決意の戦法

『一般海賊は退いた退いたぁ！今からここは戦場になるぜぇ！』

「ノリノリだなぁ……」

　白玉さんが何かノリノリで言ってる。まぁ、今回マグロドンを倒しに行くという事になって、そのマグロを討伐出来たらお裾分けするとは言ってるからそれでノリノリなのもあるだろうけど……今はマンマミーヤンにシールドを張った状態で進んでいるし、一度海賊船を倒したという実績もあり、速度も結構良い速度が出ているから気が大きくなっているのかもしれない。まぁ、調子に乗るのが悪い時もあれば、良い時もあるし、これにあんまり文句を言っても仕方ないだろう。今は移動優先にしてるから、近くに海賊が居てもフェプシックで波を起こしてこっちに来れない様にする事も出来る。敵に直接干渉出来なくても、こうして相手に影響を与える事が出来るから【フェプシック】と海の相性は良いのかも

「という事で、マグロドン討伐作戦ですが、どの方針を取りましょうか？」

　マグロを捕獲するというのであれば、網やら釣りが一番だろう。だが、ボスとして出て来るのであれば、多分その程度の道具では歯が立たないのは分かっている。網ならボスマグロに破られないとてつもなく強固な網が必要だろうし、釣りであれば、切れない釣り糸、簡単には外れない釣り針の他にボスマグロを吊り上げるだけの腕力も必要だろう。だから多分その方法は無理だ。単純に生け捕りするなら、それこそ僕が釣り餌状態になり、【レスト】で相手を無力化して釣り上げるみたいな作戦になるだろうけど、ボス相手にこれが効くかどうかもあるし、それは非常に難しいのも皆分かる

「ネレイドさんが開発したHANDグレネードで敵を拘束し続ける……」

「魚雷群で一気に仕留めに掛かる……」

「総力戦……」

　多分マグロがどんな相手かは実際に戦うまでは分からない。でも、倒しきれない敵ではないと思うが、その身を傷つけない様に討伐するのは凄く難しいと思う。ウチの魚雷は爆破とかはしないから、その身を焼く事は無いだろう。でも、臓器を傷つけて、マグロの味が落ちる可能性は全然ある

「ハチ。アダマンタイト弾頭のアレ。もう少し細身の物はねぇか？」

「細身の……確か試作段階でヘックスさん凄い細い奴作ってなかったっけ？」

　アダマンタイト弾頭の破壊力とか貫通力を調べるのに形状とか色々調べていた様な……

「あぁ、今の物より小型で貫通力に更に優れた物は確かにあったぞ。今回は対海賊船用と巨大生物向けとして、持って来てはいないが……すぐに持って来る事は出来る」

「なら、それを使わせてくれ」

　おっと、まさかのホフマンさんがここで出て来るのか

「俺は料理人として自分で釣った魚を〆る事もしている。つまり、俺が正確に海の中でマグロの奴を〆てしまえば、そのまま綺麗なマグロを入手出来る。その為にはそのほせぇ奴が必要なんだ」

　細いアダマンタイト弾頭の魚雷が必要……なるほど、そういう事か！

「ホフマンさん。海の中でマグロの脳締めをやる気ですか？」

「ほう、ハチは知ってたか」

「脳……締め？」

　流石にトーマ君は知らなかったみたいだ

「脳締めっていうのは、魚の脳を破壊して〆るやり方だ。可哀想とは思わないでくれよ？釣った魚はすぐに〆る。そうしないと魚を長く苦しめてしまうし、味も落ちる。料理人として、食材とは常に向き合い続けなきゃならん大事な存在だ。だからこそ、敬意をもってその命を頂くんだ」

　ホフマンさんによる脳締めの説明を聞けたけど……一緒に矜持というか、信念みたいな物を聞けた気がする。これは尊敬出来るな

「人生最後は……いや、それは流石にヤバ過ぎるか？」

　こっちはこっちで碌でもない事を考えているヤバい人も居るが、それは放置で良いだろう

「とにかく！素早く〆る為にはマグロの脳を一撃で射貫く貫通力と周りを破壊し過ぎない様に細い方が良い。そうなると、さっき言ってた物が一番良いんだ。あの魚雷もまっすぐ撃つだけなら俺でも出来る。ハチには申し訳ないが、脳を〆られたらエラとかを切り出して欲しいんだ。そうなると、間違いなく俺の操作技術は間に合わねぇ……」

「もしかして、ハープーンミサイルで僕にエラとか内蔵の解体をしろって事ですかね？」

「あぁ、多分ハチなら出来ると思うぜ」

　理屈は分かる。ハープーンミサイルの形状であれば、確かに解体的な事は出来るだろう。操作もかなり複雑だろうけど、多分ギリ出来る気はする。だけど、これは要するに……

「僕は絶対マグロの近くに居ないとマズイですね」

「あぁ、だが、ハチなら出来ると俺は確信してる」

　ホフマンさんの力強いその両手に肩を掴まれる。申し訳なさと、信頼を感じる力強さだ

「そこまで言われちゃやらないって方が無理でしょう！ホフマンさん。絶対に仕留めましょう！その後の処理は任せて下さい！」

　ウチの料理人がここまで本気なんだ。ならやらないという選択肢はそもそも無い。マグロにビビる必要も無ければ、失敗を恐れる必要も無い。全てを信じて、やってやろうじゃないか！