魂の扱い
「では始めるぞ。ハチ。一気に力が抜ける感覚になるかもしれんが、耐えるんじゃぞ?」
「え?」
「……」
死神様が何かを唱えてるんだろうけど、聞き取れないから多分普通に僕らには使えない能力何だろう。それにしても一気に力が抜ける感覚か……麻酔みたいな物かな?
「ふぐっ!?」
急激に体が重く感じる。いや、何だこれ……全身から筋肉が全部無くなったのか?と思うような感覚。体を全く思い通りに動かせない。それなのに倒れる事も出来ない。本当に体を動かせない……
「ぐっ、ぎぅ……」
「何と……この状態でまだ動けるのか……とんでもない精神力じゃな……」
いや、まったく動かせない訳じゃない。自分の脳を騙せ。本当に動かせないのか?あくまで筋肉が無くなったと思っているだけだ。僕の意思は確かにここにある。脳から指令を飛ばせ。脳じゃなくても脊椎で反射の様に体を動かせ。意識があるなら自分自身を完全に制御するんだ
「これが……魂への……攻撃って……奴かな……」
削ぎ取られるなら、奪われるなら新たに生み出せ。守る必要は無い。その程度で負けるな僕!
「何これ……こんな魂……見た事無い……」
「同感じゃ……ハチは特に気に入っておったが、これ程の魂を持っておったとは……じゃがこれ程の魂ならば、行けるはずじゃ!」
「うぅ!?」
僕から何か持っていかれる喪失感があったが、その喪失感を埋める様に僕自身を騙そうとプラシーボ効果なのかは分からないが、欠けた部分を埋める様にボコボコと沸き立つ感じもする。何だろう。ハスバさんとかアイリスさん、トーマ君とかの顔が見える気がするな……
「行くぞ。一瞬じゃ」
「ええ、早くしないと!」
「はぁ!」
「がっ!?」
リグレッタさんの体が半分に割けたかと思ったら、即座に僕から出て行った何かが、リグレッタさんと結びつき、元通りに、そして、リグレッタさんから切り取られた何かが宙に浮いている
「ハチ、まだ意識は保っておるか?」
「一応……」
「では最後の仕上げじゃ。ゆくぞぉ!はぁ!」
「ぐふっ!?」
死神様が宙に浮いた何かを右手で掴み、左手にも似た様な何かを持っている。その状態から、両手を合わせて2つの物を1つにして、それを僕に対して叩き込んだ
「かはっ!?」
死神様に叩き込まれた何かが僕の中に入って来たけど、そもそも死神様の叩き込みの威力が高くて普通に後ろに吹っ飛ばされた。だが、確かに何か新しい感覚というか、今まで無かった物が入って来た
『特殊スキル ソウルマニピュリア を入手』
『【ソウルマニピュリア】 消費MP 変動 対象の魂に刻まれた力を使う事が出来る。自身が負担を肩代わりする事で出力が変動する』
「な、なんだコレ……」
魂の力とか負担の肩代わりとか何か色々出て来たなぁ?
「どうじゃ?どんな力になった?」
「えっと、こんな感じ……ですね?」
「えぇ……ナニコレぇ?」
「あ」
何か普通にリグレッタさんが例の装置から出てた
「おぉ、そっちも無事に終わった様じゃの?うぅむ……これはどうやらハチの生命力が想定よりも多かった様じゃのう?」
「えっと……リグレッタさん……ですよね?」
「ええ、そうよ。君から生命力を分けてもらったから力を分離しても消えずに済んだけど……これどういう事なの?」
何か、さっきまで装置の中に居たリグレッタさんと見比べると小さくなっ…若くなった様な……
「うぅむ、そうじゃな。単純にハチの生命力が多かったから、お主に魂が分けられた時に死んだ時のお主よりも生命力が増して、それに当てはまる姿まで若返っておるし、何ならその状態ならば地上に出る事も出来そうじゃな……」
単純な死者の蘇生とはまた別っぽいなぁ……
「という事は、リグレッタさんも迷える魂の回収とか出来るんですかね?」
「そうじゃな……ネクロマンサーの力は失ったとはいえ、魂の扱いに関しては他の者よりも精通しているじゃろうから、任せようと思えば出来るのう?」
となると、僕の手伝い的な事で現世に連れて行く事も可能になるか?
「そうじゃな。魂の回収としてはハチの方が先輩じゃろう。じゃが、魂の扱いに関してはリグレッタの方が先輩じゃ。互いに教え合う事でより効率良くなると考えればハチに付ける事で現世に行く事も可能じゃな?」
まるで僕の思考を読んでいたかの様な回答だ。まぁ、読んだんだろうなぁ……
「何にしても、その新しい力はまずここで試してからにしよう。どんな力かは儂にも分からぬからのう……」
確かに、ここで試してから行くのは賛成だ。【ソウルマニピュリア】の説明とかを一旦見る限りだと、魂の力を使えるらしいけど、これは使う対象は自分なのか、仲間なのか、敵なのかその辺全く書いてないからよく分からないし、何なら肩代わり云々もよく分かってない。何を肩代わりすればどうなるんだ?
「そうじゃな……その説明を見る限りじゃと、死体を使うというのは無理そうじゃな」
「そうね。これはもしかしなくても、ハチがネクロマンサーでは無いからかしら?」
「あぁ、確かに。それは有るかも……」
あくまでもこの力は特別な力で、ネクロマンサーとは違うという事を暗に言っているのかもしれない




