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乙女ゲームのヒロインに転生したらしいが、すまん私はショタコンだ~なお、弟が可愛すぎてブラコンも併発したようです~  作者: ふとんねこ
第2章.学園編

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第11話.ショタコンと訓練所

2019.7.25 異世界転生恋愛日間ランキング43位までランクアップしました!

ありがとうございます!!


 私とラタフィアは夕食の後、一旦部屋に戻って動きやすい服装に着替え、それから訓練所へ向かった。


 昼食前にカイルからあったと言うたった一回の説明で憶えたのか、ラタフィアは迷うことなくすたすたと外へ出ていく。

 そして私たちはすんなり訓練所へ到着した。


 訓練所と言っても塀に囲まれた運動場って感じである。だだっ広い。

 的が等間隔に並んでいるところや、何か中が障害物競争のコースみたいになっているらしい建物が建っているところなど、確かに色々できそうだ。


「的当てでもいたしましょう」


「うん」


 訓練所内には何人か人がいたが、入学式であったからか空いているという印象である。


 私とラタフィアは的の前に並び、それから困った顔を見合わせた。


「……隣に友達がいる状態で魔法使ったことない」


「……私もです」


「なんか、変に緊張するね……」


「ええ」


 照れ隠しに、私は長い銀髪をポニーテールに結う。

 それを見たラタフィアが目を細めた。


「とても綺麗ですね……」


「へ?」


「アイリーンの髪ですわ。素敵です」


「え、あ、ありがとう。ラタの髪も、ふわふわで可愛いよ!」


 きゃっきゃと戯れて、私たちはくすくす笑い合った。

 やがて、お互いに「ふー」と息を吐いて目を見合わせる。するとラタフィアが頷いた。


「では私から」


 白百合の様な纎手がひらりと舞う。桜桃の粒の様な唇が、そっと風に祈る様にして『水球』と鍵言(けんげん)を唱えた。


(懐かしいやつ~)


 散々「オラァッ!」って拳で対抗して、師匠に叱られた三年前を思い出す。


 ラタフィアの右手から溢れた魔力が大気の中の魔力と結びつき、澄みきった清水の弾丸を作り出した。

 それを見ていて私は「お」と目を瞬く。


(すごく純粋な水属性……師匠より、純粋かも)


 作り出された『水球』が的目掛けて一直線に飛んだ。結構遠かったけど、ど真ん中に穴が開く。

 穴ができた。お嬢様然としたおしとやかな子なのに魔法の威力はすごいな……



 人間の魔力と言うのは、実は一つの属性だけで構成されているわけではないのだと師匠がリオに話していた。

 私には話してくれなかった、と言うよりリオだから話したらしい。

 何でも、リオの魔力はかなり純粋な火属性だったからとか。


「純粋な魔力は、精霊に喜ばれる。じゃから高威力の魔法が放てるのじゃよ」


「ぼくの魔法はつよいってこと?」


「そうなるな」


 そう言われた時のリオのはにかみ。思い出して悶絶しちゃうくらい可愛かった。


 私の修行と一緒に、魔力の操作を学び始めて一年。五歳になった彼は少しずつたどたどしさの抜けてきた言葉で、一生懸命目標を師匠に話したらしい。


「じゃあ、ぼく、もっと修行して、もっとつよくなるよ!」


 その話を事後報告され「うっ」と尊さに胸を押さえた私に、同志レベルを順調に上げていた師匠は言った。


「尊い、のう……」


「そうですね」


 あぁ、最近の……と言っても二日しか経っていないのだが、ショタ不足のせいで話が逸れた。


 何だっけ、人の魔力の話か。

 人の魔力はいくつかの属性が混ざっていて、その内一番強いものが表出し、所謂その人の“属性”とされる。

 純粋な魔力は精霊に喜ばれ、自然に満ちる魔力と結び付きやすい。だから高威力となるのだ。



「アイリーン?」


「あ、ごめん。ラタの魔力、すごかったから考え込んじゃった」


「ふふ、ありがとうございます。カスカータは代々水属性の家系ですので、代を重ねるごとに純粋になったのですわ」


「へぇ~……」


 なんかすごい。


 私がそんな感想を思い浮かべているとは知らないだろうラタフィアは、まじまじ見つめられて恥ずかしそうに微笑み「アイリーンの魔法も見せてくださいまし」と言った。


「分かった」


 可愛い生き物だなぁと考えつつ、先程鮮明に思い出したリオの話に元気が湧いてきて、私は手を的へ向けて差し出す。

 ラタフィアは何だか鋭そうな気がするから、体内の深いところで魔力を水属性に変換してから外へ出すことにした。


「『水球』ではないのを見せてくださいな」


「え? 何で?」


「魔力が多いでしょう? もっとすごいものを出せるはずですわ」


 あれまぁ。やっぱりこの子は鋭い。


「それは、ラタもでしょ!」


 手を振る。宙へ均等に拡散される魔力の波涛。大気の魔力としっかり絡んで、私の命令を待っている。


「『海波』!!」


 ざわっ、と魔力がざわめき、香る爽やかな海洋のにおい。現れた海水の波を手の動きで操り、うねくる海龍の突進の様にして的へぶつける。


 的は姿を消した。

 やりすぎたかな。まあいいか。


「……すごい」


「でもラタもできるよね?」


「ふふ、良い“眼”をお持ちですね」


 ギクッ!!

 魔眼だってバレたわけじゃないよね?


「確かにできますわ。でも、貴方ほど精密には操れません」


「そ、そっか」


 バレてなさそう!

 私はほっとして微笑みを浮かべる。


「先生はいらっしゃるのですか?」


「うん。実家の近くに師匠がいるよ」


「お会いしてみたいですわ。水属性の魔導士でいらっしゃるの?」


「そう、なんだけど師匠は人前に顔を出したくないらしいんだ」


「あら残念……恥ずかしがりやさんですのね」


「ラタの先生は?」


「ふふ。私の師は両親ですの」


 ラタフィアはどこか誇らしげに笑んで、胸に両手を当てる。


「私、強くなります」


「私もだよ。一緒に頑張ろうね」


「ええ。嬉しいです」


 私と友達1号ラタフィアとの関係は上々の滑り出しとなった。


 これで、攻略対象(ギルバート)の妹じゃなかったら完璧なのになぁ。


 明日からは授業が始まる。

 知らないことをたんまり取り込んで、更に強く逞しくなるんだ。

 勿論、愛おしいリオのためにね。


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