人をのせる
『やぁぁってやるわ!』
「それじゃあ白玉さん。海賊船に乗り込んで戦ってみますか?」
『えっ!?』
せっかくやる気になっているんだ。それならそのやる気を活かした方が良いだろう
「勿論攻めて来た船何ですから対処はしないと。それなら戦闘して相手を倒さないといけませんよね?」
『で、でも……』
「別に相手を殺せとは言いませんよ。むしろ商人なら相手を生け捕りにする方がお得ですからね。その為に必要な物は既にその手の中にあるんじゃないですか?」
さぁ、これは僕も覚悟を決めないといけないぞ……いやぁ、ちょっと嗅いでみたい気もするけど、流石に防御しておかないとヤバい気がするぜぇ?
『え、えぇ!一発かましてやるわ!』
「良いですね。それじゃあ行きましょうか。マンマミーヤンの皆を守るのは白玉さんです」
とりあえず白玉さんを炊き付けておこう。これで面白い変化が起きたら良いなぁ
「砲弾が飛んで来てもマンマミーヤンに着弾する事は有りません。そこは僕らがしっかり防衛するので。という訳で白玉さん行きましょう。敵船に乗り込みますよ!」
「えぇ!コイツで全員やってやるわ!」
マスクと缶詰を持ち、気を奮い立たせている白玉さん。いやぁ、これはどうなるかなぁ?
「守られてばかりじゃいられない!私は攻めに転じるわ!」
「じゃあ、僕はそんな攻めに転じた白玉さんの護衛をしましょう。大丈夫です。好きな様に暴れて下さい。僕はそれに合わせますんで」
覚悟を決めた人のアシストは個人的には凄く楽しいから、白玉さんへは一発も攻撃を通さない。規模は違えど今の僕らはマンマミーヤンとネレイドで戦っている状態に凄く近しい
「一応、カッパ的なすぐに脱げる羽織りもあるんで、それを着てから敵の船に立ちましょう。下手すると終わった後、船に戻った時に仲間もノックアウトしちゃうかもしれませんから……」
「あ、それはそうね……それ、借りられるかしら」
「はい。勿論どうぞ」
マジで防具としての性能は無いに等しいけど、今の装備品に匂いが付くとなると大変な事になるし、しっかり、その辺の防御は出来た方が良い。消臭というか、洗浄魔法的な物が無くても、これならその場しのぎにはなるだろう
「だ、大丈夫かしら……私、戦いらしい戦いってあんまりした事無いから……」
まぁ、お金で人を雇ってボス戦を攻略するというのも手ではあるだろう。そういう戦い方だって立派なやり方だ。商人らしい良い方法だと思う。でも、商人だって多少は戦えた方が絶対に良いと思う。守ってやりたいという庇護欲を誘う様なスタイルで商売する以外にも、自分で商品を仕入れられる位の実力があれば、経費削減とかもかなり出来るだろうし、僕としても、そういう商人さんとやり取り出来た方が嬉しい
「なら、今から覚えましょう。大丈夫です。場合によってはその場で教えますから」
まぁ、近接格闘とは言わずに戦うにおいて初撃に丁度良い攻撃というのはある
「では移動時間も暇ですから質問します。これから戦闘が始まるとしたら、まず僕らと敵には何があるでしょう?」
「何がある?人数差とか、経験の差とか……」
「うーん、まぁネガティブな視点で言えばそれもまた正解ではありますけど、まずは僕らが敵と会う為に今詰めている物……距離があります」
そう。距離。この距離があるという事が非常に大事だ
「距離……」
「何も僕らは海賊船の中心にいきなりワープしては四方八方から襲われるという訳ではありません」
流石にアイリスさんとやった時みたいにネレッサーで敵船中央にジャンプで入るみたいな事は今回はしない
「距離があるとどうなるでしょう?」
「距離があったら……えっと、詰めるか遠距離から攻撃する?」
「おっ!良いですねぇ。そう。遠距離武器を持っていればそのまま攻撃して戦闘スタート。持っていなければ距離を詰めて戦闘スタートです」
勿論、話しかけるとか、交渉するとか、他にも選択は色々あるだろうけど、今はそれで良い。大事な事は戦闘が始まる為の最初の状態からどう動くかだ
「じゃあ、僕が遠距離攻撃に対して防御を固めた場合。敵はどうしますか?」
「それなら、近接攻撃に変更するんじゃ?」
「という事は?」
「近寄って来る?」
「ですね。じゃあ、その間。敵は遠距離攻撃から近接攻撃へ変える為に距離を詰めて来る。勿論、その間に遠距離攻撃して来るかもしれませんが、僕はその攻撃をガードします。はい、この戦場で一番時間に余裕がある人は誰でしょう?」
「……私?」
「近寄って来る敵に例のブツを投げたら……いったいどうなってしまうんでしょうかねぇ?」
船首でも船尾でも良いから敵の船に乗り込んで、敵が寄って来た所に例の缶詰爆弾を投擲してしまえば……まぁ、地獄絵図の開幕だろう
「物さえあれば、このゲームをやっている人には最も原始的かつ、そこそこ使える遠距離攻撃手段を誰でも持っているんですよ」
「……投擲」
まぁ、商人が一番そのスキルを使いこなせる気がするんだよねぇ……
「何を投げつけるかの違いでしょうけど、敵を無力化する事において、その手にある武器はかなり強力じゃないでしょうか?」
「凄い……何か出来る気がしてきた!ハチ君。君は人を乗せる天才ね!」
「ははは、どういたしまして。さぁ、行きましょう!」
そうして、白玉さんと2人で敵船に乗り込んだ




