第159話
トオルさんは開始早々に大きくジャンプして大剣を振り下ろす。
俺は防御力が上がるスキルを使い盾で防ごうとしたが、トオルさんの一撃が重く盾は弾かれ、俺は後ろに飛び退く。
「そんな弱い盾で俺の攻撃を受け止められるとでも思ったか? ハルナ」
盾で防いだのに手が痺れている。
トオルさん相手に盾で防ぐのは間違いだったな。
「みんな、【共鳴】を」
俺の周りにある六色の球体はそれぞれの定位置につき、装備が変わる。
翅だけはクモガネとアカガネの二体同時共鳴の翅になっている。
アオガネとの【共鳴】で変わった長靴は水中用だと思ったけど、陸でも問題なく歩けるな。
「そう来なくちゃな!」
トオルさんは大剣を横に構え、薙ぎ払う。
「【共鳴技・ブレイカードリル】!」
高速で回転するドリルでトオルさんの一撃を受け止めると火花が散る。
しばらくは拮抗してたけど、トオルさんのパワーに負けて吹き飛ばされる。
俺は空中で体勢を整える。
「どんどん打ってこいよハルナ!」
「言われなくても!」
アオガネのスキル【水流操作】を使い、海の水を操り頭上に集める。
更に、クモガネのスキル【凍てつく風】で集めた水を凍らしてトオルさんに目掛けて落とす。ついでに赤い翅を切り離して、氷塊にくっつけて加速させた。
「お前は魔法職かよ! 【粉砕】!」
トオルさんは大剣を投げ氷塊に突き刺すと、巨大な氷塊は粉々になる。
「嘘だろう――っ!」
いつの間にかトオルさんが俺よりも上にいた。
振り下ろされる大剣を俺はドリルで受け止めるも地面に落とされる。
地面にぶつかる寸前で翅を広げ、ぶつかることを回避する。
「ぼさっとしてんじゃねー!」
そう言いながらトオルさんは追撃してくる。
休んでいる暇がないな。
俺は飛んでトオルさんの攻撃を躱し、距離を取り、両手を合わせる。
「【共鳴技・ブレードワイヤーボム】」
ひし形の爆弾を上限の四つ作る。
「逃げんな! 【瞬歩】」
視界に捉えていたトオルさんの姿が一瞬で消えた。
「もらった!」
突如、頭上に現れたトオルさんは大剣を雄叫びを上げながら振り下ろす。
俺は手に持っているひし形の爆弾を全て投げ叫ぶ。
「バースト!!」
すべての爆弾は一斉に光りだす、切れ味が鋭いワイヤーが暴れ狂うように広範囲に広がっていく。
流石のトオルさんも大剣を盾にして防ぐ。完全には防ぎれなかったのか二割ほどダメージが入っていた。
攻撃力は高いけど、防御面は低いようだな。
「くそう……油断した。多彩過ぎなんだよお前の攻撃は」
「まだまだ行きますよ。【共鳴技・スパイダースネットボルト】!」
両手から電気を帯びたワイヤーを伸ばしてトオルさんを捕らえる。
トオルさんは大剣を振り回してワイヤーをぶった切る。
『見てらんない、クロガネあれやるよ』
『今なの?』
『いつやるんだよ、今でしょ!』
『はいはい』
『シロガネ、一旦離れてくれる?』
『仕方ないわね』
コガネとシロガネとクロガネが【共鳴】を解除する。
そのせいで、トオルさんへの攻撃が止まる。
直ぐにコガネとクロガネが同時に共鳴して革手袋の姿が変わる。
手の甲にはリールがついて、指の先には小さなドリルが付いている革手袋だ。
『ハルナ、使い方わかるよね?』
「……ああ、分かってるよ」
『ちゃんと使いこなしてよ?』
俺はクロガネの問いかけに頷く。
「【共鳴技・ペンデュラム】」
十個の小さいドリルは回転しながら指から放たれトオルさんを襲う。
トオルさんはドリルを叩き落そうとするが俺はワイヤーを引いて方向転換させ、トオルさんの攻撃を避ける。
「クッソ!」
自由自在に動くドリルを捌き切れなくなったトオルさんはワイヤーにぐるぐる巻きにされていく。
俺は一気に飛びトオルさんに近づき、腹辺りに蹴りを入れ叫ぶ。
「【共鳴技・ハイドロカノン】!」
至近距離での圧縮された水の弾丸を食らったトオルさんの体力は半分を切った。
よし、あと半分だ。
「やってくれたな……!」
不敵に笑うトオルさんから黒いオーラが放たれる。
嫌な感じがした俺は咄嗟に距離を取った。
ぶちぶちとワイヤーを引きちぎるトオルさんは大剣を構える。
「耐えて見せろよ! ハルナ!」
大剣を振り下ろすと、黒い特大の斬撃が俺に向かって放たれる。
避けきれないと思った俺は防御系のスキルを全て使い防ぐことに。俺は黒い光に包まれた。
次に気が付くと俺は仰向けで倒れていた。
「いや~楽しかったぜハルナ」
満足気に笑うトオルさんを見て、自分の体力を見るとゼロだった。あそこから負けたのか。
「……強すぎですよトオルさん」
「はは、まぁな!」
手を差し伸べるトオルさんの手を掴み立ち上がる。
「あーあ、負けちゃったな。なんか悔しいなぁ」
「お前からの挑戦ならいつでも受けてたつぜ。ほれ、報酬の石だ」
トオルさんは石を差し出すが、俺は受け取らなかった。
「いいのか?」
「はい、今度勝ったときに全部もらうんで」
「おっ、おもしれぇ事を言うな。負けねーからな?」
俺はトオルさんと熱い握手を交わした。
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