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 この世界に来てからあまり見かけない赤茶の石材が特徴的な街並みを抜けて歩いていく。

 スラムは抜けたがやはり露店が多く活気がある。


 売っているものは大体が古道具っぽい何か。

 あるいはアクセサリー。

 謎の石だけを売っている店もある。


 今までアーメリアでは露店と言えば農作物関係が多かったのでそこは大きな違いを感じる。

 サナのバザールに感覚的には近い。


「ダンジョンで出土したガラクタを売っているんだ」


 興味深く見ていると総髪パーティのメンバーが教えてくれた。


「でも稀に、使い道の分からねえ謎の金属片とかに訳が分からねえ高値が付いて売れたりするから夢があんのよ」

「エルフの残した価値のある何かだったりするんですね」

「そうらしい。使い道が分かった途端に値段が何十倍に高騰したりな」

「ははあ」

「吸魔石なんかも昔はゴミ同然に捨てられてたらしいぜ。見つけても誰も拾わなかったんだと」

「あ、吸魔石はディーヌベルクの特産でしたか」

「ディーヌベルクっていうかダンジョンの特産だわな」


 そうだったのか。

 いつか石屋をやるなら自分で拾えばボロ儲けできるかも知れない。

 俺は身を乗り出した。


「吸魔石は素人でもダンジョンで集められるものですかね?」

「いやあ、最近はもう取り尽くされて値段も上がってきてる。まあまだデカい鉱脈が隠れてるかも知れねえけどな」

「鉱脈?」

「俺も聞いた話だけどよ、前は部屋中ぎっしり魔石の詰まってる部屋とか発見されてたんだってよ」

「金庫的な部屋ですかね」

「ゴミ捨て場だろ。魔力を吸い出し切ったカスを溜めてたんじゃねえか?」

「ああ、なるほど」


 ゴミ部屋か。

 そう聞くとなんか夢がないな。


「実は僕、吸魔石を育てるのが趣味なんですが相場ってどれくらいなんです?」

「懐かしい趣味してんな。大粒で色が出てれば銀の値が付くが、小粒で透明なだけだと大銅貨になるかどうか、、、」

「あ、いや売る方じゃなくて仕入れの方です」

「ああ、もっと欲しいのか。そうさな、大体は小銅貨一枚で真っ黒のが二〜三粒って感じだな。薄くでも色が出てれば全然変わってくる」


 なるほど。

 考えることはみんな同じか。

 いやしかし百円で二〜三粒は夢があるな。


「昔は吸魔石を育てるのが流行ってたんですか?」

「そうそう。革紐で結んでネックレスにしたりしてな。でも一生掛かって魔石まで持っていけるかどうかって話でよ。色が出てれば子や孫に引き継いで育てる価値があるけども、色が出なきゃ意味ないわな」


 そうか。

 一生掛かって数千円だったら悲しくなるか。


 てか、俺の場合小さければ数週間。

 大きめでも数ヶ月で魔石になるから魔力量が本当に多いんだな。


 一生っていうと、この世界は寿命が五十歳って話だったから十歳からぶら下げたら四十年か。

 十二ヶ月を四十年で四百八十ヶ月。


 で、俺の場合小粒がひと月だから、、、よんひゃくはちじゅう倍?


 俺の魔力、普通の人とそんなに違うの?

 え、怖い!

 そんなの超人じゃん!


 てか、魔力が余ると身体の中で魔石になって病気になるとか言ってなかったっけ?


 いよいよ異世界無双な感じになって喜ぶところかも知れないけど逆に不安になって来た、、、


 俺の身体、大丈夫?

 もう胸の中が魔石だらけで心臓が止まったり息が吸えなくなったりするかも!

 胸の痛みの原因も実は打撲のせいじゃなくて魔石の所為かも、、、。

 ヤバい、死ぬ!


「ちょっと先にギルドに寄らせてくれ。直ぐそこなんだ」


 総髪の提案で冒険者ギルドに寄ることになった。


「あああの、ギルドで魔石の買い取りや吸魔石の販売はありますか?」


 俺はさっきのメンバーに訊く。


「あるけど、すまねえな。ギルドの取引は冒険者限定なんだよ」

「じゃじゃじゃあ、こここれを僕の代わりにお願いできませんか?」


 俺はポケットから魔石になった石を取り出して渡した。


「おいおいおい。こんな上物は石屋にもってけ。この辺の色無しなら何処で売っても変わらねえけどもよ」

「じゃあそいつらをお願いします!」

「なんなんだよ、、、」


 総髪に続いてメンバー達もギルドに入って行く。

 ロレンツォが振り返る。


「我々もちょっと見学させてもらいますか?」

「そうだな、覗いてみたいな」


 ロレンツォと王子のそんなやりとりがあって俺たちも冒険者ギルドに足を踏み入れた。


 冒険者ギルドといえば、荒くれ者たちが呑んだくれ、受付カウンターには巨乳の美女が、、、


 うーん、残念。


 広いロビーがあって奥には受付カウンター。

 ロビーの掲示板には依頼の紙が貼ってあるのはイメージ通り。


 飲食物の提供はなし。

 騒ぐ荒くれ者もなし。

 受付カウンターに立っているのは中年の男女。


「マスター、こっちは魔石の買い取りを頼む」


 ギルドマスターは頬に傷のある筋骨隆々の歴戦の元冒険者、、、ではなくて背中の丸まった小柄な初老の男性だった。


 だよね。

 読み書き計算が必要だもの。

 国軍の退役軍人の職場だよね。


「はいはい。色なしの小粒が、ひいふうみい、、、」

「六つだ」

「はい。では現在の買い取り価格は一粒銅貨八枚だから、、、ええと大銅貨四枚と銅貨八枚だね。それで良いかい?」


 良いかと尋ねるように振り向かれたので慌てて頷き返す。


「それで幾つか吸魔石を仕入れてえ」

「はいはい。今ある在庫はこれだけだね」


 カウンターに箱が置かれ、手招きされたので寄っていく。

 いわゆる引き出しサイズの箱の中に大小様々な黒い石が入っていた。


「どういうのが良い?」

「なるべく大きめで、できれば色が出てるのが」


 ギルドマスターが口を挟む。


「坊ちゃん、色が出てるのは高いよ?」

「さっきの買い取りの値段で収まれば大丈夫です」


 マスターが説明を求めるような顔を総髪パーティの男に向ける。


「ポリオリから王都に向かうんだと。アカデミーに入学予定のパーティだよ」


 マスターは納得したように頷いた。

 ポリオリは魔石の産地として有名だからだろう。


「ご希望に添うのはこれ、これ、これ、、、」


 箱の中にひとつ気になるのがあった。

 真っ黒ではなくて白い筋が入っている。


「その筋入りはどうなんです?」

「斑入りは魔力の通りが悪くて使い勝手がね。宝飾品としても二級品だね」

「面白そうなんで入れてください」

「これも色が出てて斑入りだよ」

「じゃあそれも」


 ギルドマスターは並べた石にそれらを加えてひとつは箱に戻した。


「こんな感じだね、これでどうだい?」

「ありがとうございます」

「おいマスター、これで大四小八か?」

「いや、これで半分の大二小四だね。アカデミーに入るのに持ちきれない数があっても困るんじゃないかい?」

「それもそうです」

「同じ数の六だから収まりが良いだろう?」

「ありがとうございます」


 俺はギルドマスターに頭を下げた。


「ふん、ガキには随分と優しいじゃねえか」

「何年かしたらワシの部下になるかも知れんだろが、、、坊ちゃん。ディーヌベルクにも良識のある人間はおる。任地でこの国が提案されても断るなよ?」


 なるほど。

 軍に入れば任期中しろ退役後にしろディーヌベルクが仕事場になる可能性があるのか。


 やりとりを聞いていた総髪が笑った。


「マスター、青田買いか?」

「そうさ。坊ちゃん、他の冒険者ギルドに行った事は?」

「ないです」

「そうだろう、言っておくがここは当たりだよ? 南門から入国しただろうから驚いたかも知れんが他の冒険者街はそりゃあもう酷いもんだからな」


 俺は頷いた。


「そっちの坊ちゃんもな」


 マスターは王子にも声を掛けた。

 王子は黙ったまま頷いた。


 アウグストも頷いてたけど、お前は多分違うぞ?


いつもお読みいただきありがとうございます!

誤字報告ありがとうございました!

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