悪魔姉妹戦
「あれ?動けない!?」
キリアさんが地面にこけた状態から立ち上がれない。立ち上がれなくしてるのは僕なんだけどね
「なんで!?」
キリアさんの背中に精神防壁を展開して立ち上がる邪魔をしている。今の僕には防壁を2枚出すのが限界だけど、攻撃を防ぐだけじゃなく、動きの阻害にも使える防壁の使い勝手は最高だ。多分本来の使い方は聖女様を守る人達を後ろから守る為にこの盾を飛ばして遠距離からの攻撃を防いであげる……的な使い方を想定してたんじゃないかな?でも2枚の防壁を操るだけでも中々難しいぞ?ロザリーさんの浮く剣も僕の防壁と同じ様に頭でどう動かすかイメージしながら戦ってるんだろうけど、本気出せば5本同時に動かせるとか言ってたよね?凄すぎる……
「【アポート】!」
僕に銃撃しながらキリアさんに近寄って何か発動したキリエさん。するとキリアさんが押さえつけていた場所から消えた……と思ったらキリエさんのすぐ近くに現れた
「ありがとお姉ちゃん!」
「気を付けなさい。油断はダメよ?」
ぐぬぬ……多分射程は短いけど自分の手元に引き寄せる系の魔法かスキルか……
「次から気を付ける!」
両手にフランキスカを構えてまた僕に走り寄ってくるキリアさん。単純だけど止める為には防壁をキリアさんに向けるか、僕自身が対峙するしかない。その間にキリエさんが撃ってくるから防壁は1枚必要だろう。流石に僕だって銃弾とキリアさんを同時に躱すのはキツイ
だから僕は防壁2枚をキリアさんが突っ込んで来た後に、キリエさんと分断する為、僕達の間に展開した
「振りが、早く、なってるねぇ!」
「貴方ともっと戦いたかったから頑張っちゃった!【嵐斧】!」
ブンブンと嵐の様な勢いで振られるフランキスカ。【受け流し】をミスれば致命傷は避けられないだろう。集中しろ僕
左下、右、上、右下、右上、左。様々な角度から振られるフランキスカを見て、避けて、受け流して、キリエさんが横に移動したからそっちに防壁をずらして弾丸の邪魔が入らない様にガードして、遂にそのタイミングが来た。キリアさんが両手で上から同時にフランキスカを振り下ろす。その瞬間を
「【ディザーム】!」
連撃の締めとして振り下ろされるだろう二つのフランキスカの柄の部分を掴み、くるりと回してフランキスカ2本を没収する。同時だからこそ出来る2本【ディザーム】。これがキリアさんの手に戻ったとしても直ぐに使えない様に魔糸で纏めちゃおう。僕の後ろの壁際に捨てておけば取りに行くのも簡単では無いだろう
「アハッ!凄い凄い!2つとも取られちゃった!」
武器を没収し、素手状態になったキリアさんに更に接近して首を絞める様に拘束する。キリエさんに対しての肉盾だ
「2対1でも不利じゃないってこれで分かってくれましたか?」
「中々エグい手も使ってくるじゃない?」
「2対1するならこういう手も使わないと勝てないかな?と思いまして……」
僕だってこれはかなり悪役ムーブだと思う。人質取ってるし……というかこのまま勝っても良いんだろうか?と一瞬考えてしまった
「まぁ、前の私達ならそれで降参していたかもね?」
「え?」
「貴方に勝ちたくて新しいジョブも練習したんだよ!」
「ん!?」
拘束していたハズなのに気が付いたら僕の体はキリアさんに持ち上げられていた
「【グラップルスロー】!」
「がはっ!?」
持ち上げられて、ブン回されて壁に叩きつけられる。な、なんというパワー……
「バリアもあるなんて厄介ね?」
壁に叩きつけられた間にキリエさんが移動して僕に銃弾を当ててきた。【電磁防御】が発動し、弾を防ぐが……時間切れになればいよいよ余裕なんて無くなる……
「キリア、アレをやるよ?」
「分かった!」
2人で合図をして何かスキルを発動する様だが、叩きつけられた体勢の僕には止められない
「「【ドッペルゲンガー】」」
2人が同じスキルを発動すると、2人の影がムクムクと膨れ、同じ姿になる。よ、4対1?
「「さぁ!行くよ!」」
「「これで終わりね?」」
ちゃっかり武器まで複製されているのか……投げられる4本のフランキスカと4丁のリボルバーの弾丸の雨。防壁で防いでも必ずどれかが漏れる
「「【トリガーハッピータイム】」」
「うっそぉ……」
キリエさんが更にスキルを発動したのかリボルバーが増えた。空中にキリエさんのリボルバーに追従するようにリボルバーが1丁ずつ……キリエさん2人分合わせて計8丁のリボルバーからそれぞれ弾丸が発射される
「「ほらほらぁ!もっと踊りなさい!」」
8丁の拳銃、4本のフランキスカ、2人のキリアさんの格闘。こんな事なら最初からアレ使えば良かったなぁ……
『決闘終了!』
システム音声が空間に流れる。地面に転がる僕は2人に負けた
「あれぇ?このくらいだったっけ?」
「まぁ、頑張った方じゃない?」
勝者の2人が僕に対して何を言おうと反論は出来ない。だって僕は負けたんだ
決闘用空間からホフマンさんの店の前に戻ってくる
「んー……何か残念」
キリアさんは不完全燃焼という感じだ
「…………かい」
「え?」
「もう一回!」
僕は何を言っているんだろう?今回負けたんだからこの2人に付き纏われる事はもう無くなるはずなのに、全力を出し切れないで負けた。それで相手が何処かに行ってしまう……あぁ、あの時のキリアさんはこんな気持ちで僕をずっと探してたんだ
「さっきの条件でもう一回おねがいしましゅ!」
噛んでしまった。恰好つかないなぁ……
「ぷふっ!どうするキリア?」
「私は良いよ!さっきの、貴方はまだ本気出し切れてなかった気がするし!」
「じゃあもう一回やりましょうか。私も久々にアレを使ったけど決闘空間で弾を使ってもこっちに影響されないから消費無しだし」
矢や弾等の弾系のアイテムを消費するようにしてしまうと決闘を受けた遠距離系物理プレイヤーが一方的に損耗してしまうのでそれを考慮したシステムのお陰でキリエさんは弾の消費が無かったみたいだ
「ありがとうございます!」
「あ、でもその前に私達が勝ったんだからまずは貴方の名前を教えなさい」
「教えろー!」
「僕はハチです。キリエさん、キリアさん。もう一度決闘を受けてくれてありがとうございます。次はお二人を瞬殺します」
僕の瞬殺宣言で明らかに楽しそうな顔をするキリアさんと訝しむキリエさん
2戦目の僕が開幕即発動した【聖域展開】によって悪魔系の2人は体の自由が利かなくなりスキルを発動出来ずにダメージを受ける。更に僕の4連お清め(聖属性付き)掌底や、聖なる呪いの4連銭投げ等によって2人をあっという間に沈めるというさっきとは真逆の結果が起こった事により、2人は驚愕する事になった




