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俺は歩きながら土を押し固める方法を探る。
水魔術で水球を持ち上げるように土を球にして持ち上げ、圧縮させるイメージを精霊に伝える。
色々やってみたが、乾いてて砂っぽい土だと難しい。粘土質だと上手くいく。
ようするにその土に依存するという訳だ。
道の土は靴で蹴ってみるとカチコチだが、魔術で掘り返して調べてみると砂利混じりで、更にほぐしてしまうと固まりにくい緩い土であることが分かった。
人や獣がそれなりに通って踏み固められているだけなのだ。
水を含ませるともちろん固まりやすいのだが、ベッドにしたい場合にそれでいいのかどうか。
表面だけ乾かせば大丈夫?
一応、水を含ませた土球をウォーターボールのように射出するのも試してみて出来るようになったが、異世界小説の土魔法ってこれで合ってる?
なんか違うよね?
ストーンバレットとかってもっとカッコいいイメージだよな。
俺のはなんか野暮ったいんだよね。
ちなみに、土球を木の幹に当てても木は折れたりはしないよ。
ドシッと音がして土が飛び散り木が揺れて終わり。
本当に地味。
しかし、ウォーターボールとアイスボール以外の初めての攻撃魔法(?)なので大切にしたい。
全部ほぼ同じってのが珠に傷だね。
タマだけに。
いや待て、氷柱を飛ばすアイシクルもあった。
すっかり忘れてたわ。
詠唱はなんだっけ?
「“精霊よ 氷の精霊よ 我らに力を貸したまえ その冷徹な刃にて 我らが敵に鉄槌をお下しください その冷たい切先にて裁きをお与えください” アイシクル!」
覚えてた!
口が泡立つほど繰り返し詠唱したからな。
脳みそじゃなくて口が覚えてたわ。
見ると地面に突き刺さった氷柱が茜色に光っている。
気づけばもう夕方だったか。
俺は道端の地面を土魔術で削り取り平らな面を作った。
取り除いた土は斜面の下側に置いた。
今は下生えを押し潰しているが、そのうち風や雨で崩れて無くなるだろう。
切削面の湿気を飛ばして寝床の完成だ。
割と寒いので身体が温まるように晩飯は粥にする。
干し肉をナイフで刻んでナッツも入れて米と一緒に炊き込んでみる。
干し肉の塩味の付いた新たなおしゃれ粥になるのではと期待していたのだが湯が沸いてくると強烈な羊臭さが鼻をついてきて後悔した。
うーん、微妙。
羊は干し肉のままか、リンのおばあちゃんのレシピのようにスパイシーに仕上げなきゃいけないみたいだな。
出来上がった干し肉粥は思ったよりは食えたが、美味くはなかった。
自分で作ったからまあ許せたが、誰かが作って出してきたら腹が立つくらいの味ではあった。
気になって全ての干し肉の匂いを嗅ぎ比べる。
今のはジロで買った明らかに羊であろう干し肉だが、カイエンでは羊はほとんど見ていない。
鶏がメイン、牛はちょっと、馬は馬車用にといった感じだった。
カイエンで買った干し肉は肉質からは判別が付かないが、羊ではなさそうだ。
こっちで作れば良かった、、、。
どうしても試してみたくてカイエンの干し肉を2〜3cm切り取ってマグカップに入れ、水で満たし火魔術で温める。
湯気を上げ始めても臭くない。
やっぱこっちだったかと思いつつ口を付ける。
塩気はいい感じだが旨みは薄い。
多分この干し肉は牛だわ。
出来上がったスープは不味くはないが、特別旨いという訳でもない。
やはり骨随なんかのコラーゲンか昆布の旨みが必要か。
あ、昆布はあるじゃん。
明日は牛と昆布のダブル出汁スープで晩飯と洒落込みたい。
スープが上手くいけばなんなら堅パンでも合うかもしれない。
そういえば、リロの奥さんの雑貨屋は色々置いてたけど食料品は乾物だけ扱いがあった。カウンターの奥に干したキノコがあったのを見た記憶がある。
あれがあれば、干し肉、昆布、干しキノコのトリプル出汁が取れたのに。
イノシン酸、グルタミン酸、グアニル酸が揃えば無敵なのだ。
なんとなく水で戻してから使うイメージがあり手間だからと購入しなかったが扱いは昆布と同じなのだから買っておけば良かった。
そんなことを考えつつ、どうしても気になって、飲みかけのスープに今朝キメた昆布の残りを入れて再加熱してみる。
あ、これはイケる。
まだ旨みはしっかり出ていないが美味しくなる片鱗を感じる。
リンのおばあちゃんに教わった辛味だけ加えるスパイスを少しスープに入れて飲み干した。
腹の底が温まって心地良い。
俺は火魔術で毛布をホクホクに温めて潜り込んだ。
おお、これはかなりいい感じだ。
俺は胃袋の温かさと毛布の暖かさを堪能しながら眠りに落ちていった。




