099 冒険者ギルドと敵対
冒険者ギルドのギルドマスターであるゴウケツは、ギルドの建屋を出て行くエルフのエリと雪女のユキを無言で見送った。
その後、冒険者達とギルド職員達に死体の片付けを手配し、『剣神』ジョウセンに話し掛ける。
「ジョウセン、詳しく話を聞かせて貰うぞ。しかし、その前に・・・。」
ゴウケツは、誰もいない空間を向く。
「『闇の探索者』よ、今の二人を追って素性と目的を探れ!」
何も無い空間から出現する3人の影。
全身黒い服装に身を包む。
闇魔法のスペシャリストの冒険者達。
「まさか、『闇の探索者』が、本当にいたのか・・・?しかし、先程の警告を破って大丈夫でしょうか?」
『剣神』ジョウセンは驚いた顔。
「この国最高の探索者達だ。バレる事は無いだろう。あの女達の正体を突き止め、冒険者ギルドで暴れた事を後悔させてやる。さあ、行け!」
「「「承知しました。」」」
影の3人が返事をした直後。
3人は硬直した。
「どうした?直ぐに追いかけないと、見失うぞ?」
ゴウケツは3人に問い掛けるが、3人は動かない。
瞬きもせず、立ち尽くす3人。
「おい!」
焦れたゴウケツは大声を出して、3人の内1人の肩を触る。
すると肩を触られた男の首が落ちた。
「ひっ。」
ゴウケツは飛び退く。
首が落ちた男の身体は糸が切れた人形の様に崩れて倒れた。
その衝撃で他の2人の首も落ちて、身体が倒れる。
ジョウセンは、目を見開きその様子を唖然として眺め立ち尽くす。
ゴウケツは呟く。
「我々は何者を敵に回したのだ?」
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ギルドマスターの執務室。
部屋にいる4人。
ギルドマスターのゴウケツ。
『剣神』ジョウセン。
受付にいた職員の男性ヨシカー。
そして右手首を斬られた『銀狼の剣』に所属する酔っ払い冒険者マケヌラ。
ゴウケツはマケヌラを睨む。
「話を纏めると、あの2人に酔っ払って絡んで、初めに手を出したのは、マケヌラ、お前なんだな!」
「ひ、ひぃ、そ、その通りです。」
ゴウケツの勢いに怯えながら答えるマケヌラ。
「その後、仲間の手首を斬られて、怒ったセヴァが剣を振り上げ殺そうとして、返り討ちにあった。」
「その通りです。」
受付の職員ヨシカーが答える。
「更にターチル他数名の冒険者達が、武器を持って襲い氷柱にされた。
氷柱にされた冒険者達は武器を持ち襲おうとしたのは明確。武器を持たない冒険者達は無傷だったと・・・。」
「間違いありません。」
「一方的に俺達が悪いんじゃねえか。それで、得体の知れない2人が敵に回ったのか・・・。
マケヌラは罰として冒険者資格剥奪。それから冒険者達が殺される原因を作り、ギルドに大きな損害を与えたので、罰金として金貨30枚。
払えなければ奴隷落ちにして、身体で払わせろ。」
「承知しました。」
受付の職員ヨシカーはマケヌラを拘束し連れて行く。
「助けて下さい。もうしません!」
マケヌラはヨシカーに引きずられながら執務室を出て行く。
「ジョウセン、あの2人は何者だと思う?」
「皆目見当が付きません。少なくともエルフはSランク相当の実力者。黒髪の女性はそれ以上でしょう。魔物なら災厄級ですね。俺には勝てる気がしません。特に『闇の探索者』達が殺された呪術かスキルは脅威です。」
バズが風刃で首を斬り落としていたが、バズの姿が見えないギルドの人達は、恐怖を感じている。
「俺もそう思う。2人とも冒険者登録に来たんだろ?大人しく列に並んでたと聞いている、初めはその気があったって事だ。すんなりいけば大きな戦力になったのに、敵対しちまうとはな。
チクショウ、マケヌラめ、この大切な時期に余計な事しやがって。」
ゴウケツとジョウセンはエリが冒険者登録済みで、ユキだけ冒険者登録しに来たことは知らないので、2人とも冒険者登録しに来たと思っていた。
「出来れば何処かで偶然会って、お詫びして、敵対関係は解消してえな。」
「全くです。」




