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 突然できた双子の兄弟とバザールを練り歩く。

 しかし言葉が通じないので微妙に不便。

 ナイフといったジェスチャーや靴といったジェスチャーをしてもいまいち伝わらない。

 靴のつもりのジェスチャーをしたら豚足の屋台に連れて行かれた。


 これはサナ語の習得が必要と思い、書くものを探した。

 土の地面に木の枝。

 これだ。


 まずは自己紹介。

 自分の胸を二回叩いて「オミ」といった。

 分かったらしく兄弟も胸を叩いて「リン」と言った。


 リンを指差して「リン」。

 自分を指差して「オミ」。


 リンも同じく俺を指差して「オミ」。

 自分を指差しして「リン」。


 もう意思疎通は完璧だ。


 自分を指差して「10」。

 リンを指差して「10」。

 それから指を折りながら1から10を数える。

 そして地面に1から10の数字を書いて読み上げる。

 リンはこちらの意図を理解してくれてサナ語を発音してくれる。

 それをさらに地面に書いていく。


 ああ、メモ帳が欲しい!

 そう思って手に何か書くジェスチャーをしたらリンはパッと立ち上がって走り出した。


 追いかけると石畳の向こうの土手を指差している。見ると手のひら大の葉っぱ。

 これに書けと言うことらしい。


 リンは平らな石畳の上で小枝で葉を引っ掻き、文字を書いてみせた。

 おお、これは便利。

 しかし石畳にかがみ込んで書き物をするのは不便と思ったら手を引いてまたバザールへ。

 暫く物色すると平らな板を売っている店があり手のひら大の板を買ってくれた。

 またもや支払いは小袋。

 今度は5個。

 サナではアーメリアの通貨の代わりに麦を入れた小袋を使うのが普通なのかもしれない。

 感じとしては小袋ひとつで小銅貨一枚くらい。


 俺は銅貨の入った巾着を見せて払おうとしたが、頑として断られた。

 俺とお前の仲じゃないかということらしい。

 男前だ。


 これでメモは取れる。

 地面に絵を描き文字を書き発音しメモを取る。

 俺たちは甘いお茶を飲みながら夢中になってそれを続けた。


 ふと気づくと空が真っ赤に染まり夕日がジロ河の上流に沈もうとしていた。


 いかん、ロッコを迎えにいかなければ。

 店の場所は分かっている。

 俺は立ち上がり店の方向を指差した。


 リンも立ち上がり別の方向を指差し俺の手を取り、飯、寝るのジェスチャー。

 泊まりに来いと言っているのだろう。


 色々言葉は教わったが「仲間を待たせている」みたいな複雑な表現はまだできない。


 俺は首を振り、手を振り別れを告げた。

 告げたつもりだったがリンは俺に付いてきた。


 店に着くとまだロッコはカウンターでバーテンを相手に話をしながら飲んでいたようだ。

 良かった。

 待たせてたらどうしようかと思った。


 店の外から声を掛けるとロッコは振り向いて手を振ってよこした。

 会計を済まして「遅かったな」と言いながら出てくると歩みを止めた。


「おお?」

「僕が二人居ると思いました?」

「いや、見分けは付くわ。どうしたそいつ?」

「同じ服を着てるよしみで友達になりました」

「ああ、ホント同じだな」

「で、彼に泊まりに来いと誘われてるんですが、どうですかね?」


 ロッコは腕を組み拳を顎に当てて悩み出した。


「ううーん、、、どうかな? 娼館に泊まる奴も居るし宿取って泊まる奴も居るがオミはまだ子供だからな、、、、」

「長官からは宿に泊まっても良いって言われてるんですけどね」

「ああ、じゃあ良いんじゃね。同じことだろ?」

「ですかね、じゃあそうします!」

「おう、明日の昼までに一回は顔出せ」

「分かりました!」


 俺たちは連れ立ってリンの家とやらに走って向かった。

 

 

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