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非日常の世界へ〜2〜

少年の呟きなど聞こえていないのか、奇妙な面を被った人物はのんびりとした動きで少年の目の前のソファにゆったりと腰掛ける。


「はぁ〜…よっこいせっとと…んーと。初めまして。ワタクシは…うぅん…『ベルフェゴール』とでも名乗っておきましょうかね。」


ソファに全体重を預けるように深く腰掛けて足を組み、奇妙な面を被った人物は顎に手を添えて悩みながらも『ベルフェゴール』と名乗る。聞いたことのある悪魔を名乗る人物に少年は言い知れぬ恐怖を感じ、ただでさえ強張っている体を更に硬くさせる。そんな少年を見兼ねてか、悠々とコーヒーカップに口をつける背の高い少年は呆れ返った視線をベルフェゴールと名乗った人物に寄越して眉をひそめた。


「なぁにが『ベルフェゴール』だよ。テメェはそんな大層なモンじゃねぇだろ。良くて『ガミジン』か『ウォレフォル』だろ。つーか悪魔名乗んな。いつもので良いだろうが。」

「残念でした〜!ネクロマンシーも盗みも得意じゃないんですぅ!!悪魔名乗ったのはその場の雰囲気だよ。お前はいっつもそんなんだから場が盛り下がるんだよ!」


捲したてるように呆れと言うよりも面倒臭さを前面に出してツッコミを入れる背の高い少年。そんな彼にムッとしたのであろう、ベルフェゴールは妙にテンション高く、語尾を伸ばしながら反論する。コイツ、うぜえ…と、ベルフェゴールの反論を聞いた少年はその心情を隠すことなく目を細めて舌打ちをした。別に自分に向けられたものではないのに、少年はその舌打ちにビクリと肩を震わせる。一方で、舌打ちを向けられたベルフェゴールはからからと声を上げて笑う。


「オーケー、オーケー。分かった。真面目にやるから落ち着けよ、フレイ。そんなんで客に逃げられたんじゃこっちも商売上がったりだ。」


一向に機嫌の直る兆しを見せない背の高い少年ーーフレイに両手を上げて肩を竦め、所謂降参ポーズで手をひらひらと振るベルフェゴール。その降参ポーズを見たフレイはまた一つ、舌打ちをして鋭い目付きを更に尖らせる。フレイの舌打ちを受けてベルフェゴールは無言でヒョイと両肩を持ち上げると少年に向き合う。


「さて、長々と失礼したしました。改めまして…ゴート、と申します。あっちの今にも人を殺さんばかりの目をしてるのがフレイ。どうぞよろしくお願い致します。」

「ぁ…菊地鶫です。こちらこそよろしくお願いします。」


座ったままであるものの、恭しく頭を下げたベルフェゴールもとい、ゴート。それに倣って少年ーー菊地鶫も頭を下げる。お互いに頭を下げ合い、挨拶を終えた瞬間、ゴートがまるで新しいおもちゃを貰ったかのようなうきうきと弾んだ声で尋ねた。


「それで?この度はどのようなご用件で?何でも、人には相談できない悩みがあるんだとか…。」


なんてことないかのようにさらりと確信にゴート触れる。鶫は声の出し方を忘れたかのように口をパクパクとさせたが、一度目を閉じて深呼吸をするとゆっくりと目を開けて今度はハッキリと声に出す。


「人に、迷惑のかからない、且つ見つかり辛い死に方ってありますか?」

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