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第128話

 二人の女性プレイヤーを安全なところに置いてから、急いでコガネの元に戻る。


「うわ……やったな、これ……」


 雷が落ちたところは木々も地面も真っ黒に焼けていた。

 その中でコガネだけが立ち尽くしていた。

 コガネがレベル35で習得したスキル【サンダーボルト】。コガネのスキルの中で一番威力があるスキルだ。

 ただ、中範囲にいる敵味方関係なく攻撃してしまうと言うデメリットがある。

 基本的に一緒に行動しているからコガネは使おうとはしないから初めてみたな。


「おつかれコガネ」


「シュ!」


 声を掛けるとこんなの余裕だよと言いたげな表情をするコガネ。流石だな。

 コガネに近づこうとすると、コガネから眩い光が放たれ、みるみるうちにコガネの姿が変わっていく。

 光が収まると子供なら一人ぐらいは乗せるぐらいの大きさまで成長していて、体はより黄色が増し、腹の部分にギザギザとした青い線がある。


 俺は驚きながらコガネのステータスを確認した。

 コガネはイエロースパイダーからエレキスパイダーに進化していた。

 さらに、四つのスキルが大幅に強化されている。

【麻痺の牙】は【強力麻痺の牙】に。

【ビリビリの糸】は【電気の系】に。

【吸血】は【強吸血】に。

【電気の牙】は【雷の牙】だ。

【放電】【サンダーボルト】【睨む】【威嚇】の四つは変わらず、耐性系のスキルは全部無効になっていた。


 一通りコガネのステータスを確認し終わると、目の前にウィンドウ画面が現れ、そこには「スキル【念話(蟲)】を習得しました」と書かれていた。

 念話? 念話……もしかして、共鳴を使わなくてもコガネたちと話せるのか?


「コガネ」


『なに?』


 おお、コガネが何を言っているのかわかる!

 すげぇなこのスキル!


『ニヤニヤして気持ち悪いよハルナ』


「ひっでぇことを言うなコガネ」


 そう返すとコガネは六つの目が見開く。


『僕の言葉、分かるの……?』


「まぁな。コガネが進化した時に【念話(蟲)】ってスキルを覚えたんだよ。あ、遅くなったけど進化おめでとう――え! ちょまっ!」


 コガネにのしかかられ下敷きになる。

 アカガネとアオガネはいつの間にか離れていた。


「……何すんだよコガネ」


『なんとなく?』


「なんとなくって……照れ隠しか?」


『ち、違うモン!』


 コガネは慌てて退く。


『ハルナ……私の言葉もわかる?』


 共鳴を解いたシロガネが聞いてくる。

 周りを見ればクモガネとクロガネ、アカガネとアオガネも集まっている。


「分かるよ」


 照れながら言うとクロガネ以外が擦り寄ってくる。

 クロガネに視線を送るとぷいっと顔を背けた。


『ハルナ! あの時はごめんなさい! 庇ってくれてありがとうハルナ!』


 明るい声でアカガネが話しかけてくる。


「アカガネが言うあの時ってシルクシープの時か? 気にしてねーよ」


『ハ、ハルナ……わ、私の声も……聞こえる……?』


 おどおどしながらアオガネも聞いてくる。


「おう。もちろん聞こえているよアオガネ」


『うん……!』


 みんなの頭を順番に撫でていると、颯音からメッセージが飛んできて「まだ時間掛かる?」と言う内容に、俺はもう少し掛かると返信した。


「そろそろ目的地に行かないと」


 立ち上がりマップを開いていると後ろから近付いてくるコガネが股下に頭を入れてきたもんだから、俺はコガネに乗っかるように倒れた。


『ハルナ、どこ行くの?』


「どこって……花がいっぱい咲いてるところ……だけど……」


『掴まってて。シロガネとクモガネとクロガネは共鳴。アカガネとアオガネはハルナに掴まる』


 五体はコガネの指示通りに動く。

 そして、コガネは俺を乗せたまま移動を始めた。

 俺を乗せてもコガネは問題なく移動している。


「コガネ! 重くないか!」


『平気!』


 コガネのスピードが更に上がる。

 あんな小さかったコガネが大きくなって、俺を乗せるとはな。さらに頼もしくなって成長したなぁ。


「頼りにしているよコガネ」


 俺はボソッと小声で呟いた。

 入り組んでいる樹海を物ともせずにコガネは進んでいき、あっという間に目的地にたどり着く。





次回は1/15に予定しております。

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