第四十八話 政策
天下は織田家の元に収まった。
これに伴い、足利義助は征夷大将軍を辞任。
以後は吉良家や六角家などと共に、高格式家として遇されることに。
* * *
筑前と壱岐は直轄か、信勝で良いと思う。
貿易とか考えて。
「ああ。しかし、朝鮮への出征はいかんのか?」
論功行賞と大名配置に付いて打ち合わせ中。
信長がそんなことを言い出した。
いや、まだ諦めてなかったんかい……。
仕方ない、改めて説得しよう。
ほら、これ見れ。
「地球儀か。」
そう。
知っての通り、この米粒みたいなのが俺たちの国。
で、唐の国、つまり明国はこのでっかい土地だ。
米粒みたいな土地しかない俺たちの兵力で、どうやって明国のでっかい土地を制覇するんだ?
将兵も物資も無限じゃないんだぞ。
あ。朝鮮は大陸の一部だから、同じように考えとけ。
「むう。確かに、そう言われると……。」
大体だ。
本気で天竺を目指したいなら、腰を据えて海路を考えろ。
南蛮人どもに出来て、俺たちに出来ないと言うことはあるまい?
「ふむ。まあ、そうだな。」
やれやれ。
朝鮮を九州の延長上みたいに考えられちゃ、困るぜ。
他の奴らも、そうなのかなー。
変に意識されんよう、南方への進出を考えんといかんか……。
* * *
さて、西国を抑えたからには大陸との交易を行わない手はない。
ただ明国は鎖国してるし、朝鮮も同じく。
こっちが下手に出て、冊封を受けるのはない。
だから、窓口となる存在が必要となる。
白羽の矢が立ったのは、対馬と琉球。
対馬の支配者は宗。
九州征討の折に、臣従を誓ってきたので許した。
ついでに幾ばくかの献上があったので、これを賞し筑前で五万石を与えた。
その代りに、対馬藩主として疑似的に朝貢をさせる。
一方で琉球は王国であり、この当時は明確に独立国家。
明国に冊封を受けてる存在なので、植民政府化したい。
ついでに、琉球諸島の先にある台湾まで進出。
オランダ人に獲られる前に、拠点化を進めていこう。
* * *
南方が出たので、ついでに北方のことも。
南部が恭順したので、津軽を踏み潰して函館まで進出。
その際、権益を守ろうとしたのか、話を聞かずに反抗した蠣崎は滅ぼした。
結果的に良い拠点が出来たので、蝦夷地の開拓を進めさせてる。
但し、アイヌからの搾取はなしでな。
交易、または藩主政策で徐々に同化させる方針が良いはず。
まあ、反抗・蜂起したら制圧するけど。
無駄な出費は控えたい。
なんせ、蝦夷地の先には千島列島に樺太もあるのだから。
先に水軍を回して、沿岸から進めると言う手もある。
安東に任せてみようか、なんて計画も。
ま、徐々にね。
* * *
さて。
足利義助が征夷大将軍を辞任して、将軍位は空いた。
だから、誰もが信長がそこに就くと思ってた。
朝廷もそう思ったハズ。
でも。
信長は動かなかった。
天下を統一した信長は、諸政策を講じる。
安土機構と呼ばれる行政機関を設置し、太守と呼ばれる国主格を各地に配置していった。
しかし、官位など朝廷に働きかけが行われることはなかった。
これに焦ったのは朝廷。
なんせ、アイデンティティの危機だ。
や、ちょっと言い過ぎた。
似たようなもんだとは思うけど。
そうして焦燥に駆られた朝廷は、遂に三職を提示した。
三職とは、「関白」「太政大臣」「征夷大将軍」を指しています。
史実で論争のある、三職推任問題のオマージュ(?)です。




