第157話
兄ちゃんが夕飯の準備をしている間に俺は洗濯物を取り込んだり、風呂を洗ったりする。
「兄ちゃん、他に手伝うことある?」
「もう特にないからゆっくり休め春名」
「あ、うん。わかった」
兄ちゃんに言われ俺はソファーに座り、テレビを見ることにした。
「兄ちゃん、明日仕事?」
「仕事、ちょっと帰りが遅くなるかも」
「そうなんだ。弁当いるなら作るけど」
「じゃあ頼むよ。春名、運ぶの手伝って」
「はーい」
皿に盛られたものからテーブルに運んでいく。
兄ちゃんと向かい合わせでテーブルに座り、一緒に夕飯を食べる。
風呂を済ませてからログインした。
「颯音は……あれ? 居ないな」
颯音のプレイヤーカードを確認してみるとログアウト状態だった。
やるって言ってたんだけどな。まぁいいか。
コガネたちのご褒美を買いにルーシャさんの店に行こう。
俺はインベントリから船を取り出して、船を自動操縦にして街に向かう。
水門を潜り、桟橋に到着。船をしまってルーシャさんの店に向かった。
プレイヤーカードを確認するとルーシャさんとモレルさんはどっちもログインしているようだ。
お店に入るとレジにいるモレルさんと目が合う。
「ハルナ君! いらっしゃい~」
「モレルさん、こんばんわです」
「こんばんわ。今日は何にする?」
「お勧めでお願いします」
「分かったわ。あ、そうだ。ケーキ持って行くから、奥の部屋に行ってて」
「え、はい……」
俺は奥の部屋にいき、扉をノックすると中から「どうぞ」とルーシャさんの声が聞こえてくる。
「ルーシャさん、春名です」
俺は扉をゆっくり開けて入る。
「ハルナ? どうかした?」
「あ、いや……ケーキを買いに来たらモレルさんに、奥にって言われて……」
「そう。……試作あるけど味見する?」
「え、えっと……じゃあ頂きます」
「持ってくるから座ってて」
部屋に入った俺は適当な椅子に座り待っていると、モレルさんが入ってくる。
「ハルナ君、はいこれ」
モレルさんから箱を受け取り、代金を支払った。
「お待たせ。コガネたちの分もあるから」
「こんなに……ありがとうございます」
俺はインベントリにコガネたちの分をしまっていく。
「呼び出さないの?」
「ここじゃ狭いので、拠点に帰ってからいしようかなって」
「拠点? クラン設立した?」
俺は頷く。
「俺と颯音と海都の三人しかいないですけど」
「私入りたい!」
「ルーシャが入るなら、私も入れて!」
「分かりました。プレイヤーカードを出してもらってもいいですか?」
二人からプレイヤーカードを受け取り、俺のプレイヤーカードを重ねてから二人に返した。
「「テイマーズ?」」
二人の声が重なる。
「モンスターを仲間にしているからテイマーズなの? いい名前だね」
モレルさんが褒めてくれた。
「うん、いいと思う」
ルーシャさんも褒めてくれて少しだけ照れてしまった。
「名前考えようたの颯音なんですけど、ありがとうございます」
「お店閉めてくるから、お店の前で待ってて」
「もうお店閉めちゃうの! バイトの子たちどうすんのよ!」
「ちゃんと給与分渡す」
「まだいるお客さんは?」
「お店の無料にするから帰ってもらう」
「あ、ちょっと!」
モレルさんの制止の声も聞かずにルーシャさんは部屋を出ていく。
モレルさんは長いため息を吐く。
「えっと、それじゃ桟橋で待ってますね」
「分かったわ」
諦め気味にモレルさんは答える。
俺はお店を後にして下層にある桟橋に向かった。
「よ、ハルナ。探したぞ」
船を出して待っているとトオルさんが声を掛けてくる。
そうだ、トオルさんと戦う約束があったんだった。
「何してんだ? こんな所で。 暇なら約束果たしてもらうぞ」
「友人を待っているだけです。拠点に戻るところなんで、その後なら大丈夫です」
「お、そうか! やっとやれるんだな! てか、拠点持ってんだな」
そんな会話をしているとモレルさんとルーシャさんがやってくる。
「お待たせ……誰?」
「トオルだ。よろしく」
トオルさんは手を差し出すがルーシャさんは、手を取らずに俺に聞いてくる。
「この人もクランに入る?」
「え、トオルさんは違いますよ」
「? じゃあなんでここに?」
「ちょっと約束で。この後、拠点で模擬戦を」
「ふーん」
そう言ってルーシャさんは船に乗り込んで行く。そのあとをモレルさんが続く。
「女ってわかんねー」
「あはは……さ、さぁトオルさんも乗ってください」
「おう、邪魔するぜ」
トオルさんも船に乗り込んで行く。
操縦席に行き、目的地を設定してから自動操縦に切り替える。
船はゆっくりと動き出し街を出た。
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