第三十九話 信玄
信長の天下支配とは、どういったものなのか?
先の世では色々議論があったようだが、実際はどうなるものやら。
それも、もうすぐこの目で見ることが出来る。
これは、久しく忘れてたミーハー魂が疼くぜっ
くっ!鎮まれ、俺の魂……!
まあ、信長が具体的にどんな天下を思い描いてるかは知らんが。
俺はそれに協力し、宜しくないと思えば諌めるだけだ。
とりあえず、海外遠征は止めないとな。
あとキリシタンや南蛮人についても、正しく教えて置こう。
完全に俺の主観だけど。
* * *
さて、俺がこのタイミングで武田征伐を決めたのには訳がある。
武田信玄の病死が近い。
前世知識だが、使えるものは何でも使うのは当たり前。
そして、知識を完全には信用しない。
伊賀衆などを使って、ちゃんと裏を取ってる。
知識を上手く活かせるかってのが、大切なんだよなー。
中々難しいことだけど。
それで、武田信玄が死んだ後。
つまり代替わりの、ゴタゴタを狙った方がいいんじゃね?って案もある。
確かに最初はそう考えたけど、実は今、史実と大きな相違点があるんだ。
それは、武田信玄が未だ駿河国を獲れてないってこと。
嫡男を廃して、同盟を一方的に破棄してまで狙って、獲れてないんだよ。
求心力、当然落ちるよね。
表向き、カリスマ溢れる当主の力で平穏を保ってる。
けど、内側に不満は結構燻ってる。
東美濃出兵にも失敗したし、史実よりも心労が蓄積してると思う。
既に、幾度が喀血したと言う情報もあったし。
そろそろ行けそうだ、というのが結論。
* * *
と言う訳。
「判った。準備を進めておくよ。」
遠江国の信成に伝えると、実に良い笑顔で応えてくれた。
信成と信時には、南信濃に討ち入って貰う。
スーパー逆襲タイム、はっじまーるよー。
「君は、駿河から甲斐へ?」
そう。
俺は今川家の協力を得て、甲斐国へ乗り込む。
その指揮を執る。
ついでに、北条家にも討ち入って貰う。
あと東美濃からは、正式に於艶さんの養子になった俺の次男。
遠山信景が大将となり、南信濃へ入る。
副将は信長の次男・北畠具豊らしい。
存外普通の青年なんだけど、知識のせいで不安が残る……。
まあ、老臣が沢山居るから大丈夫だろう。
さて。
信章の、敵討ちと行こうじゃないか!
* * *
四方から一斉討ち入り。
駿河口からじりじりと進行していると、待ち望んだ報せが入る。
武田信玄、喀血して倒れる。
よし、機は熟せり。
「全軍に触れを。いざ、武田を滅せよ。進軍ッ!」
* * *
主将を欠いた軍勢は脆い。
倒れた当主を守り、武田勢は逃げ続ける。
時折残る、伏兵の類を薙ぎ払い、執拗に追撃。
重体の当主を運ぶのは至難。
甲斐から出ることは叶うまい。
武田軍が、遂に止まった。
ふむ、甲府か。
* * *
硝煙と怒号が撒き散らされる戦場。
武田信玄が揃えた名将たちは、甲府に散った。
ただ、彼らの主君を守るために。
そこに、意味はあったのか?
武田信玄、甲府の寺にて病死。
* * *
甲斐国と南信濃を制圧。
武田一族は戦死した者を除き、全て捕縛。
ここに事実上、武田家は滅亡した。
経済的に史実よりも弱体化し、精神的にも負担が大きかったようです。
そりゃ喀血して重体に陥りますよね。




