第二十五話 将軍
足利義昭が征夷大将軍になった。
おめっとさーん。
* * *
将軍になった足利義昭は、信長に褒美を取らせた。
史実なら副将軍とか管領とか、そんなん言って断られてたが。
今回も普通に断られてた。
ざまぁ。
そんで、堺の代官とか和泉国の支配権とか貰ったみたい。
斯波家の家督は、斯波義銀が普通に居るから流石に無かったね。
代わりに、斯波義銀を遠江国の守護職へ補任。
あと吉良義昭を、三河国の守護職へ補任。
今川家との和睦の斡旋などを願い出た。
この辺は俺からのお願いだね。
今川家は現在、滅亡の淵際に居る。
遠江国を手放して、藁にでも縋るんじゃないかと思うけどね。
どうだろ?
東海道筋を、織田・吉良・斯波・今川・北条のラインで結ぶ計画。
武田信玄が死ぬまでは、堅持したい防衛ラインだ。
並行して、信長主導で武田との友好関係を維持させようとしてる。
いずれ破綻するとは思うけど、可能な限り持たせたいね。
因みに。
足利義昭は、足利一門である斯波・吉良・今川らを領袖に出来るとあって大喜びだそうで。
どうやら、政治力はあっても頭の方はイマイチみたい。
朝倉にも上洛を促してるけど、越前にもなんちゃって御所があるからな。
無理だろうね。
俺としては、こっちから手切れにはしたくない。
朝倉を活かすと言うのもあるが、名目や風聞は大事だしね。
* * *
織田家と今川家の和睦が成立。
今川家は三河から手を引き、遠江半国を割譲。
代わりに、何かあったら助けるよ!
そんな条件。
ついでに、今川家を介して北条家と秘密協定。
疑似同盟みたいなの。
北条家も、武田を信用してないみたいだね。
良く分かるよ。
なんのかんので順調に進み、安心した。
足利義昭も、自分の斡旋で和睦が成立してご満悦だ。
今のところ、幕府と織田家で精神的な乖離は見られない。
利用し、利用されの良い関係が継続してる。
* * *
「信清っ!あの馬鹿将軍、どうにかならんか!?」
信長がうちに怒鳴りこんで来た。
何やらお冠の様子。
一体どした?
「どうしたもこうしたも!三好や松永を討てだの、朝倉をどうにかせよだの。」
ああ、味を占めたか。
順風満帆なせいで、遂にボロが出てきたかな。
「どう言うことだ?」
それが素ってことさ。
或いは、調子に乗り易い残念な子なのか。
斯波・吉良・今川と、足利一党を組み込めたのが嬉しいんだろ。
組み込んだのは織田方なんだけど、アイツにとっちゃ関係ないんだろうね。
どっちにしても、良くないな。
「全くだ。三好も松永も、俺に降ったのだ。討てる訳がないっ」
信長の精神衛生上にも、全く宜しくないな。
まあ、三好と松永が実兄の仇(仮)と思えば、良く持った方か?
実際には、三好サイドの実行犯は既に討ち取ったんだけど。
うーん。
あ、一向宗には手を出してないよな?
「ああ。邪魔ではあるが、まだ従順だからな。」
纏まって来られたら面倒だから、一個ずつ潰して行こうぜ。
「ふむ。」
まずは、松永か朝倉か。
松永は三好の紐付きだから悩むとこだし、とりあえず朝倉かな。
「どうする気だ?」
こんな時の為に、於市ちゃんを嫁がせたんじゃないか!
斯波義銀を足利義昭の名代として、越前朝倉に使いさせよう。
数代前とは言え、下剋上当事者同士の邂逅だ。
きっと面白いことになるだろうなー。
「おい、悪趣味だぞ。」
知らんな。
そうだ、信家も連れて行こう。
越前・尾張・遠江守護の家柄で、現遠江守護職。
そして越前守護代の家柄と、尾張守護代の家柄が一堂に会す。
クックック。
実に楽しみだ。
「ずるいぞ信清!俺も混ぜろっ」
はははっ
後で詳しく教えてやるから我慢しな!
和気藹々の戦国ほのぼのライフ。実に良いですね。
十二月に入りました。話数はともかく、当月中に完結させる予定です。




