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第118話

 二人の所に戻ると、ルーシャさんが頭を傾げて尋ねてくる。


「幼虫は?」


「仲間にしましたよ」


「そうなんだ。これで五体目だね」


「あー……実は十一体目です」


 そう言うとルーシャさんは目を見開く。


「いつの間に……見たい!」


 きらきらした目で見てくるルーシャさん。

 俺は目を逸らしてボソッと呟く。


「全部まだ幼虫なんですよね〜……」


 ルーシャさんは一気に嫌な表情になった。


「じゃあいいや……」


「進化したら見せに行きますよ」


 微笑んだルーシャさんは小指を立てて言う。

「」

「約束」


「……分かりました、約束です」


 俺はルーシャさんと指切りをした。

 それから俺たちは街に戻って行った。


「それじゃ、私はこれで」


「はい、また誘ってくださいねカレンさん」


「お店、来てね」


「ああ」


 手を振ってからカレンさんはログアウトしていく。


「ハルナ、この後時間ある?」


「この後?」


 時間を見ると夜の七時だった。

 もうこんな時間か、遊んでいるとあっという間だな。


「夕飯食ってからなら大丈夫ですけど」


「わかった。ログインしたらお店に来てね。待ってる」


 ルーシャさんはそう言って目の前から消えた。お店に転移したんだろう。

 メニュー画面を操作して俺もログアウトした。

 ヘッドギアを外してベットから降りると、突然部屋のドアが開いて兄ちゃんが入ってくる。

 兄ちゃんは少し怒っている様子だ。


「遊び過ぎだぞ、春名」


「ごめんなさい……」


「夕飯冷めちゃう前に食えよ」


「はい」


 部屋を出た俺は、兄ちゃんが用意してくれた夕飯を食べる。

 俺が食べている間。兄ちゃんは向かい側の席に座ってノーパソを使って仕事をしている。

 普段は部屋で仕事をしているのに何でだろう? まぁそれよりもなんか気まずい……


「に、兄ちゃんがここで仕事しているの珍しいね」


 兄ちゃんはちらっと俺を見るが直ぐに視線をノーパソに戻す。やばい、兄ちゃん相当怒っている!

 謝ろうと口を開こうとしたら、兄ちゃんはノーパソを閉じた。

 その音にビクッとなり変な汗が流れる。

 すると、兄ちゃんは吹き出し笑う。


「なにビビってんだよ」


「冗談やめてよ、兄ちゃん……心臓に悪い……」


 俺はテーブルに突っ伏して文句を言った。


「ゲームで夢中になって飯を食わないお前が悪い。いらないならメモ紙を残せよ」 


「……気をつけまーす」


「分かればよろしい」


 兄ちゃんは立ち上がり、ノーパソを持って部屋に向かう。


「あ、そうだ。罰として明日も弁当をよろしく」


「それぐらい罰じゃなくても作るよ」


 兄ちゃんは手を振って部屋に入っていく。

 あーなんか疲れたな。次から気をつけよう。

 残りの夕飯も食べ終え、部屋に戻りログインした俺はすぐにルーシャさんの店に向かった。


「ハルナ、こっちきて」


 お店の前に着くとルーシャさんが出迎えてくれて、手を引いて忙しいそうな店内を通って部屋の奥に連れてかれた。


「ハルナ、これに着替えて」


「え?」


 ルーシャさんから渡されたのはピンク色のヒラヒラが付いたメイド服だった。

 予想外のを渡されて俺は思考が停止した。


「間違えた、こっち」


 渡し間違えたメイド服を奪い取ったルーシャさんは今度はウェイター服を渡す。


「早く着替えて」


 急かすルーシャさんに俺は尋ねた。


「これを着てなにするんですか?」


「本当は試作品を食べてもらいたかっんだけど、アルバイトのNPCの子が風邪で休んじゃって手伝って欲しいの」


「そう言われても……俺、接客とかしたことなくて……」


「大丈夫、なんかあればフォローするから着替えて」


 ルーシャさんはそれだけ言って部屋を出て行く。

 前に颯音もやっていたし、やってみよう。

 渡されたウェイター服に着替えて店内にいくと、ルーシャさんにレジ対応するように言われた。

 前に接客してくれたやり方を思い出しながら接客を始める。


「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか」


「これと……これを下さい」


「畏まりました」


 お客さんが選ん洋菓子をトレーに移していく。


「……」


 めっちゃお客さんが見てくるんだけど……顔になんかついてる? それか接客が変だった?


「あの〜」


「え、はい! な、なんでしょうか?」


「新しいバイトの方ですか?」


「頼まれて今日だけ手伝いをしているんです」


「今日だけなんですね、ウェイター服似合ってますよ」


 俺は照れながらお礼を言う。


「あ、ありがとうございます」


「お仕事頑張ってください」


 お客さんに洋菓子を渡し、代金を貰い初めての接客が終える。

 ちょっと自信ついたな、頑張ろう。

 結局、ルーシャさんの店が閉まるまで手伝った。



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