第五十話 五回目(了)
第五回!織田一族大会議、はじまー……
さて。
俺は隠居し、政務から身を退いた。
だから本当は暇になる筈だった。
でも、なれなかった。
何故なら、信長が相談役なんぞに、任命しやがるからだ!
* * *
相談役って、信長の相談役?
「それもある。」
信忠や信益に対する、施策の相談役?
「それもある。」
岩倉殿とかの、流行に対する彼是の相談?
「それもあるな。」
蝦夷地の開発や、遠洋調査についてとか?
「それもだな。」
娘たちの嫁ぎ先や、女衆の手工業について?
「そういったものも、だな。」
……。
「……。」
具体的に、相談の範囲は?
「全て、だ。」
全て、とは?
「この国で起こり得る事案、全てが対象だな。」
それって相談役の範囲内か?
「うむ。」
……。
「……。」
古典的全力談話!
* * *
「良い歳して頬腫らすとか、バカじゃないのかい?」
言ってくれるじゃないか、信成。
だが俺は知ってるぞ?
信忠や信澄を相手に、息抜きと称して木刀でボコボコにしてることを。
「よし、表に出なよ。そのケンカ、三割引きで買ってあげよう。」
「…ふう。お二人とも、程々になさって下さい。」
宗政……、居たのか。
「殴ります。」
あがっ
* * *
激務の相談役業務はさて置き、穏やかな日々が過ぎていく。
信長を天下人に押し上げた成果が、これ。
思わず感慨深くなってしまった。
最早、若い頃の様にウヒョー!となることはない。
しかし老いて尚、意気軒昂。
俺たち織田一族を表す言葉だ。
いやー、嬉しいね。
皆元気で過ごしてるってことだもん。
信長、信勝、信成は皆、隠居して相談役となった。
信広殿は織田家の長老として、若者を見守っている。
そして宗政は、陸中の太守を務めた後、隠居して俺の側近に戻った。
隠居って何だっけ?
働かない事さ!
……働くって、何だっけ……。
俺は考えることを諦め、与えられた役割を担い続けた。
* * *
やがて月日は流れ。
まず信広殿が亡くなり、信張、信興と続き、更に広良も先に逝った。
流石の信長にも、衰えが見え始めてる。
信忠は信長が元気な内にと、嫡男・信秀に将軍職を譲り大御所となった。
同時に信益も隠居し、相談役へ。
俺と信長は、ただ長老として見守っていた。
そろそろ、終わるな?
「ああ、そうだな。」
どうだったよ、この人生。
「中々に悪くなかったな。お前はどうだ?」
言う迄もない、最高だったよ。
信長に出会い、ここまで共に駆け抜けた。
「最近は、全く走って無かったがな。」
ったく。
ちゃかすなよ。
「ふっ、だが同感だ。信清に会えて、嬉しかったぞ。」
何の因果かこの世に生まれ出て、生涯の友と、一族にも恵まれた。
その織田家にあって全力を振るい、戦国乱世を駆け抜けることが出来た。
それもこれも、全て織田信長と言う存在のお陰。
いやー、良いもの見せて貰ったわー。
願わくは、この世が平和な未来に繋がらんことを……。
一族たちに見守られながら、俺の意識は闇に溶けて行った。
<了>
以上、ぼんやりと完結。無事、五十話以内に収まりました。
後は人物設定紹介(仮)や、余力があれば外伝の投下を予定しています。
最期までお読み下さり、誠にありがとうございました!




