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 進路という言葉で人生の節目をやり過ごしてきた。

 卒業後の進路という奴である。


 それがどうだろう。

 まだ入試の最中だというのに卒業後の進路を問われてしまった。

 しかも正しいと思う進路には死ぬ可能性ありという付帯事項が付いている。


 自分自身で決めねばならぬ事項だと思うと同時に、自分で勝手に決めて良いのだろうかという疑問も微かに蟠る。


 俺は長官に拾われた。

 長官の所有物と言っても良い。

 悪いがお主の命を賭けてもらうぞ、などと長官に言われたなら「どんと来い」と気楽に応じた気がする。

 社畜根性が過ぎるだろうか?


 対して王子とは対等な気がしている。

 もちろん王子と乞食なんだけどもさ。

 精神的にってことだ。

 色々と教わったし世話にもなってるんだけど、まあこれは感覚的な話なので理解できないかも知れないけどさ。


 俺がジャンプ漫画の主人公なら即決で王子に付いて行くのだろう。

 どっこい俺ときたらジャンプ的ではないし、主人公的でもないからなあ。


 優柔不断が人の皮膚を纏っているようなモノだ。

 我ながら不惑にもなって情けない。



 などとぐずぐず考えながら歩いていたらもう宿である。


 ドアを開けると宿のロビーに懐かしい顔があった。

 トレスだ。

 トレスってほら、村のギルド員で俺に吸魔石を魔石にするバイトを教えてくれたトレスだ。


「うわ、トレスさん!」

「マジかよ、オミお前デカくなったな!」


 はしゃぐ俺を制してトレスは王子に対して膝をついた。


「ポリオリ第三位王子クラウディオ様と存じます。わたくし先日までギルドで勤めておりましたトレスと申します」

「丁寧な挨拶、痛みいる。オミクロンとは旧知のようだな」

「はい先日まで“日の出村”に駐在しておりました」

「我に用という訳でもあるまい。楽にしてくれ」

「ありがとうございます」


 そうなんだよな、トレスは擦れてるように見えて意外とちゃんとしてるのだ。

 俺とは大違いだ。


 トレスは立ち上がり懐から封書を出した。


「オミに手紙を預かってよ」

「誰からです?」

「イオタだ」

「おー、みんな元気にしてますか?」

「ああ、詳しいことは書いてあるらしいから読んでくれ」

「トレスさんは今は、、、?」

「セイレーン号の船長に誘われてよ、実はここで働いてるのよ」

「この宿で?」

「いや、領事館のスタッフだ。ギルドに顔がきくのがいた方が色々便利だろ?」

「マジすか。それはそれはよろしくお願いします」

「なんでお前が頭下げんだよ」

「いやあ、もうすっかりポリオリの人になってまして。ほんとよろしくお願いします」


 改めてトレスは王子とロレンツォと挨拶をした。


「アウグストとはもう?」

「ええ。アウグストさんは倉庫の下見に行ってます」

「なるほど、頼むぞ」

「お任せあれ」


 そんな懐かしい再会があって部屋に戻って昼飯である。

 今日の昼飯はさっき買ってきた黒パンとイチジクとハムである。

 この組み合わせ、めっちゃ美味い。

 それぞれがそこそこでも組み合わせで美味い飯ってあるよな。


 食いながら早速手紙を開く。

 あのイオタがこんな手紙を書くなんて凄い成長したなあ。


『オミくん久しぶり、イオタです。

お姉ちゃんの事をオミくんに相談してしまったばっかりにこんなことになって謝りたくて手紙を書きました。

ごめんなさい。

全部あたしの勘違いだったの。

本当にごめんね。


村の近況を報告します。

お姉ちゃんのイータはジッタくんと結婚しました。

秋には子供が産まれます。


オミくんのお母さんもご懐妊で、、、、

、、、、』



 その先も読んだけど頭に入らなかった。



 うーん、、、言葉にならない。

 


 ありていに言うならショックだった。



 うーん、無理。

 


 まず、イオタが何を謝っているのかよく分からないが、、、分かる気がする。


 つまりだ。

 最初からイータはジッタが好きで、二人は既にそういう関係にあったと。

 でもって喧嘩をしたとかその辺は分からないけど、そういうタイミングで俺が告白したからOKしたってことじゃないだろうか。


 でなきゃ時期的におかしいもんね?


 いや、良いんだよ?

 最初からふたりが普通にくっつくならそれで良かったんだ。

 どちらに転んでも傷付くのは俺だけなのだから告白したんだもの。


 しかし思ったよりも傷ついたね!


 いやいやいや、何を言ってる?

 自業自得だよ。

 帰れる時に帰らなかったもの。

 いや、その時に帰ってたとしても状況は同じなんだけどさ。


 でもまあ、村に婚約者が居るってのを心の支えにする反面、さっきもすっかりポリオリの人とか言ってたしな。


 そう。

 あの時に帰らなかったのはそういうことだ。


 むしろ感謝せねば。

 俺がクズであることによって誰かが傷付いたりする事態にはならなかったのだから。


 俺が勝手に独りで滑稽に踊って転んで怪我しただけって話だ。


 

 母さんがまた子宝に恵まれたのだって喜ばしい話だ。

 俺の居場所がなくなったなんて独りよがりで狭量な事を思うべきではない。



 そう。

 決断の時なのだ。


感想ありがとうございます!

誤字報告もありがとうございます!

いまだに最初の方の話で誤字がボロボロ出てきます

お恥ずかしい限りですがご協力お願いします!

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― 新着の感想 ―
まあ故郷に帰る気はほぼ無かったし実際自力でも帰ろうともしなかったし何時になったら帰らせてくれるんですか!って普通なら怒りもするのにそれどことか旅行気分居候気分で楽しんでいるからなあ。まさにクズ主人公で…
前話から続いて、家族・故郷との切り離し加速してるな
おぅ、オミどんまい。 それとして、イータが幸せならオッケーです。 (捨て置かれた形になってたので、ちょっとモヤってました)
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