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第10話 恥ずかしい衣装を纏って……

「はぁ……はぁ……」

 空を飛んでいる俺の腕の中にはむせび泣く子供。本当にギリギリだった。下を見ると妖怪が悔しそうにこちらを睨んでいる。妖怪から離れた場所に子供を降ろした。

「あ、ありがと……」

「さっさと逃げろ」

「う、うん!」

 子供は返事をすると走って離れて行った。俺の周りには誰もいない。あの妖怪以外は。

(戦うしかないか……)

 慧音は別の妖怪の相手をしている。このままではこの妖怪のせいでけが人が出てしまう。

「行くぞ。妖怪」

 俺が声をかけた途端、妖怪は突進してきた。かなりのスピードだ。だが――。

「今の俺にはついて来れないぜ」

 一瞬にして妖怪の後ろに回り込む。このコスプレのおかげだ。

「うがああああああ!!!」

 俺の挑発を理解したようで奇声を上げる妖怪。その時、曲が終わり次の曲へ移行する。


~プレインエイジア~


 服が輝き、四角くて青い帽子に青いロングスカート。慧音のコスプレだ。

「!!?」

 妖怪は俺が変身した事に驚いているようで目を見開いた。

「さぁ、来いよ」

 またもや、挑発。

「……」

 妖怪は警戒して近づいてこようとしなかった。慧音は人里を守っている。きっと、妖怪の中でも噂になっているのだろう。言語があるとは思えないが。

「こっちから行くぞ! 産霊『ファーストピラミッド』!」

 大声でスペルを宣言すると弾幕が展開され、妖怪目掛けて進み始める。妖怪は上手く弾と弾の間を潜り抜け、回避。

「チッ!」

 弾は消えず、家にぶつかりそうになり強制的に消す。その間に妖怪が近づいてきた。

「くそっ!」

 空を飛んで躱すがこの妖怪も飛べるようでしつこく追い回して来る。

(どうする?)

 下手に弾幕を張れば周りに被害が及ぶ。このまま慧音が来るまで逃げ続けなければいけないのだろうか。

(いや、駄目だ!)

 戦う事を決心する。理由はこんな恥ずかしい衣装を纏いながら逃げるなんて嫌だからだ。方向転換。

「!?」

 妖怪は俺が向かって来るとは思っていなかったらしく驚いていた。そして、俺は妖怪の腕を掴み、ホールド。逃げられないようにする。

「これでも食らえ!!!」

 思いっきり頭を引き、勢いよく妖怪の脳天に振り降ろす。


――そう、頭突きだ。


 妖怪は白目を向いて気絶。こちらにも衝撃と痛みが襲うと思ったが不思議な事に何もなかった。慧音は相当、石頭らしい。

「……ふぅ~」

 これで一安心だ。その時――

「がっ……」

 背中に激痛が走る。痛みで集中力が切れ、頭から落ちる。

(な、なんだ?)

 訳が分からない。一体、何が起きたのだろう?

「!!!」

 わかった。妖怪だ。俺の目に映る妖怪は口の周りにべっとりと血を付けて笑っていた。もう一匹いたのだ。

「くそ……」

 どうやら、腰を深く抉られたようだ。痛みと出血で目の前が霞む。

(まずい……)

 内心では焦っているが体が言う事を聞かない。そこで次の曲に変わる。


~月まで届け、不死の煙~


 服が光り、下は赤いもんぺにサスペンダーが付いているズボンに上は白いシャツ。髪には白っぽいリボンが付いている。

「?」

 変身した途端、背中の痛みが消えた。

「いって!?」

 そこで地面に叩き付けられる。衝撃も痛みも強かったがすぐになくなる。

「?」

 訳が分からない。背中に触れてみても血が出ていないし傷そのものもなくなっている。

「なんなんだ?」

 声に出してみるが答えは帰って来ない。

「がるる……」

 上から俺の腰を食った妖怪が降りてくる。

「……やるしかねーな」

 周りを見ると何匹もいる。俺が倒した妖怪と同じように犬のような姿をしていた。

(群れ?)

 どうやらこの妖怪たちは群れで行動しているらしい。そこまで考えていると1匹の妖怪がこちらに向かって来る。

「くそっ!?」

 反射的に右ストレートを放つ。

「なっ!?」「!!!」

 俺も妖怪も驚く。何故なら――


 俺の右手が炎を纏っているからだ。


「キャウン……」

 右手はそのまま妖怪の頬を殴り、吹っ飛ばす。吹き飛ばされた妖怪はそのままぐったりと横たわった。どうやら気絶したようだ。

「……」

 俺は右手を見つめる。確かに炎。でも、熱くないし火傷もしていないようだ。

(このコスプレの能力か?)

 傷が治ったのもこの炎もきっと、このコスプレの能力だと思うが確信はない。周りの妖怪が吠え始める。仲間が倒された事に興奮しているのだろう。

「来いよ。妖怪共」

 俺の言葉を聞いた妖怪たちが一気に突っ込んでくる。幸い、ここは人里の端っこ。誰も住民はいない。

「らっしゃ!!!」

 体から炎を噴出し、駆け出す。このコスプレは体全体から炎を出す事が出来るようだ。炎を飛ばす。妖怪は一度、足を止める。その隙に炎で作った翼で飛ぶ。

「食らえ!」

 手から炎の塊を数発、放った。炎の塊は的確に妖怪にヒットする。

「くっ!?」

 だが、数が多すぎる。俺は背後に回った妖怪に蹴飛ばされた。その先にはまた妖怪。

「くそっ!?」

 瞬時に足から炎を放出し、勢いを殺す。

「「がうっ!」」

 目の前にいた妖怪と先ほど俺を蹴飛ばした妖怪が前後から突っ込んでくる。

「させるかよ!」

 空中で両腕を大きく広げ、手のひらを2匹の妖怪に向け、炎を放出した。炎は妖怪に直撃し吹き飛ばす。その間に3匹の妖怪が襲って来た。

(きりがねー!)

「ふんっ!?」

 今度は全方向に炎を飛ばす。こうしなければ対処出来ないのだ。妖怪たちを吹き飛ばし着地。その時、曲が終わり、次の曲が再生される。


~ティアオイエツォン(withered leaf)~


 今度は赤いワンピースに緑の帽子。そして2本に枝分かれした尻尾と猫耳が現れた。

(これって橙?)

 マヨヒガにいたあの猫だ。正直言って心配。

「がうっ!?」

 それでも妖怪は待ってくれない。吠えながら突っ込んでくる。

「どうにでもなれ!」

 姿勢を低くし妖怪に向かって一気に跳躍する。

「「!?」」

 気付いた時には妖怪の横にいた。

 予想外に早くて俺も妖怪も吃驚する。子供を助けた時のコスプレよりは遅いが十分だ。

(行ける!)

 空中で方向転換し妖怪の腹に蹴りを入れ、近くにいた2~3匹の妖怪もろとも吹き飛ばす。

「次!」

 地面に着地した瞬間に走り出す。妖怪たちは戸惑っているようだ。普通の人間が変身し自分たちを圧倒している事に。

 こちらからしたらチャンスだ。

 目の前にいた妖怪を右手の爪で引っ掻き、右にいた妖怪を引っ掻いた反動を利用し左手で裏拳を放つ。

 一度、着地。それから左にいた妖怪の顎に左アッパー。そのまま体ごと後ろに回転、後ろにいた妖怪の脳天に逆さの状態で蹴りを入れた。そう、サマーソルトキックだ。

≪!!?≫

 妖怪たちは驚いていた。俺の戦い方が変わり過ぎているからだ。

(このまま一気に方を付ける!)

 俺は姿勢を低くし足に力を込めた。


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