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 文書館を辞したあと、俺たちは王子の部屋に居た。

 思ったよりも早く会議が終わったので晩飯まで時間が余ったからだ。


「オミ。何か今のうちに聞いておきたい事はあるか?」

「うーん、そう問われると今のところ思い付きませんね。でも、ありがとうございます」 

「うむ」


 そうだよな。

 この世界の常識とか今後の予定とか聞いといた方が良い事はちゃんと尋ねて教えてもらっておいた方が良いよな。

 思いついたらちゃんと書き出しておこう。


「では暇つぶしに何か問題を出せ」

「問題ですか、、、では頭の体操にこんなのはどうでしょう」


 俺はゴミ箱の書き損じの紙を折って端を切り取った。


「こうすると紙を正方形に出来るのは先日やった通りです。では、この正方形を正確に三等分にする方法を考えてみてください」

「ほう」

「物差しで測ったり、折って少しづつ合わせたりする事は無しとします」

「折るのは良いのか?」

「むしろ折り目でその目印になる点を探し出してください」

「ふむ」


 王子は斜めに十字に折りじっと眺めて、今度は縦横に十字に折りじっと眺めた。

 腕を組み目を閉じる。


 考えてる考えてる、、、


 俺は知っておきたい事を書き出しておこうと、さっき切り取った紙にペンを借りて書き出していく。


 王都への移動について

 その人員と移動中の食事など

 アカデミーの入試試験の教科数と過去問

 

 さっきは思い付かなかったが色々あるな。

 後は何があるかな、、、?


 あ、さっき貰ったワッペンの使い方。

 これ大事。


 あとは、、、


「オミは何を書き出しておるのだ?」

「王子に聞きたいこと一覧です」

「なんだ、あるのではないか」

「紙を前に考えると出てきますね」

「どれどれ、、、王都への移動? ああそうだ。お主にも一応確認しておいた方が良いな。馬と馬車どちらか良い?」


 ええっと、それは、、、?


「普通は馬車だ。しかし我は馬車が苦手でな。ノロいし、揺れて気分が悪くなる」

「分かります」

「しかし雨が降るとなると馬車の方が濡れる事がない。風に晒されることもない」


 ああ、そういうことか。

 どっちが良いんだろうな?


「王都まで五週間でしたっけ?」

「馬車でゆっくり行くとな」

「それって速歩ですか?」

「並足だ。速歩で一日中揺さぶられてみろ、発狂するぞ? 速歩で耐えられるのは一時間程度だ」


 確かに想像がつく。

 馬車は辛そうだ。


「お、人員と食事な。それだが馬車なら色々運べるが、馬だと干し肉と堅パンだ。もちろん宿場もあるから全てではないがな。宿場がない所での野営も馬車があった方が快適ではある。天幕も悪くはないのだが何しろ雨に弱い」


 そうだよな。

 防水のナイロンとか無いもんな。

 こないだ天幕は幾つか見たけど毛布みたいな生地か帆布のやつのどちらかだったもんな。

 雨が降ったら寝床がグッショリだよな。


「人員だが、我とオミなら騎兵が二人だろうな。馬車なら御者がプラスされる」


 ふーむ、どっちが良いんだろうか?


「長官はどうされたかご存知ですか?」

「姉君はもちろん馬車だ。女を馬車無しで旅させる訳がないだろう?」

「そっか」

「ただ、移動中は馬車には乗らず、馬に乗って乗馬の練習をしていたそうだ。姉君は馬に乗れなかったからな」


 あれか、幼い頃から坑道に押し込められてたから乗馬の稽古どころじゃなかったのか。

 それにポリオリ全体が酷く貧しかったって話だったから馬も買えなかったのかも知れない。


「そこで相談なのだが、馬で行かんか? 雨が降りそうなら宿場で停滞すればさほど辛くはないと思うのだ。それに馬なら着くのも早い。上手く進めば三週間で着く。早く着けば王都を観光できるぞ?」

「この時期って雨はどれくらい降るんです?」

「多くはない。しかし降らないとも言えん」

「では王子にお任せします」

「よし。では馬で決まりだ。、、、後はなんだ? アカデミーの試験か」


 王子は背もたれにもたれかかり手を頭の後ろで組んだ。


「心配するな。お主なら確実に受かる」

「なんか、何度も受けてやっと合格するみたいな話を聞いてたんですけど違うんですか?」

「試験は大まかに言って三つだ。ひとつ目は読み書き。これは必須だ。次に魔術。これは規定の規模のウォーターボールとファイアーボールが打てれば大丈夫だ。で、最後は体力。剣術や乗馬が出来なくとも体力さえ有れば問題ない」


 ええ?

 じゃあなんで教師を付けてこんな長時間勉強しなきゃいけなかったの?


「これが最低ランクだ。騎兵を目指すなら乗馬技術が問われるし、魔術兵を目指すなら魔力総量や魔力コントロールの技術が問われるし、士官や文官を目指すなら歴史や一般教養を問われる」

「そういうクラス分けがあるんですね」

「そりゃそうだろ。初心者と経験者を一緒に授業はできんだろ」


 それもそうか。

 なんとなく公立高校と自衛隊を混ぜたみたいな、みんな平等に扱われるイメージをしてたんだけど、それだと流石に無理があるか。

 生まれてからずっとしごかれて学んできた貴族と、物心ついてから数年間だけギルドの塾で学んだだけの平民とではちょっとレベルが違いすぎるかもな。

 入学が十三歳から十八歳とか言ってたっけ?

 年齢もバラバラだもんな。


 あれ?

 入試資格は十三歳から?


「王子、そういえば僕の歳はまだ十二歳なんですけど?」

「問題ない。父からの推薦状に十三歳と書いてあれば疑われる事はない。少し成長が遅いと思われるだけだ」


 なるほど、王族パワーか。

 疑われてギルドに問い合わせれられたらバレるかも知れないが、メールどころか電話もないこの世界でそんなコストは掛けないだろう。


 年齢詐称か、、、

 いつかバレて叩かれたりするのだろうか?

 アイドルみたいに十とかサバ読まなければ誤差みたいなもんか。


 よし、俺は今日から十三歳だ。


毎度ありがとうございます!

応援いただけた方に素敵な出会いがありますように!

(異性とのとは言っていない)

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