セカンドラの街
街に向かっている間にアミーちゃんを肩車してあげて歩く。手を繋いで歩いていたら僕の腕を掴んで感触を楽しんでいたみたいだから肩車する事でもっと楽しんでくれるかな?とやってみた所キャイキャイ喜んでくれた。肩車というか頭に張り付いているって言った方が良いのかもしれないけど……背中のチャックに触れないでくれたからアミーちゃんめっちゃいい子だわ
手提げ袋はその間僕が持っているのでこっそり取り過ぎちゃったアプリンの実と10000Gを入れておく。これでアミーちゃんとお母さんの足しになってくれれば良いな
「見えてきたぜ、セカンドラだ」
ファステリアスの街と似ているが何となく町全体から煙が出ている気がする
「鍛冶の街なんだよ!」
僕の上から声が聞こえる。なるほどあの煙は工房とかの煙なのか
「ファステリアスに比べたら武器や防具が安いし、鉱山も近いから結構世話になってるぜ」
ダイコーンさんがアミーちゃんに対しての返事と取れる様な受け答えをするが、実際は僕に説明をしてくれているのだろう。やり方が上手いなぁ?
(俺はその先の街まで進んでいるが、素材を集めたらここに持ってきて装備を作ってもらう事もあるぞ?)
(へぇ、じゃあここの職人さんの腕は確かなんですね)
その先に進んだ人も戻って来て武器とか防具を作ってもらうって事は結構お世話になる場所かもしれない。僕の場合は使わない可能性が高いけど……
「はんぺん、一旦戻ってくれ」
「ワン(はい)」
街に近付いている最中にダイコーンさんがはんぺんを帰した。なんでだろう?
(街中に連れて歩ける召喚獣は1体までで、ハチ君を召喚獣だとして扱うならはんぺんを出したら怪しまれてしまうんでな?)
(なるほど、ご迷惑をおかけします……)
僕がダイコーンさんの召喚獣として街に入るならはんぺんを出したままだと召喚獣2体で入る事になってしまうから態々はんぺんを帰還させてくれたんだ。ダイコーンさんにもはんぺんにも感謝だね
「さぁ、暗くなる前に帰らねぇとなぁ?」
「はーい!」
流石にアミーちゃんもダイコーンさんに慣れたのか、素直に返事をして僕の頭をぺちぺちする。はいはい、走りますよー?
「ベアッ!」
「うわぁ速ーい!」
「ちょ、速ぇって!」
アミーちゃんを肩車した状態で走る。街は見えているから急に敵が出てくる事も無いだろう。ダイコーンさんが出遅れたから後ろから走って追いかけてくるけどここで僕のイタズラ心がうずうずしてしまって【リインフォース】を使って更に速く走る。快速シロクマ便だ
「ベアー」
「あっという間だね!くまさん!」
「はぁ……はぁ……速過ぎんだろ」
門の前でダイコーンさんが来るまでアミーちゃんと待っていたら疲労困憊な状態のダイコーンさんがやってきた。しまった……やらかした
「ベ、ベア……(ごめんなさい、やり過ぎました)」
アミーちゃんは既に地面に下ろしているので、ダイコーンさんに頭を下げて謝る。さっき感謝したばっかりだったんだけどなぁ?
「流石にキッツいぜぇ?」
「いてっ」
僕の頭にデコピンをするダイコーンさん。仕方ないね……これは僕が悪い
「ふぅ……よし!そんじゃ入るかぁ?」
「ベア!」
「はーい!」
うんうん、アミーちゃんも木に袋を引っ掛けていた時に比べたらずっと元気になったね?
「おーっす、この子が困ってたんで護衛がてら連れてきたぜ」
「あっ!帰ってきた!旅人さんありがとうございます!中々帰ってこないから心配してたんだぞ!」
「ごめんなさい……」
「無事に帰って来たんだからそんなに怒るのは可哀想ってもんだぜぇ?」
「は、はぁ……」
「とりあえずこの嬢ちゃんを家まで送って行って良いか?」
「お願いします。家族が心配していると思うので」
「そんじゃ行かせてもらうぜ?」
「はい、本当にありがとうございます!」
「じゃあな!仕事頑張れよぉ?」
「ベア」
門をくぐる前に最後のアプリンの実を衛兵に渡す。お仕事頑張っての意味と軽い賄賂的な意味で
「あ、ありがとう……?」
少し疑問に思いながらも通してくれた衛兵さん。ちゃんと召喚獣だと思ってくれているみたいだ
「「ふぅ」」
「どうかしたの?」
「いや、なんでもねぇさ」「ベアベア」
二人とも無事に街に入れた事に一安心していた時にアミーちゃんに話しかけられた。そうだ、ちゃんと家まで送ってあげないとね?
「家まで案内してくれるか?」
「こっちだよ!」
アミーちゃんに連れられてお母さんが待っているらしい家に向かう事にする。先に泉に行きたい所だけどまぁいっか
大通りから裏道に入り、スラムの様な所に行く。やっぱり貧乏なんだろうな
「アミー!?何処に行ってたの!」
「お母さん!?動いちゃダメでしょ!?」
アミーちゃんを探していたのかフラフラとした足取りでキョロキョロと周辺を見回していたアミーちゃんのお母さんと思わしき人。顔の感じが似ているから確かに親子なんだろう
「お母さんの為に薬草を取ってきたの!ほら!」
「私の為にそんな危ない事して……」
「良い娘さんじゃねぇか?なぁ?」
「ベアベア」
中々出来る事じゃ無いと思うよ?
「この人達は?」
「困ってた所を助けてくれたの!」
「何かお礼を……」
「お礼が欲しくて助けたんじゃねぇさ。困ってる奴が居たら助けてやるだけよ……」
こっちをチラっと見ながらそんな事を言うダイコーンさん。モヒカンがこんなにカッコイイ髪型に見えたのは人生始まって初かもしれない




