092 商人と冒険者に絡まれた
商人の馬車が魔物に襲われていた。
冒険者が助けに入り、問題無さそうだったが、死角から魔物が馬車を襲い、魔抜けである獣人の子を馬車から蹴飛ばし、囮にして逃げた狸獣人で商人のポンタ。
それを見て獣人の子を助けに入った黒猫のケット・シーのペロとダークエルフのダルア。
ダルアはポンタに叫ぶ。
「この子を犠牲にして逃げたな!」
ポンタは驚き答える。
「え!・・・。そ、そうですが、何か勘違いなさってるご様子ですね。」
獣人の子供に眼を向けるポンタ。
「此奴は魔法が使えない魔抜けです。何をしても問題ありません。」
ポンタは獣人の子を蹴り飛ばした。
「きゃああああ。」
悲鳴をあげて転がる獣人の子。
ダルアは銃をポンタに向けた。
俺はダルアの銃を掴んで下に下ろし、小声で話す。
「ダル、此処では我慢しろ。ハルカの仇を討つ必要がある。あまり目立つと手段が狭まる。」
ダルアは怒りで震えながらポンタを睨む。
ポンタはダルアを見て不思議そうな顔をして獣人の子に向かって歩く。
そして獣人の子の背中を踏みながら笑って話し掛ける。
「此奴は魔物の盾にする為に連れて来たのです。魔抜けの子など、こんな事にしか使えませんからな、あはは。」
ダルアはポンタに向かって行こうとしたので、右手を出して止めた。
「よせ!ここは我慢だ。」
ポンタはダルアを不審そうに見ると、俺に話し掛けて来た。
「どうでしょう。町まで護衛して貰えないでしょうか?」
「お断りします。俺達はただの旅人です。冒険者では無いので、依頼を受ける気はありません。」
「ほほう、旅人ですかぁ。」
ポンタは嘲る様な笑いを浮かべる。
狼の獣人ロウガがこちらに向かって来た。
「おう、あんたらは冒険者じゃ無いのか、特に断りが無く、勝手に戦いに混ざったから、分け前は無しだ。」
ポンタが更に俺達に嫌みを言う。
「全く旅人風情が余計な事するな。ロウガさん達が魔物を倒しそうだったのを見て、慌てて手伝って、お零れでも貰おうと思ったか?」
随分失礼な奴等だな。
「分け前は入りませんよ。勝手にしたことですから、そちらで分けて下さい。」
「当然だ。それより、可愛いツレが居るじゃないか。ふふふ。その女は置いていけ、俺が可愛がってやろう。」
ロウガはダルアを厭らしい眼で舐め回して気持ち悪く嗤う。
ポンタが続けて話す。
「ふはは、ロウガさん、楽しんだ後は私にください。奴隷で売れば高く売れそうだ。」
はぁ、此奴は頭が腐ってるな。
子供の俺と子猫のペロと女性のダルアの3人だから、舐めてるんだろう。
ダルアはロウガを睨み、俺は冷めた眼で見詰める。
そこに助けに入った冒険者パーティー『月白の爪』の1人である犬獣人のドルダが割り込んできた。
「ロウガさん、ポンタさん、ちょっと待って下さい。町に急ぎましょう。そんな事をするなら、先程護衛に入る約束をしましたが、断りますよ。」
どうやら助けに入った冒険者パーティー『月白の爪』は、一緒に馬車を護衛して町に進む事にしてたみたいだな。
「ちっ、しょうが無いな、ドルダの顔を立てて特別ここは退いてやる。お前等ドルダに感謝するんだな。何処かに失せろ!」
ロウガは舌打ちして、吐き捨てる様に言う。
ドルダはホッとした様子。
しかし、ここまで言われたら、俺が我慢出来ないな。隣のダルアもペロも、もう我慢の限界の様だしな。
「おい、俺に喧嘩を売ったんだよな!買ってやるよ。」
ドルダが素早く俺とロウガの間に入って俺の肩を掴む。
「止めておけ、旅人が冒険者に喧嘩を売るなんて、良いことは無いぞ。
しかも殲滅の旅団を相手にするなんて馬鹿げてる。折角退いてくれたんだ、大人しくしてろ。」
ロウガはニヤニヤ笑ってこちらを見ている。




