第107話
空をしばらく進んでビートルワームが見つかったとところの上空に到着した。
周りを見渡す限りモンスターの姿は見えないけど、隠れてる可能性もあるし油断せずに行こう。
警戒しながらゆっくり地上に降りた俺はコガネとシロガネとクロガネの三体を呼び出した。
「ビー!」
呼び出したシロガネは減っている体力を回復してくれた。
「ありがとなシロガネ」
俺はシロガネの頭を撫でながら礼を言う。
そんなことをしているとクロガネは地面に潜っていく。まだなんも言ってないけどわかってくれている筈! 多分!
「シュ!」
コガネが頭に乗っかってくる。
「どうした?」
尋ねると足を器用に使い、口をパクパクさせる。そう言えば、さっさと倒してケーキ食べようって言ったな。
俺はインベントリから洋菓子を取り出してコガネとシロガネにあげる。
「クモガネも食べるか?」
そう聞くとクモガネは【共鳴】を解いて俺の右腕に掴まる。インベントリからフローズンベリーを取り出してクモガネにあげた。
辺りを警戒しつつ俺も一緒になって洋菓子を食べる。
「キシャ!」
しばらく待ってるとビートルワームを大きな顎で挟んでクロガネが戻ってくる。
ビートルワームを俺の足元に置くと、掘った穴に戻っていき、戻ってくると別のビートルワームを挟んでいた。
「クロガネ、ありがと……また潜った」
お礼を言おうとしたらまた地面に潜っていくクロガネ。スタッグビートルを見つけたのかな? まぁ帰ってくるのを待つか。
二体のビートルワームがモゾモゾと動き始める。
俺はしゃがんで観察していると二体と目が合った。
とりあえず、餌付けしてみっか。
インベントリにある蜂蜜が入った瓶を取り出して、蓋を外して、近くに置く。
匂いに釣られてか、ビートルワームたちはゆっくりと体を動かして蜂蜜を舐め始めた。気に入ってくれたようだ。
「キシャ」
戻ってきたクロガネの顎には白い物体が挟まれていた。
穴に戻ったクロガネはまた白い物体を挟んでいた。
更に白い物体を二個挟んできて、どれも確認したら全部ビートルワームだった。
合計六体のビートルワームが並び思わず苦笑いした。
「クロガネ、見つけ過ぎだよ……ご苦労様クロガネ、ケーキあるから食べて」
「キシャ」
クロガネの前に洋菓子を置くと美味しそうに食べる。
さて、どうしますか……
悩んでいると後からきた四体のビートルワームが動き出した。
俺はため息をこぼす。
仕方ない全員に蜂蜜をあげよう。全部テイム出来る訳じゃないと思うし、懐いてくれた奴だけテイムをしよう。
インベントリから沢山の蜂蜜を取り出してビートルワームたちにあげた。
全員が食べてるのを見守っていると近くで激しい音が聞こえてくる。近くで戦闘しているのようだ、巻き込まれない様に移動しよう。
「ん?」
ビートルワームたちは俺の足に纏わりついて登ってくる。
「シュ!」
「ビー!」
「キュゥ!」
コガネとシロガネとクモガネがビートルワームたちを引き剥がしてくれるも、ビートルワームたちはまた登ってこようとする。
俺はインベントリから追加で蜂蜜を取り出して地面に向かって投げると瓶は割れ、蜂蜜が溢れ出る。
それに気付いたビートルワームたちが離れて蜂蜜に集まった。
「ありがと皆……」
俺は胸を撫で下ろす。
一体ならまだしも六体は色んな意味でキツい……
ーードーン!!
近くで水柱が上がり、俺の前を大きいモンスターが飛んでいった。
驚いていると大斧を片手に鎧姿のプレイヤーが通っていく。
少し経つとモンスターの断末魔が聞こえてくる。さっきのプレイヤーが倒したのか?
「って、また登ってくんのかよ!」
気が付いたらまたビートルワームたちが登ろうとしてる。コガネたちが協力して引き剥がしていると足音が聞こえた。
振り向くとさっきみた鎧姿のプレイヤーが大斧を構えていた。
「ま、待ってください! こいつら仲間なんで攻撃しないでください!」
首を傾げる鎧姿のプレイヤー。あれ、この人……アイスゴーレムをソロで倒していた人の装備に似ている様な……
鎧姿のプレイヤーは武器を収め兜を取り俺は驚愕する。鎧姿のプレイヤーは凛々しい顔立ちのポニーテールを靡かせた女性だったのだ。
「説明してもらおうか」
「街に戻ってからでも……」
「襲ってくるモンスターは私が薙ぎ払うから問題ない、名前を聞かせてくれ」
「ハルナっていいます」
「カレンだ、さぁ気にせず話してくれ」
「はい……」
俺はカレンさんに簡単に状況説明をしたのだった。




