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残余録 夢は続くよ何処までも

後編改です。

≪お察しください≫表現が出てきますので、ご注意ください。

【ロードします。システムデータが更新されました!】



ゲームを終えて、何とはなしに携帯を手に取る。


「正景さん、仕事終わったかな?」


遠山正景。

安土時代を通して下野の太守を務めた遠山家の嫡流。


信清オレの二男で、遠山氏の養子になった信景の末裔でもある。

下野太守を譲ったこともあり、犬山流織田一門としての同族意識は未だに強い。


現在二十八歳で彼女あり。

遠山産業の取締役として日々を忙しく過ごす。

一門の若手から兄貴と慕われるエリートさんだ。


そんな訳で忙しいのは知ってるが、どうにも気になるので連絡してみよう。



………。

……。

…。



連絡が取れたので確認してみたところ、夜会として招待されているとか。

氏乗や真紀が参加なのは知ってるが、照ちゃんや宗春のことは知らないと。


……どういうことだ?


葵ちゃんの口ぶりからすると、皆一緒に参加すると聞こえたもんだが。

宗春に、問い質してみるか。


ピ・ポ・パ、と。


ぴろろろろーん♪



「はい、織田宗春です。おかけになった電話番号は……」


「下らん事言ってないで、質問に答えろ。」


「おや、随分とせっかちなことで。…それで、質問とは?」


「葵ちゃんが言った、記念パーティーってなんなんだ?」


「はて、葵さんが言った通りだと思いますが。」


「正景さんは知らないと言ってたぞ?」


「……。」


「知ってることを言え!」


語気も鋭く問い詰めると、観念したのか溜息ひとつ。

漸く語りだした。


「他言無用だったのですが、仕方ないですね。」


「御託は良いからさっさと喋れ。」


「ふぅ……。詰まる所、松平家による織田清長取込み計画の一環ですよ。」


………?


「え、何それ。」


「葵さんは貴方を欲しています。物理的に。」


「ちょ、物理的にって……。」


「それを知った松平家当主……葵さんの御父上、家基様の暴走です。」


「ファッ!?」


「いやはや、中々の策士ですよねぇ。」


「待て待て待て、詳しく話せ。最初から!」


「はいはい。」



宗春の口より、恐るべき陰謀が白日のもとに曝された!



* * *



「つまり簡単に言うと、俺を松平家の婿養子にってことか?」


「平たく言うとその通りです。」



陰謀って程じゃない。

ただの親バカじゃねーか。


しかも葵ちゃん、元々そんな気は別になかったらしい。

でも、それならそれもアリかなーって気になったとか。


家基様に伝えたのは宗春で、葵ちゃんを唆したのも宗春。


またお前か。


「お前、何か俺に恨みでもあんのか?」


「まあ、色々と。」


「えっ……。」


「その血統が憎い。」


「いや、どういうことだよ。」


「先祖伝来の言いつけです。」


宗春の祖先・織田宗政は、信清オレの側近だった。

その宗政からの、世代を超えた言いつけとか。


「ま、それはいいでしょう。関係ありません。」


「おい。」


超気になるんだが……。


「それで、どうします?」


「ん?」


「既に外堀は埋まってますが。」


「おぅふっ」


孔明の罠、ならぬ宗春の罠か。


「確認するが。」


「なんでしょう。」


「お前は、葵ちゃん側か?」


「照子さんと一緒に応援しています。」


マジか。


「パーティーを欠席したら怒るか?」


「さて……?」


ぬう。


「葵ちゃんは怒るかな。」


「それはもう、烈火の如く。」


「いや、想像出来んが。」


「そうですね、失礼しました。微笑みを湛えて静かに怒ると思います。」


確かに。


「あと、家基様は烈火の如く怒り狂うと思います。」


確かに!


「判った。その辺りは考えて、適切に判断するよ。」


「そうですか。ではこの辺りで。」


「ああ。」


ピッ…。



ふうー。

なんだかどっと疲れた。


パーティーについては、どうも嫌な予感がする。

だから出来れば参加したくない。


葵ちゃんの圧に負けて参加を約したが……。


ドタキャンに近くて申し訳ないが、キャンセルのメールをしてみよう。



* * *



ふわぁ、朝か……。


昨夜メールしてみたが、返信は無かった。

やっぱ電話した方が良かったのかな。

でも何か怖いしなー。



キキーッ、バタン!スタタタタ……ガンッ


がちゃん!!


「先輩ッ!」


「ひぃっ」


大魔王が現れた!

もとい、葵ちゃんがやってきた。


「メールみました。どういうことか、説明して下さい。」


「あ、うん。」


やはり怒ってる。

普段見ることの少ない、笑顔でない葵ちゃんのレア顔。


「いや、ちょっと思うところあってね。正景さんにも聞いてみたり、して……。」


言葉を紡ぐ度、険しくなっていく表情。

比例して下がる音量。


「断っちゃうんですか、そうですかー。」


「あと、宗春にも確認してみた……ら……」


あ、地雷。

俺の前に鬼が現れた。


「宗春君に、聞いちゃったんですか。……そう、ですかー。」


鬼は俯き、何かブツブツ言いだした。



……もう……なったら……実力行使……父様が……に、お願いすれば……



全身が粟立つ。

開けてはいけない、地獄の蓋を開けてしまったかのようだ。


どうしよう……。


取り合えず、携帯を手に取ろうとして


バシッ


奪い取られた。


スィッと顔を上げる鬼。

もとい葵ちゃん。


微笑みを浮かべて、大層落ち着いてる風だが油断は出来ない。


「これは、要りませんね?」


「え?いや……」


「要りません。」


断定された。

そして葵ちゃんの背後に放られる我が携帯。


コラ、精密機器を投げちゃいかんぞ!


「もう、知られちゃったからには仕方がありません。」


「何を……」


「ふふっ。先輩が、悪いんですからねー。」


そう言って、葵ちゃんは俺に圧し掛かって………。



………。


……。


…。



* * *



「今宵は我が松平家にとり、大いなる慶事を記念したパーティーを開催致します!」


家基様の音頭で、新京府安土区にある松平邸の夜会は始まった。



何の記念かって?

言わせんなよ恥ずかしい。



「せんぱーい。父様が呼んでますよー?」


「ああ、今行く。」


やって来た葵ちゃんに腕を引かれ、家基様の下へ引率ドナドナされる。



「やあやあ清長君。いや、敢えて息子と呼ぼうじゃないか!」


「もう、父様ったら。気が早いですよー。」


「うん?それもそうだな。わっはっは!」



俺は葵ちゃんと婚約した。

理由はお察し。


織田家と松平家は代々婚姻を重ねてきたし、それは今でも変わらない。

しかし流石に、織田家の嫡子が松平家の婿養子となるのは初の珍事らしい。


家基様──まだ義父とは言えない──は、御機嫌だ。


それを横目に、婚約者にお願いしてみる。

色々決意は固めたが、諦めちゃダメなこともあるのだ!


「葵ちゃんや。」


「なんですかー?せーんぱーい。」


酔ってんのか?


「あの手のゲームは、もうしなくて良いよね?」


そう、例の痛ゲーのことだ。

信清スキーなのは判ったし、モノによっては諦める。

でも、せめてそっち系だけは……。


「ふふふー。それはー、先輩次第、ですよー?」


「そこを何とか!」


俺の懇願を軽く流し、ニコニコと笑顔を振りまく葵ちゃん。


色々あって力関係は確定してしまったが、それでも諦める訳には行かない。

俺の戦いはこれからだ!




松平葵ルート(仮称) 「残余録」三作は黒歴史です。

書いてる時はノリノリなのに、投稿した直後に後悔するスタイル。



以下余談


「俺次第って、具体的にどうすれば……?」

「信清様以上に、先輩に溺れさせて下さい!」

言えないけどそれ、どっちも俺だから。

いや、信清はフィクションの方か?

どちらにしてもハードルは高い。

俺は絶望した。

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