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キコの父親はまだキコが小さなうちに亡くなったそうで、まもなく母親は再婚。
種違いの弟と育って来たとのこと。
アカデミーに入れるほど優秀だったキコに比べ弟の出来はあまり良くなく運動も勉強も苦手だったのだそうな。
キコは前の父親の顔も覚えておらず家族全員を本当の血縁と信じて育って来たが、13歳になる年に今度は母親を病で亡くなってしまう。
アカデミーの受験に既に合格していたキコに対して父親は真実を告げ、母親とキコは別の村から来たからお前の父親の事は何も知らないと告げた。
だからお前はアカデミーで、軍で、成功しなければならない。俺の家と畑は弟に継がせる。お前はアイツと違って出来が良い。きっとうまくやれるさ、とキコを送り出した。
納得がいかない訳ではないが、突如として天涯孤独の身となってしまったキコは実は自分が王族の落とし子なのではという妄想にすがるようになったのだそうな。
「でよ、アカデミーでもやっぱり成績優秀なのは貴族出身が多いし、となると俺がある程度優秀なのは血筋なのかなとか思ってな」
「聞きましたよ、城兵コースだったって言うじゃないですか」
「いやいや、成績だけ見ればな?」
「うん、実際は難しかったと思うよ。城勤めは結局どれだけ名家の面々を知っているかが大事になってくるから小さい頃からパーティとかに参加してるヤツじゃないと」
「そうそう」
「そういうもんですか」
「そりゃそうだよ。そもそも平民の孤児なんて王族に対して何をしでかすか分からねえじゃねえか」
「貴族出身なら家そのものが人質みたいなもんだからね」
「ああ、なるほど」
そんな話をしているとメインマストの監視台から声が上がった。
陸が見えたらしい。
すぐさま上陸準備かと身構えたが、どうやら陸に近づくまで二日ほど掛かるようで慌てることもないようだ。
しかしここからは24時間航行で一気に近づきジロ河河口近くで大潮になるのを待つとのこと。
海岸線にある港には寄らず、河を少し遡った所にある軍港に直接入るのだそうだ。
そのためには大潮で海面が上がり海水が河に逆流するタイミングでないと具合が悪いらしい。
不便この上ないと思うのだが、防衛のことを考えるとこの方が良いのだとか。
色々あるんだなあと感心しきり。
しかし河で内陸に入り込んだ港というのは長持ちしないのではなかったっけ?
流れてくる堆積物がどんどん川床に積もって浅くなり、船が入れなくなるのではなかったか。
かつてはベルギーが内陸の首都近くまで船が入れたので交易で栄え、後に河が浅くなって大型船が入れなくなり寂れたと習った気がする。
それがどれくらいの時間で起きることなのかは忘れてしまったが、当然それくらいの事は想定済みなのだろう。
そもそも港に向く地形が他にはなかったのかもしれない。
俺の村も岩場と砂浜の遠浅のせいで大型船は近寄れなかったもんな。
ああ、俺の嫁は元気だろうか?
ふとそんな思いが頭をよぎったが、なんだか村の暮らしは随分と昔のことのように思えた。




