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残余録 夢の奥に潜む闇

前編です。

良くない表現が出てきますので、ご注意ください。

「かーいーもーんー。」


『もっと大きな声で言え。』


「いいから開けろコラァ!」


『先輩たちも飽きませんねぇ。はい、どーぞー。』


「ありがとう、葵ちゃん。」



何時も通り信恒と戯れて、何時も通りに皆と顔を合わせた。

うん、実に何時も通り。


ただ何故か、最近は隣に居るのが信恒よりも葵ちゃんであることが多い。

恐らくその切欠は、サブカルチャーの女王を深き眠りより呼び覚ましてしまった事だと思う。


そんな俺と葵ちゃんを見て、信恒は気を利かせて隣を開けるようになったらしい。


残念だが信恒よ、その機転は間違ってる。

そして宗春、微笑ましそうな顔をするな。

絶対判ってるだろお前!



このように、現代の日常をそれなりに楽しんでる。

そんなある日、何時の間にか側に居る葵ちゃんに招待状を貰った。

曰く。


「記念パーティーを開くんで、是非参加して下さい!」


とのこと。

とは言え、何の記念パーティーなのかが判らない。

判らないなら尋ねてみよう。


「なんの記念?」


「……。照ちゃんたちも来ますから、きっと楽しいですよー。」


俺の質問は何故だか黙殺され、聞き捨てならない発言が飛び出した。


「えっ?」


思わず絶句する俺。

はぐらかされた、なんて思う間もない。


その理由は、葵ちゃんが照ちゃんと呼んだその人にある。

以前、葵ちゃんと一緒にうちに乗り込んで来た後輩の一人なんだが……。



* * *


照ちゃんは中根照子と言う、葵ちゃんの同志だ。

尚且つ、其の筋では大きな力を持つという、それはそれは凄まじいお嬢さんなのだ!

ちょっとトラウマになってるよ。


なんせ彼女、葵ちゃんすら無理強いしなかった”俺とお前で天下布武”を強要してきたのだから。



”俺とお前で天下布武~安土華伝~”

信長と信清が協力して天下に覇を唱える物語。

主な舞台は安土城。

一部の女性に大人気。

キフジンと呼ばれるコアなファンが多数集う、特殊な市場への出展が確約されたゲームでもある。



こんなんを夜通しプレイするよう強制するんだから、そりゃ苦手意識も持つよね。

容姿が可憐だからギャップが激しくて、尚更厳しい。


ゲーム中は、葵ちゃんと照ちゃんに挟まれて逃げ出せなかった。


両手に花。

画面は地獄。


俺は目の前が真っ暗になった。



そして夜が明けた。


目が覚めると、照ちゃんたちは部屋から居なくなっていた。

しかしそこに平穏はない。

部屋に居たのは葵ちゃんだけ。


一人暮らしの男部屋に女の子と二人きり。


普通に考えると、それはもう素敵なシーンであること間違いなしだね。

でも残念、葵ちゃんは普通とは少し違う。


現実は非情である。


葵ちゃんは其の筋で有名な、信清スキー。


そして始まるのは其の筋で有名なゲーム、【安土繚乱】祭り。



【安土繚乱】

とある有名ゲームメーカーが開発したワイガヤゲーム。

仲間たちと協力プレイで、ゲームクリアを目指してみよう!

そんなフレーズが踊り、老若男女が楽しめる健全なゲームの筈である。



そう、ハズなんだけどね?


このゲーム、クリアだけなら頑張ればそう難しくない。

ただ、やり込み要素が激しく多い。

特定のキャラシナリオをちゃんと進めようとすると、その難易度はルナティック。


と言うことを、図らずも知ることになった。


そりゃ、ちゃんと拒否し切れなかった俺が悪いんだろうよ。


だけどさー。

ヒートアップして凄まじい圧を掛けてくる葵ちゃんに、勝てる訳ないだろ!


特に目が怖かった。

獲物を狩るネコ科哺乳類の目。


この時点で俺は、多少の譲歩は已む無しとの認識に立っていた。



* * *



そんな訳で、照ちゃんが来ると知った俺は恐怖のあまり絶句したのだ。


思わず逃げ出したが残念、大魔王からは逃げられない。

ならばと考えるのは、彼女が居る場所に行かないで済む理由付だ。


「えーと、その日は……。」


「先輩がお暇なのは、ちゃんと知ってますよー。」


「あー、と。」


「むしろ、先輩に合せて日取りを決めたんですからねー?」


なんでそんなこと知ってるんだ。

チラッと宗春を見る。


「フッ。」


犯人はお前か。


研究室のスケジューリングをしてるのは宗春。

どうやら、宗春は明確に葵ちゃんサイドに立っているようだ。

そういや前回も居たな。


いや、恋愛問題ならそう言うの構わないと思うんだ。

でもさ、痛ゲー趣味についてはそう言うの、良くないと思うんだ。


問題は、宗春は全部判っててやってるってことかな。

信恒は全く判ってない。

純粋で何よりだ。


そうだ、風除けが居ればまだマシなハズ……。


「信恒は行かないのか?」


「ああ。俺は木瓜会の理事会があるから無理だな。」


目で「俺にかまわず楽しんでこいよ」と伝えて来る。

何このイケメン。

有難迷惑だけどな!


てか、絶対これも仕組んだだろう。

チラッと宗春を見る。


宗春の口角が上がる。


くっ、貴様!


「せーんぱーい?……ひょっとして、嫌なんですかー?」


嫌とは言わせないという空気を感じるのは、俺の被害妄想だろうか。

笑顔の奥の目が笑ってないように見えるのは、俺の錯覚なんだろうか。


「分かった。……因みに、他の参加者は?」


「えーとですねー。照ちゃんの他は、宗春君と氏乗君と、正景さんと真紀ちゃんですね。」


中根照子、織田宗春、北条氏乗、遠山正景と北畠真紀か。


照ちゃんはあんなんだし、宗春も乗っかってる。

氏乗は葵ちゃんの従弟だから怪しいし、真紀の奴もどうだろう。


安心できるのは正景さんだけか……。


「じゃあ当日の朝、迎えを寄越しますので!」


「え……?」


(……逃げないで、ちゃんとお家で待ってて下さいねー?)


コソッと耳打ちしてくる葵ちゃん。


思わぬ発言に戦慄を禁じ得なかった。



* * *



なんだか良く判らないが不安が募る。

帰宅後、気を紛らわすべく借りっぱなしのゲームを進めてみることに。


陽気な音楽に軽い文言が踊り狂う。

……ふむ、偶になら良いかも知れないな。



ぴろりろりん♪


【セーブします。システムデータが更新されました!】



今回はこのくらいにしとこう。

やり過ぎても疲れるからね。


ふと、正景さん辺りに連絡してみようかと思った。

でも仕事が忙しいみたいだし、当日会えるのだから止めとこう。


そして何事もなく、その日を迎えてしまった。



異色の度合いが深まって、最早別次元の作品と言えるかも知れません。

ですが所詮「おまけ」であり、一応時系列上の設定ですので平にご容赦下さい。

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