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デウス・エクス・マギカ  作者: 囘囘靑
第3章:猫と毒薬(Las Chats e La Toxica)
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第48話:異常な愛情(Lieve Etrange)(2)

 声は、どこから響いてきたか? オリヴィエはもう一度、“笑い声(リュヴ・スメクス)”にふり向く。地面にはシーラが倒れており、パプリオスの(あし)もまた、幾本かが飛び散っている。


「人間!」


 オリヴィエが状況を察知するよりも前に、地面に落とされたシーラが、“笑い声”に向かって叫んでいる。怒りとも、恐怖ともつかないような響きに、シーラの声は震えていた。


 “笑い声(リュヴ・スメクス)”の上に留まっていたパプリオスが、全身を震わせながら、搭乗席によじ登ろうとしているひとりの人物を、残る肢ではねのけようとしている。その人物は、宮城へと向かう道すがらでオリヴィエたちが(かい)(こう)した、白銀の兜の傭兵だろう。今は裸に()かれているが、色素の薄い金髪から、彼女の正体が分かる――。


 その娘と、オリヴィエのまなざしが交錯する。


「オリヴィエ様!」


 娘が叫ぶ。強い興奮が全身を駆けめぐるのを、オリヴィエは感じ取る。オリヴィエはその娘を知らない。娘もまたオリヴィエを知らないだろう。


 ただ、この娘はオリヴィエの身体(エイドス)ではなく、精神(ヒュレー)を見抜いた。記憶(メモリエ)を喪った自分の精神が、彼女の直感に共鳴している。


 腹をうねらせると、尾の先端で、パプリオスは娘の身体を突く。尖端にあった針が、娘の身体を真ん中から貫いた。娘はそのまま、勢いに圧されて、搭乗席に(はりつけ)になる。


「覚悟を……お願い……!」


 自分の血で染まった手を振り上げると、娘は搭乗席のパネルに触れる。


「やめて!」


 “笑い声”を追われたシーラが、娘に向かって手を伸ばす。


〈搭乗者情報の更新が完了しました〉


 “笑い声”から、機械音声が響く。シーラは、パプリオスはもはや、“笑い声”の持ち主ではない。


 シーラに照準を合わせると、オリヴィエは撃鉄を起こす。覚悟は決まっていた。

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