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 四人部屋が取れたので部屋に向かうと、わりかし粗末な感じ。

 今になって思えばバルベリーニの冬城街の宿は高級宿だったのだな。

 だって調度品の質が良かったし枕やシーツがキレイだった。


 それと比べるとここは、、、なんて言うの?

 場末感?


 必要な物は揃っているけど微妙に質が悪いというか、少々古びている感じがする。


 いや、それでも野宿が続いてるから屋根と壁とベッドがあるだけで万々歳なのだけどもさ。


 食べログみたいな評価サイトがあったら二.五点くらいな感じ。

 ちなみに食事も出してないとの事。


 とはいえ、有料シャワーもトイレもあるのだから文句はない。

 無料で洗濯場が使えるのは評価が高い。

 水は有料だけど俺には関係ないのでね。


 早速シャワーを浴びて洗濯をする。

 まだ日が出てるし部屋にはバルコニーがあったのでそこに干す。

 たまには紫外線で消毒するのも大事だろう。

 何しろ取り込んだ時の匂いが良いし。

 たまには時間を掛けるのも悪くない


 しかしそこへいくとアウグスト先輩は、すぐさま街へ繰り出したいだろうと声をかける。


「服、乾かしましょうか?」

「いえ今日はいいです」

「遠慮はいいんですよ。だって町へ繰り出さないんですか?」


 アウグストはほろ苦く微笑んだ。


「考えてみて下さい。明日には王都に入れるんですよ? 目の前にご馳走があるのに犬の餌を食う愚か者は居ませんよ」


 酷い言い回しだ。

 そういうイデオムでもあるのだろうか。

 アウグストは続ける。


「しかも値段は相場の五割増し。それに女たちを見たでしょう? 王都では稼げない二流どころが流れて来てる感じでしたよ」


 てか値段のリサーチは既に終えてるのか。

 ずっと一緒に居たと思ったんだけどな。

 仕事が早い。


「オミ君も覚えておいた方が良いですよ。こういう所で早まると病気をもらったりして後悔するんです」

「なるほど」

「何を馬鹿なことを言っている!」


 ロレンツォがアウグストの頭を濡れた靴下で叩いた。


「そんなくだらない事を講釈する暇があったら剣の手入れでもしておけ!」

「はい! 申し訳ありません!」


 見事な突っ込みに思わず笑ってしまった。


「オミ殿、部下の失礼をお許しください」

「いえいえ全然。勉強になりました」


 ちなみに俺たちは全員パンツ一丁である。

 基本、旅の間は二着の服を洗濯しながらローテさせているが、この数日は洗濯する場所が無かったので両方が汚れていたのだ。


 パンツは予備にゆとりがあるので大丈夫だ。


 ブーツもバルコニーに出して風を当てている。

 野営という名の野宿の時は、一応ブーツは履いたままなのでこういう機会にしっかり乾燥させておきたい。

 もちろん普段から魔術で乾かしてはいるが、こういうのは気持ちの問題である。


 王子はというと床に寝っ転がり足だけをベランダに出している。

 なんか分かる。

 足だけ温かくって他が涼しいのって気持ちいいよね。


 もう夏がすぐそこまで来ている。


 そういえは明日王都入りって事だけど。

 今日の日付は?


「どなたか日付はご存知ですか?」

「今日は六月の三十日です。水曜日ですな」

「じゃあ旅は予定通り進んだという事ですね」


 アカデミーの受験は七月の十五日と聞いている。

 馬で来れば二週間の猶予ができると言っていた通りのスケジュールになっている。

 優秀だ。


 ちなみに関係ないが記しておくと、この世界の暦は偶数月は三十日まで、奇数月は三十一日までと統一してある。

 つまり二月も三十日まで。

 そして例外的に年末の十二月だけ二十九日までだ。

 つまり大晦日は二十九日だ。

 どうだ、気持ち悪いか?!


 しかし分かりやすくこうしてくれた誰だか知らぬ転生者には感謝を述べたい。

 俺としては以前から、二月だけ日数が理不尽に少ないのが許せなかったのだ。

 

「明日から試験が始まりますからちょうど良かったですな」

「え、試験は十五日なのでは?」

「一般枠は、ですね。お二人がたは明日からゆっくり受けれますよ」

「そうなんですか?」

「ええ。オミ殿も陞爵されましたから貴族扱いですよ」

「あれ、ミカエルさんに聞いてたのと違いますけど、、、?」


 ロレンツォは服を干し終えてベッドに腰掛けた。

 もう四十に差し掛かっていると思うのだが腹の肉が弛んでないのが尊敬に値する。


「王族や貴族を平民と一緒に試験する訳にも行きますまい。通常、王族がアカデミーに入学する際にはお付きが何人か一緒に入学しますからお付きに合わせるんですよ」


 あー、確かに悪役令嬢ものとかの敵のお嬢様って身の回りの世話をするお付きが学園内に居るイメージがあるな。


「そうだったのですね。しかし男爵や準男爵は平民なのでは、、、?」

「確かに男爵は平民ですしご子息は一般扱いになりますが、本人が爵位持ちでしたら問題ないです」


 なるほどね。

 伯爵家とか公爵家の子供は一般ではないと。


「では試験内容は?」

「それは一般と変わりませんよ。読み書き計算、歴史などの一般教養。後は剣術や馬術、得意なものがあれば槍でも体術でも。それと魔術ですね」


 それは聞いてたのと一緒か。


「貴族でしたら七月いっぱいまで受験が可能です」

「随分優遇されているんですね」

「お付きが合格しないと入学しない家も多いですから」


 そうか。

 お付きが居ないせいで酷い扱いを受ける吃音症の魔女の話も読んだことがあるぞ。


 ここで語る必要もないことだが、俺は女性主人公の作品が嫌いじゃないのである。

 なにしろ男臭さが少なくてよろしい。


 しかしあえて言わせてもらえるならば、女性作家が描く野郎どもは解像度が低い事が多くそこだけやや残念だ。

 ヒロインとくっつく王子はやたら優秀でヒロインに優しく、そうでない男はただのドベなのだ。


 よく女は男を馬鹿だと揶揄するが、俺に言わせれば女も男と同じくらい馬鹿だ。


 そこには方向性の違いしかないのだ。


 そもそもラノベというのは己の欲望を世界に向けて垂れ流すという愚かなジャンルなのだから愚かで当然なのである。


 話が逸れた。

 それはそうと、試験だ。


「しかし一般枠は一日だけとは間口が狭いですね」

「以前は才能を広く募集するという意義から、長く試験期間を取ってたのですが、期間中何度も受験する者が絶えなくて今の形になったようですよ」

「何度も?」

「ええ。平民の名前など有って無いようなものですからね」


 そっか、身分証とかもないもんな。

 別の試験官なら合格にしてくれるかも、みたいな感じで数打ちゃ当たる方式を採るのが横行したのか。

 みんな必死だろうからな。


「明日はひとまず王都に入りまして、南東地区に常宿がありますからそこまで移動しましょう」

「そっか、広いから西門から東側に行くだけで一日掛かりなんですね」

「ええ、試験場も東門近くですからその方が何かと便利です」


 マシュトマ港にも近いもんな。

 セイレーン号が期間中に寄港すると良いのだけど。

 長官は乗ってないだろうけど、できればキコやロッコたちに会っておきたい。

 村の様子も聞きたいしな。


 俺のフィアンセのことも、、、


 叱られて剣の手入れをしていたアウグストが輝かせた目をこちらに向けた。


「東門近くは、長旅に疲れた船乗りたちを癒す天使たちの町とも呼ばれていてね、、、」

「お主は黙っておれ!」

「は!」


 旅ももうひと月くらい続いているだけあって、アウグストも随分と我を出すようになったよな。

 旅の最初の頃は割と存在感が薄かったんだけども。

 まあ良い奴であることは間違いない。

 お気楽な性格なのも旅には向いてるよな。


 床に目を落とせば王子が裸で寝息を立て始めていた。


 王子も最初に会った頃と比べると随分と引き締まった感じがする。

 身体全体を包む子供っぽい脂の乗りがなくなり筋肉の形が見えるようになってきていた。


 俺もそうなってると良いんだけどな。

 腹肉を摘み腹筋に力を込めてみるが、六パックとかにはなっていなかったよ。


 やっぱもっと筋トレしなくちゃダメかな?


先日は一日で四万アクセスもいただきまして

(普段は数百から多くて二千程度)

大いに驚いております

何かオススメとかに乗るアルゴリズムとかあるんでしょうか?

数字に一喜一憂しても仕方ないので淡々と投稿を続けますので今後ともよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
娼婦だける性格してたら前世で女性追いかけすぎて鼻つまみものになっていないんだ……w
解像度なんてのは低いほうが良いのです メガネ外してたらみんな美人に見えるだろ(極論
総合ランキング100位内に入ったからでは。
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