秘密通信
「敵。4隻接近。30秒以内に対処出来なければ、飛行船アルバトロスに発見される可能性大」
「うわ、そっか。マンマミーヤンに比べたら視界広いもんなぁ……アイリスさんにだけこっそり報告しておくか」
アルバトロスで敵船を発見したなら多分全体に情報が広がる事になるだろう。それなら先にコッチで対処出来る事は対処したいし、一旦今回は見つけても見逃してと言っておこう
「あ、もしもしアイリスさん?」
「ハチさん?何処に居るんです?今皆で盛り上がって……」
「おっ、それは良いね。実は多分もう少ししたらアルバトロスでも敵船の発見報告があると思うけど、それは一旦静かにしておいて欲しいんだ。こっちで対処するから。アイリスさんだけにこの秘密の任務を頼みたくて……」
とりあえずこれでどうだろう?これで大人しく小型イベントを楽しんでくれてれば良いんだけど……
「それって、私は報告を握りつぶす以外に何かお手伝いは出来ますか?例えばその船の海賊を倒すお手伝いとか……」
「ただい……」
ハスバさんがアイリスさんとの通信の最中に戻って来た。通信しているのを察すると、口に人差し指でし~とジェスチャーをした後に更にチャックを閉じる様なジェスチャー。とりあえずこのまま通信は続けないと
「あぁ、いや、そっちは単純に魚雷で処理するつもりなんだ。その後で、海に落ちた海賊を回収する位だからアイリスさんには周りの皆にバレない様に、それでせっかく企画したミニイベントが盛り下がらない様にして欲しいんだ。アイリスさんにしか頼めない秘密のお願い何だけど……どうかな?」
「秘密のお願い……良いでしょう!こっちのイベントは任せて下さい!この事は私達2人だけの秘密ですね!」
いやぁ、まぁハスバさんにもバレているんだけどねぇ……まぁそこは別に言わなくて良いか
「そういう事だからよろしくお願いします」
「分かりました!」
アイリスさんの「2人だけの秘密ですね!」には返事をしていないから嘘は言っていない。これでセーフのハズ
「なるほど、金品の回収は諦めるって事だな?」
「僕は元から諦めてますし、何より今回はスピード勝負ですので、船は沈めて人だけ回収しましょう」
「ハチ君。相手の海賊を倒すって発想にはならないのかい?」
「そうですねぇ……人じゃ無ければ倒していたかもしれませんが、人なら一旦法に任せる方が良いのかなって。勿論、それは時と場合によりますよ?緊急の場合ならやっちゃうかもしれません。後は倒す事が目的の場合とか……」
まぁ、プレイヤーは復活するから気兼ねなくやれるというのもあるかも知れない。NPCの人の場合だと、それはどうなんだろうなぁ……と思っちゃう。僕の倫理観ってヤバいかな?
「海賊も生きているから出来ればそのまま捕まえたいって事なのかな?」
「うーん……多分あんまり責任を持ちたくないのが本音かなぁ……それと人の命の重さとかテーマになるクエストとか来ちゃうと面倒だし、過去に装備品を得る為のクエストでその地域に出て来る存在を倒すと入手が難しくなるアイテムとかあったんで、人を倒せば倒す程入手が困難になるアイテムとかあった時が大変だなぁと思って……」
ベルトの時みたいなクエストの人版とかあると絶対面倒だもんなぁ……
「おぉっと、また随分な理由だねぇ?」
「これは僕の中の信念?とも言えるかも知れないんですけど、多分そういうクエストって面白くないんですよ。自分の罪と向き合えとかどうせそういう罪悪感を植え付けて来るタイプのクエストって。でもそんなクエストに何もやってませーんって言って報酬をかっさらっていく方が面白いだろうし、楽しいと思うんです。僕は僕の『楽しい』の為にゲームをやってます。だから運営のこういう風に遊んでねっていう提案にはNOと言って、僕なりの楽しみ方を逆に見せたいんですよね」
「良い。実に良い!やっぱハチ君はそうでなくちゃ!」
僕は僕の楽しいをこれからも追及し続ける。だからこそ、運営!君達が用意した木造の海賊船は我らの潜水空母ネレイドで木端微塵に打ち砕いてやるぞ!
「という訳でキールブレイカー発射!そしてハスバさん行きますよ!」
「あぁ!アブダクターするぞぉ!」
「了。キールブレイカー発射」
キールブレイカーを追いかける様にネレッサーで発進して、海賊船まで向かう。2人でやればすぐだ
「いやぁ、下から見るとこれはまた凄いな……キールブレイカーは」
「そうですね。もうガオンッ!というか何というか、完全に抉り取られてると言っても良い位、竜骨が無いですね。あ、船が割れた」
先に発射されたキールブレイカーで4隻の船は真っ二つに。そして沈みだした船から落ちた海賊を拘束してアブダクター部隊のポータルにポイポイしていく。いやぁ、アブダクター部隊を砲弾型のカプセルに突っ込んでネレイドから発射する事で水中発進出来る様になったのは素晴らしい進化だなぁ
「さ、早く集めて2人の作った料理を食べましょう!」
「いやぁ、さっきの話を聞いてると海賊の扱いも大分雑に見えるけど、これで合ってる気がするねぇ?」




