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悪寒や眩暈はほぼなくなっている。
吐き気もおさまっている。
上体を起こしてみる。
不快感はないが、手足が痺れている。
これが魔力切れか、、、。
結構ヤバイな、これ。
限界まで使い切ったら死ぬな。
そんな感じがした。
水袋を取って水を飲む。
枕にしていたせいで水はぬるかった。
すっかり日は登っている。
俺は立ちあがろうとしたが、チカラが入らず諦めた。
また寝転んで空を見上げる。
木々を透かして曇った空が見える。
いやあ、ヤバかった。
土魔術はちゃんと長官に教わるまではやめといた方がいいかもな。
あ、そうだ。
リュックの中に昆布がある筈だ。
大半は長官の物入れに置いてきたが一応念のためにリンがくれた薬の袋に入れておいたのだ。
上体を起こして振り返り枕元に置いておいたリュックを探る。
あった。リンの織った布で作られた巾着袋。
板ガムサイズにハサミで切って油紙に包んでおいた昆布。
油紙は驚くほど高かったが買ってよかった。
俺は板ガムサイズの昆布を更に半分に折って口に入れた。
表面のしょっぱさで胃が落ち着く感じがあった。
また寝転がって昆布を味わう。
手足の痺れがおさまり血が通う感じがある。
微かに残っていた悪寒がおさまり毛布の温かさを感じる。
俺はほっとして大きく息をついた。
魔力切れは脱したようなので上体を起こして昆布を紙で包み直した。
残った半分も戻した。
昆布の魔力スゲエ。
これは大発見な訳だわ。
パラディーノあんた陞爵できるよ。
長官にも少し分けておけばよかったな。
そんなことを思いながら身支度を整える。
立ち上がると急激な吐き気をもよおして吐いた。
昨夜食べたものがほとんど未消化で出てきた。
多分、魔力切れで身体が心臓を動かす以外のことを全てやめてしまったのだろう。
ガチでヤバイな魔力切れ。
吐く前に昆布は口から出しておいたので水で口をゆすいで昆布を口に戻す。
世紀の大発見だからもったいないからな。
俺は朝食は摂らずに歩き始めた。
木漏れ日が美しい。
鳥の鳴き声が美しい。
木々が美しく、下生えも美しく、花なんて咲いてたら感動で泣いてしまうかもしれない。
今まであまり見てこなかった周囲の自然を見渡してそんな風に思う。
健康って素晴らしいんだな。
人は当たり前に享受していたものを奪われて初めてその価値を思い知る。
俺が体験したのが正にそれだ。
人生は一歩外れれば闇だ。
この道と同じ。
一歩踏み外せば奈落に落ちていく。
俺の魔力は少なくないって長官は言ってたけど、それはずっと魔力の高い海産物を摂って常に補充されていたからで、垂れ流しにしても大丈夫な体質とかって訳じゃなかったのかもしれないな。
魔術で無理をする必要がある時は予め昆布を口に入れておくといいかもしれない。
まあ、使い方なんかは昆布が広まればどんどん開拓されていくだろう。
俺はゆっくりめなペースで足を進めた。




