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第186話

 拠点に転移すると動く木人と戦っている颯音の姿が視界に入る。

 動いて攻撃してくる機能なんてなかったけど、颯音が機能を追加したな。


「ヒスイ! ギン!」


 颯音は二体の狼と巧みな連携攻撃で木人の体力がゴリゴリ減っていく。


「あっ! しまっ――」


 躓いてしまった颯音は木人の攻撃をもろに受けてしまい海までぶっ飛ばされてしまった。あーあ、何してんだあいつ……

 二体の狼は急いで颯音の元に駆け出した。俺もそのあとを追っていく。


「何してんの……」


「あはは……油断した」


「木人に機能を追加したのか?」


「あ、うん。材料なかったから金出して追加した。レベル1~50まで設定できて、ステータスとか変えれるよ」


「お前のことだからレベル50で設定しているんだろう?」


「ついでに敏捷力に特化してるぜ! すっげぇ楽しい!」


「転職してレベル戻っているくせによくやるよな」


 立ち上がった颯音は尻尾を振っているヒスイとギンの頭を撫でる。


「そう言えば海原の組合所に行った?」


「ああ、行ったよ。お前がカスティさんに事前に言ってたのは予想外だったけどな」


「たまたまだよ。俺もカスティさんが対応してくれてさ、そん時に春名も来るかもって伝えただけ」


「ふーん」


「ヒスイ、ギン。またあとでな」


「「ワフ!」」


 颯音は二体の狼を戻す。


「春名も木人と戦う?」


「俺はいいや」


「そう? うーん、いい天気だ」


 伸びをしながら颯音は言う。


「いつも快晴だろう」


「確かに」


 そんな話をしていると海都がログインしてくる。


「疲れた……」


「どうしたんだ?」


「ちょっと課題を終わらせてきただけ。これで泊まりは全力で遊べる」


「お疲れだなそれは」


「春名も終わってんだろ?」


「おう、とっくに終わってる」


「え……二人共課題終わってんの……?」


 ありえないという表情をする颯音。


「俺たちは気兼ねなくゲームできるけど、颯音は課題やんないとな。しなかったら兄ちゃんに怒られるぞー」


「冬真兄に怒られるのだけは嫌だ……!」


 颯音は中学生の時に兄ちゃんにこっぴどく怒られたことを思い出して体が震えている。

 あの時は俺も怒られたっけな。


「ちょっと、課題やってくる!」


 そう言って颯音は慌ててログアウトしていった。


「春名の兄ちゃんってそんなに怖いのか?」


「厳しい時もあるけど、普段は優しいよ」


「ふーん。……話を変えるんだけど、あの木人なに?」


 海都は構えている木人を指差して聞いてくる。


「あれ使ってスキルの試し撃ちしたり、対戦の練習相手になる木人。便利だからいつでも使っていい」


「へぇーそんなの置いたんだ。よし、いっちょやってみるか」


 海都は木人に近づいていく。


「あ、海都! ストッ――」


「あああああ……!」


「ップ。遅かったか……」


 設定が颯音仕様だったのを思い出して海都を呼び止めようとしたけど、木人の範囲に入ったのか、目にも止まらない速さで動き海都を一発ぶん殴り、海都は海まで飛ばされてしまった。うん、デジャブ。

 木人の設定を弄って動かないようにした。


「だ、大丈夫か?」


 砂浜に仰向けでなってる海都に声をかける。


「死ぬかと思った……」


「悪い、颯音の設定だったの忘れてた」


「あいつ、おかしいだろう……」


 苦笑いした海都は身体を起こす。


「あれ? 春名のレベル下がってる……」


「改造盾士に転職したからな。因みに颯音も転職したぞ」


「いつのまに……転職してないの俺だけ?」


 俺はモレルさんとルーシャさんのプレイヤーカードを確認する。


「モレルさんとルーシャさんもレベル戻ってないようだし、まだじゃね? てか、海都が転職しない理由はリュウオウとのシナジーある上位職が出ないからだろう?」


「そうだけど……まだ出てないんだよな……」


「そうなんだ。うーん、もう一回ぐらいリュウオウが進化するか、ドラゴンをもう一体テイムすれば出るんじゃない? 知らんけど」


「そうだと思いたい」


 よし、と言いながら海都は立ち上がる。


「春名、この後時間ある?」


「夕飯前までなら平気」


「それならさ、海賊狩り行こうぜ!」


 海都は満面の笑みで凄く面倒くさい提案をしてくる。



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