入国!
「早く戻ろうよ!あんまり夜遅くまでやってたら怒られちゃうよ」
「大丈夫!外から見たら寝てる様にしか見えないから!」
なるほど……確かに今、現実では夜中だけどここじゃ朝だからやり過ぎて怒られるなんて事もあるか……一応僕も気を付けておこう。実際今の僕は朝寝坊しても問題ないんだけどね?
「でも早く戻るのはさんせー!」
「じゃあ行こ!」
二人が走って進んでいく。ここから先は木が少ない、というか無い。草原になっているから追跡するのも大変だな?ギリーマントと【擬態】の力を信じて追跡しながらこっちを振り返りそうだったら地面に伏せてで行くしかないか
「スニーキング……いや、トラッキングか、トラッキングミッションスタート!ってね」
2人にバレない様に100m程距離を開けて追跡する。もっと距離開けた方が良いかな?
「んー、走ってるみたいだけど若干遅いな……AGIが低いのかな?」
斧と杖だからAGIが低い可能性も十分ある。よし、ちょっと危険かもしれないけど30mくらいまで近寄ろう
「んー?」
「ん?どうかした?」
斧を持っていた方の女の子がこっちを振り向いた。一応【擬態】を追いかける前に使っておいたので今の僕は全身草模様だ。ギリーマントも使っているから何とかバレないで欲しい
「何か居たような……気のせいかな?なんでも無かったみたい」
後ろを振り返ってこちらを警戒していた女の子だが、僕を見つける事が出来なかった様だ。前を向いて走り出そうとする。だから距離が離れる前に彼女ら2人にオプティアップ(AGI)を掛ける。30mくらいなら何とか届く様だ
「あれ?なんかAGIがちょっと上がった?」
「何でだろう?さっき感じた何かは悪い物じゃ無かったのかな?とにかく早く帰ろう!」
急に何も見えないのにバフが掛かったらちょっと怖いか。また100mくらいまで離れて街が見えたら追跡は辞めよう。何処に進めば良いか分からなかったから追跡してるだけだしね
そして5分程追跡をすると壁に囲まれた大きな街が見えてきた。城っぽいのも見えるな?
「えーっと確かファステリアス王国だったよね?」
前にサイトで見たイベント情報の時に『ファステリアス王国の闘技場』がオープンって書いてあったし、あれがそうだろう
「うーん……どうしようか?」
現在の装備を付けたまま街に入るか、それとも出来るだけ初期装備にしてから街に入るかで迷っていた。余計な面倒はゴメンだからね?
「まずは初期装備で街に入って他の人の装備とか見てから決めようかな?」
仮面は首輪状態にして、イドとエゴは外して、初期ズボンと靴を履いて街に入る……これで行こう
装備を変更して街の門の様な所を目指す。あの2人組もあの門に向かって行ったから僕も時間を空けてから門に行こう
「もしこれで入国税とかあったらどうしよ?払えるかな?」
歩きながら現在の所持金を確認すると4,562Gとなっている。やっぱりお金はもっと効率の良い稼ぎ方とかもあるのかな?
ここまで来ると道があり、道の上には敵も見当たらない。道から外れた平原には青いスライムとか緑のスライム、後は鶏?みたいなのが居る。それと戦うパーティとかソロの人などを見ながら街に向かって行く
「すっご……」
15mくらいの大きさの門の前に立ち止まり「はぇ~」とか「ほぉ~」とか言って見ていると門の衛兵みたいな人が話しかけてきた
「ここに来るのは初めてかい?」
「あ、はい。森の方で迷ってて……なんとかここに来ることが出来ました」
間違った事は言ってない。ただ、全てを話していないだけだ
「そうか、大変だったんだな……腹、減ってないか?」
衛兵みたいな人が心配そうに話しかけてくるからインベントリからジャーキーを取り出し見せる
「大丈夫です。食料はありますから」
「そうか、それじゃあ改めて……ようこそ旅人!ファステリアス王国へ!」
衛兵さんに歓迎された
「ど、どうも……あの、街に入っても良いですか?」
「あぁ、楽しんでくれ!」
やった!入国税無しだ!お金にビクビクしないで済む!
特に咎められる事も無く、ファステリアス王国への入国に成功した
レンガや石で造られた建物や、露店の並ぶ大通り。そして……
「ネコミミとかエルフっぽいのとかいっぱい居る!」
他のプレイヤーと思われる。色んな種族がごった煮のようにファステリアス王国の中を歩いていた。やっと僕も他のプレイヤーと出会えた!さっきの2人組はどうしたって?ストーカー紛いの行為をしたし、あの2人にはバレてないからノーカウントだ
「あぁ……そういえばもう夜中だし、ログアウトしたいけど……街だと流石に宿とか探さないとダメかな?」
ログアウトしたくても宿が何処か分からないし、泉も探したいけど……いきなり誰かに話しかけるのもちょっと勇気が……いや、ここで勇気を出さないとまた前みたいな失敗をしちゃうかもしれないし、話しかけてみよう!
当たって砕けろと言わんばかりに話しかける相手を探す。すると目の前の道を歩いていた人達が急に道を開け始め、前方からスクール水着(女子用)を装備した頭に忍者頭巾を被っている細マッチョな人が現れた




