第139話
ぐったりして横長い椅子に寝込むグレンさんをほっといてベオルさんが話しを進めてくれて、夕飯後に行くことになり、待ち合わせ時間を決めた。
「それじゃ、またあとで。グレンさん、お大事に」
「おう……」
弱々しくも手を振るグレンさん。
俺は苦笑いを浮かべ一旦ログアウトした。
「あ、トオルさんに連絡するのを忘れてたな……あとで連絡すればいいか」
スマホに手を伸ばして画面を見ると颯音と海都から連絡が来ていた。
明日、勉強会しないかという内容だった。
俺は構わないと連絡を返すと直ぐに返事が来て、海都の家でやることに。俺がいない間に二人で決めたか。まぁいいけど。
「了解っと……」
またすぐに返事が来て、メンテ開けにやろうとことでヘッドギアも持って来いとのこと。こっちがメインな気がする。
スマホをポケットにしまいリビングに向かう。
「んー、買い出しにいくか」
部屋に戻って急いで着替え、近所のスーパーに向かった。
籠を持って店内を回る。適当に手に取り籠に入れていく。
「春名様」
「うわっあああ!?」
お惣菜に手を伸ばしていたら後ろから耳元で名前を呼ばれて思わず声をあげてしまう。
驚いて振り向くと海都と初めてオフ会した時に、海都のことを坊ちゃまと呼んでいた男性が居た。
「驚かせてしまい申し訳ございません……」
「えっと、海都のところの人ですよね……?」
「須藤と申します」
周りの視線がこっちに向いてることに気が付き、男性の手を取り、急いで買い物を済せスーパーを出る。
近くの公園のベンチに座る。
「俺になにか用ですか?」
「そういう訳じゃないのですが、お礼が言いたく、つい声を掛けてしまって……」
「お礼?」
俺は頭を傾げた。お礼を言われるよなことはしてないと思うけど。
「はい、坊ちゃまと仲良くして頂いてありがとうございます。坊ちゃまは幼少期の時、ご友人とトラブルがありまして、それ以降ご友人を作っても学校までの関係止まりでした。ですが、坊ちゃまは春名様と颯音様をご自宅に呼ぶまでの仲に……! それが嬉しくて嬉しくて!」
須藤さんは興奮して立ち上がった。
「落ち着いてください須藤さん」
「申し訳ございません……」
須藤さんは座りなおした。
「春名様、どうか坊ちゃまとはこれからも仲良くして頂ければ幸いです」
「言われなくても海都は仲間ですから」
そう言って俺は立ち上がる。
「それじゃ、俺はこれで」
須藤さんは立ち上がって深くお辞儀する。
帰宅した俺はパッパッと支度を済まして夕飯を作る。
スープを作り終わると、ガチャっと玄関の鍵が開く音がした。
「ただいま」
遅くなると言っていた兄ちゃんが帰ってくる。俺は出迎えに玄関に向かう。
「兄ちゃんおかえり。帰り早くない?」
「連絡したぞ?」
「え……?」
急いでスマホを見たけど兄ちゃんからは連絡は来てなかった。
「来てないけど……」
兄ちゃんはスマホを取り出した。
「すまん、送れてなかった」
兄ちゃんは手を合わせて謝る。
「ああ、そうなんだ。急いで作るから兄ちゃんは先に風呂に入ってて」
「いや、出前を取るから――」
「だーめ! ほら、さっさと入って!」
兄ちゃんを風呂場に連れていって、急いで料理を仕上げる。どうにか兄ちゃんの風呂が終わる前に作ることが出来た。
「春名、これ」
兄ちゃんは俺に空の弁当箱を渡す。
「明日は休みだから弁当はいらない」
「そうなんだ。出かけるの?」
「いや、部屋に籠ってる」
「わかった。あ、明日友達の家に遊びに行ってくるから出掛ける」
「颯音の家か?」
俺は首横に振った。
「ううん、別の友達の家。まぁ颯音も一緒だけど」
「わかった。迷惑かけんなよ」
「わかってる」
兄ちゃんと色々と談笑しながら夕飯を済ませた。
部屋に戻った
約束の時間に早速ログインをする。
そして、ルーシャさんのお店の前に行くとグレンさんたちは既に揃っており、その中に何故かトオルさんもいた。
「お、待ってたぞ」
「トオルさん? なんでここに?」
「そりゃあ、おまえが連絡をしてこなかったからだ。ディオガに聞いてこの店を探してたら、こいつら見つけてな。お前を待ちながらだべってたんだよ」
「すいません、忘れてました」
「まぁいいさ。それでいつしてくれるんだ?」
「これからダンジョンに行くんで、その後……すいません、明後日でもいいですか? ちょっと明日は用事があるんで……」
「明後日ってことはメンテ明けだな。楽しみにしてるわ」
それだけ言ってトオルさんは立ち去っていく。
「あんたも大変ね~」
「あはは……」
エレナさんに言われ苦笑いをする。
「よし、それじゃ砂漠エリアに向かうぞ」
俺たちは街の中心にある転移門に向かい、砂漠エリアを選んで転移門を潜る。
イベントでしか砂漠エリアに行ってないから楽しみだな。
次回の更新は2/10に予定しております。




