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そんなこんなで夕方になると森の入り口、というか山道の入り口に到達した。
平らな土地は全て耕し、斜面は農地にしづらいから放置、といった感じだろうか。
まだ一日だがもうすっかり脚がつかれた。
腰も痛い。
特に足の裏が痛い。
「今日はここで野営だ」
「はい」
俺は直ぐに靴を脱ぎ捨て、ゲートルをほどき、靴下も脱いだ。
足裏全体が熱を持っているような感じに痛み、ずっと脱ぎたかったのだ。
しかし、脱いだら脱いだで小石や砂粒が更に足裏を刺激する。
何かの拷問だろうか?
あわてて座り込んで足を上げているとリロ氏がやってきて俺の足裏に触れた。
「ぷよぷよじゃねえか。赤ちゃんか」
「え、リロさんの足裏はどんなですか?」
「ほれ」
リロ氏の足裏は皮膚が厚くカチカチだった。
そういえば、今日はこの世界で生まれて初めての長距離歩行だったかもしれない。
村は狭かったし、船も狭いし板張りだし。
色々動き回っていた気がしたけど、今日みたいに一日中歩き続けるみたいなことはやってこなかった。
サナでもよく座ってたしな。
「ほれ、飯にするぞ」
「あ、はい」
「茶を沸かすからカップよこせ」
「はい」
リロ氏はふたつのカップに水袋から水を入れると地面に置き詠唱を始めた。
「精霊よ、火の精霊よ。気高き炎で我らを守りたまえ。地より噴き上がる業火をもって我らにその力を示したまえ。フレイムピラー!」
カップを置いた地面から3〜4メートルほどの火柱が立ち上がり、俺は驚いて仰け反った。
眉毛が燃えるかもと思うくらいの熱が伝わってきた。
やべぇ火力だ。
見るとカップの水は既に完全に沸騰していた。
リロ氏は何事もなかったようにふたつのカップに茶葉を入れた。
「すごいですね」
「スゲエだろ。超便利だ。水が直ぐ沸く」
確かに湯沸かしポットより電子レンジより早い。
見ればカップの取っ手の下側には真っ黒にススが付いている。
「おい、まだ触るなよ。冷めるまで待て」
言われなくてもまだ沸いてるわ。
俺たちは皿に堅パン1枚と、ドライフルーツとナッツと干し肉を出して食べ始めた。
食べ終わる頃には飲める温度になっているだろう。
「水袋の中身は捨てて新しい水に入れ替えとけよ?」
そう言ってリロ氏はまた詠唱し、蓋を抜いた水袋に向かってウォーターボールを打ち込んだ。
大半は溢れて水袋全体がびしょ濡れになっている。
魔術の扱いが何かと豪快なリロ氏である。
俺は水袋の中に水を発生させることができるが無詠唱を使うのはまずいので俺も同じようにする。
「明日の朝も同じように水の入れ替えを忘れるな。忘れると腹壊すからな」
「了解です、、、アガッ!」
「どうした?」
ブドウだと思って口に入れたドライフルーツに結構大きくて頑丈な種が入っていて力一杯噛んでしまった。
「ああ、ナツメか。美味いけど種、邪魔だよな」
食事が終わる頃には日は落ちて暗くなってきた。
毛布の扱いを教わる。
折り返して2重になった所に寝転んで上は被せるだけ。
しっかり包まってしまうと緊急時に直ぐに出れないというのが理由らしい。
同じ理由で靴も履いて寝ろと。
荷物はリュックに全て仕舞い、その上に水袋を置いて枕にする。
リュックと毛布だけ持てば忘れ物はない、という状況を作るのだ。
「焚き火とかして代わり番こで見張りとかするのかと思ってました」
「大人数のときはそうするな。だがここは野犬も居ないし魔物も出ない。しっかり寝た方が良い」
「なのに警戒態勢で寝るんですね」
「俺たちが通ってきた農家の連中が追い剥ぎに来ない確証がないからな。でもって焚き火はそういう奴らの目印になる」
「ああ、、、」
ここでも、げに恐ろしきは普通の人か。
二人組で片方はサナ服を着た子供。
組み易しと思われても仕方ないだろう。
折り畳んだ毛布に潜り込む。
慣れない靴を履いたままで寝れるかよ、と思っていたのだが疲れていたのだろう、割とあっけなく眠りに落ちた。




