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 その夜、俺はキコたちに別れを告げた。


「お世話になりました。長官のお使いでポリオリに向かうことになりました」

「え、長官はどうするって?」

「カイエンで暫くは事後処理にあたるそうです」

「お前、どうやってポリオリまで行くんだよ。馬なんか乗れんのか?」

「いえ、歩きじゃないですかね、、、」

「歩きか、、、」


 キコもカッロもあからさまに嫌そうな顔をした。

 

「遠いんですか?」

「近くはねえな、、、カイエンまでなら2週間。そこからポリオリまでやっぱり2週間くらいって話だな」


 ふむ。



 ロッコにも会いに行く。

 奴は医務室にいた。


「パラディーノさんロッコさんお世話になりました。この度、船を降りることになりまして」

「お、サナに嫁ぐ決心をしたか?」

「いえ、長官のお使いでポリオリへ」

「長官と?」

「いえ、長官はカイエンに捕まってしまったそうで」

「まあ、そりゃそうだわな。てかお前、貴族と話しとかできんのかよ?」


 そう言われると不安だな。

 どれくらいの期間お世話になるかに寄るけど、長官があれこれ調整するのにひと月ふた月は掛かるような気がしてきた。


「いやあ、領主さんには挨拶だけ済ませて後は小間使いの見習いでもやらせてもらえればなって」

「うん、それがいいな」

「オミくん、わたしはマシュトマまで戻ったら任期満了です。軍を去りますのでもう会うことはないかもしれません。しかし魚の粉と乾いた海藻、あれは大発見でした。あれのチカラでわたしは陞爵を狙います。パラディーノ男爵という声が風に聞こえてきたら訪ねて来てもらってもいいですよ。可能な限りのお礼を用意しましょう」


 おお、野望に満ちている。

 最初はちょっとだけ苦手かもと思ったけど、やっぱ良い人だな。

 訪ねることはないと思うがお礼は言っておこう。


「お気遣い痛み入ります。覚えておきます」

「おっ、貴族っぽい。その調子だ」


 このふたり、飲んでたな。



 翌日は基地へ。

 受付へ向かう。


「あれオミくん、また外出?」

「いえ、リロ少尉に言伝があって参りました」

「ああ、あのひと、、、ちょっと待ってね」


 その場で立ったまま待つとリロ氏が奥からやって来た。

 一瞬、誰だか分からなかった。

 ヒゲを剃り、髪を短く切り揃えてピシッとアイロンの掛かったシャツを着て、足元は編み上げのブーツがかっこいい。


「リロ少尉、お話するのは始めてですが、、、変わりましたね?」

「ああ、船の時の格好で基地勤めはヤバいだろ。お前こそ何だその格好」

「基地に子供服はないとの事で、サナで取得しました」

「基地内だからってそんな畏まらなくて大丈夫だよ、、、ええと、こちらにも長官から辞令が来てる。明日の朝、セイレーン号の出航に合わせて出る」

「はい、よろしくお願いします」

「出発といってもお前の装備を整えるところからだな」

「装備?」

「ああ、野営が続くから必要なものを買い揃える。毛布だの水袋だのな」

「あ、はい。ご教授お願いします」

「だからいいって、、、じゃ明日な」



 そうか、野営の旅をするんだから余計な荷物は邪魔だよな。


 米と種と布の大半は長官の部屋の物入れに置いておいてもらうことにした。

 スパイスは小袋に移して少しずつだけ持つ。

 ウエストポーチには財布と吸魔石など貴重品。

 ナイフはウエストポーチのベルトにシースを取り付け、何時でも抜けるように。


 これでリュックの中身はほとんど空。

 きっと明日には水と食料でいっぱいになるだろう。


「一番嵩張るのは毛布だな」


 長官が言った。


「ここらは南部とはいえ夜はやっぱり冷えるから」


 そういえば今は冬なのだった。


「長官、日付って分かります?」

「今日のか? まだ2月の、、、19日だな」


 おお、船に乗ってるうちにクリスマスと新年を迎えていたのか、、、。


「あの、サナの祭りってのはひょっとすると新年のお祭りですか?」

「そうだ。サナはまだ月の暦を使ってるからこっちの新年とはひと月ほどずれる」


 ちょっとまて。

 この世界の年齢は数え年だよな?

 ならば俺は既に12歳ではないか。


「長官、僕はもう数えで12歳でした」

「そうか、ならばわたしは21だな」

「長官は20のままでいいですよ」

「ふむ、それは良いな。8年待てば同い年になれる」

「そうなったら長官に結婚を申し込みますね」

「つまり第三夫人か。悪くないな」

「うぐ、、、」

「どうした?」

「自分の節操のなさと甲斐性の足らなさに気づいただけです、、、」

「ふははは。それがわかっただけ成長ではないか。立派だよ立派。王族なんかだとただの末席の王子なのに何人も娶ろうとするアホがわんさか居る。全くもって税の無駄遣いだ。片っ端から引っこ抜いて回りたい」


 何を?

 というか、その発言は不敬罪になるのでははないだろうか?

 しかし乗る。


「長官が国を乗っ取って一夫一婦制にしましょう!」

「それは悪手だな。尼寺に送られる可哀想な淑女が増えるだけだ」


 バンバン離婚してバンバン新妻を娶るようになるだけってことか。


「難しいっすね」

「そうだな」


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