凝ってるな。
船内を見渡し、通路を四つ見つける。
「それじゃあさっきのパーティーに分かれて進んで行きましょうか」
「俺たちは右の通路を行こう」
「わかりました」
「了解です!」
Aグループのベオルさん、ユリーナさん、颯音は右の通路。
「そんじゃ俺たちは左の通路だな」
「はいはいーいくよリリアス」
「は、はい!」
Bグループのグレンさん、エレナさん、リリアスさんは左の通路。
「俺っちたちは正面のにするっすか?」
「そうしますか。ルーシャもそれでいい?」
「うん、大丈夫」
Cグループのアレンさん、フリッジさん、モレルさん、ルーシャさんは正面の通路。
「じゃあ残ったのは後ろの通路か」
「決まったならさっさと行くぞ」
そう言いてトオルさんは歩き出した。
「ちょっとトオルさん! もう……」
先に行くトオルさんを追って俺、海都、ミライさんは後ろの通路に進んで行く。
通路は暗く、壁にかかているランプで辛うじて見えるぐらいで、先なんてなんも見えない。
面倒くさくなった俺は【蛍火】を使う。本当に便利なスキルだな。
「ハルナさんは魔法使い……なんでしょうか?」
ミライさんが聞いてくる。
「グレンさんから聞いてません?」
ミライさんは首を横に振った。
「いえ、私はなにも。面白い奴としか聞いていなくて」
「あ、そうですか……俺は盾士ですよ」
俺は盾を構えてミライさんに見せるとトオルさんが噴き出す。
「なんで笑うんですかトオルさん……」
「別に。くっくっく……知り合いの盾士にお前を見せたら、あんなのは盾士じゃねーって言われるのが目に浮かんでな」
「違うんですか?」
ミライさんが首を傾げる。
「盾士です。ちょっとだけ特殊な。そのうち見せますよ」
「そうですか」
「話し中に悪いんだけど、モンスターの反応だ」
「流石海都。こんな時でも索敵助かるぜ。どんな感じ」
「前方から三体……っ! 春名! 範囲防御を早く!」
「【ラウンドフォース】!」
全員を囲うように範囲防御スキルを展開。すると、壁から無数の白い手が生え攻撃してくる。
レベルが下がっているせいでキツイ!
「長くはもたない……!」
「十分だ!」
トオルさんは黒い大剣を構え右壁の白い手を。ミライさんは薙刀を構え左壁の白い手を切り裂いて行く。
「【アストラルファイア】!」
海都が前方に炎の矢を放ち、前方からくる半透明なモンスターのゴーストを倒していく。
白い手の数がドンドン減っていき、ようやく白い手がいなくなった。
「【治癒蜂兵】」
緑色の小さな蜂が三人の元に飛んでいき減った体力を回復する。
さっきの戦闘のおかげでレベルが3上がった。SPも[3]獲得。もう手に入らないと思ってたけど、獲得量は少ないけどSP手に入るんだな。
「ハルナさん、本当に盾士なんですか?」
ミライさんは頭を傾げて聞いてくる。
「ハルナ、今度はお前が戦闘してみろよ」
「……やってみますけど、レベル低いんで助けてくださいよ」
「大丈夫だ。俺も転職しちゃってひっくいけど余裕だったぞ」
「へ?」
俺はプレイヤーカードをみると、トオルさんのレベルは10だった。
「転職したんですね」
「お前もな」
「またモンスター反応」
「ほら、モンスターのお出ましだぞ」
ガシャンガシャンと鉄の音が聞こえてきて、鎧を着た骸骨のモンスターが姿を見せる。
スケルトンナイトか……レベルは40。行けるか? 一体だけだしやってみよう。俺は盾を槍に変形させた。




