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注目度カテゴリでランキング58位入りを果たしました!
先日276位に入った時は異世界転生転移ファンタジーのカテゴリだったので別の尺度のようです
何にせよ皆様に読んでいただけることが一番大切ですので今まで通りコツコツと投稿を続けますのでこれからもよろしくお願いします!
俺は謁見の間で両膝をついて項垂れていた。
ウルズラ様の説教は長かった。
もう小一時間は経っているのではないだろうか。
ひざまづいた状態をキープするのがこんなに辛いとは知らなかった。
身体が前後にグラグラと揺れてしまう。
「貴方、聞いてらっしゃるの?」
「はい」
「イリスの結婚式とは、それは厳かなものです。新郎新婦はお互いに白い服を着て臨みます。この意味がわかって?」
「、、、白の衣装は純潔を表しているのかと、、、」
「違います! 純潔の証です、証! 貴方は神の御前で虚偽の誓いを立てることを良しとするのですか?」
俺はイリス教徒じゃねえったら、、、
「貴方はシュトレニア侯国のキアラ王女とのやりとりも見てらっしゃるのでしょう? キアラ王女のお気持ちをお考えになって?」
「その、すみませんでした、、、」
「謝って済むなら軍隊は要りません! これは国交問題なのですよ?」
パワーワードが出たな。
てか、ならどうしろと?
時間を巻き戻すしかねえじゃねえか?
「なんとかおっしゃいなさいな!」
「私は長官に命令されて仕方なく、、、」
「何日も前からワインを準備してドワーフと打ち合わせまでして、仕方なくですって? そんな命令をされた時点で私に相談でも何でもできたでしょう? 貴方には頭がないのですか? 私の子であるリサと私のどちらが上かわかりますでしょう?」
いや、いち地方の領主の妻と国軍の大佐レベルと比べたら国軍のが上じゃねえかな。
言ったら長引きそうだから言わないけど。
おい、領主。
隣であくびを噛み殺してるくらいならもう説教をやめさせろよ。
軽い二日酔いで朝から乗馬して飯も食わずにもう午後遅いんだよ。
腹も減ったし眠いんだよ。
いい加減、嫌になってきたのでブチギレて出て行こうかと思い始めたその時、謁見の間の後方の扉から執事が顔を出した。
「クラウディオ様がお戻りになりました」
王妃は勢いよく立ち上がった。
「王子を私の部屋へ!」
そう命令すると王妃は俺を振り返る事なくプリプリと部屋を出て行った。
謁見の間には領主氏と俺が残された。
領主氏は奥さんと一緒に行かなくていいのだろうか?
「オミクロン、妻が済まないな」
「え、いえ、、、」
「執務室に菓子が用意してある。食っていけ」
立ち上がった領主に付いて玉座の後ろの執務室に入るとソファの前のローテーブルにガラスのボウルが置いてあった。
「このような物を知っているか? ヨーグルトだ」
「おお、、、」
ヨーグルトに刻んだベリー類が山盛りに乗せられている。
「いただきます、、、!」
手を合わせてスプーンでヨーグルトを掬い、口に運べば爽やかな酸味とこってりとした食感が俺を溶けさせる。
この世界で甘味は贅沢品だ。
このヨーグルトも甘い味付けがしてある訳ではないが流石、国のトップが口にするものだけあってベリー類も選りすぐられているのが分かる。
甘いもん。
領主氏もひと口ヨーグルトを口にするとスプーンを机に置いた。
「礼を言う。オミクロン」
慌てて俺もスプーンを置く。
「いえいえ、とんでもございません」
何のお礼だろうか?
「それとなくドワーフから打診は受けていたのだ」
「えっと、それは、、、?」
「通いのだ。飢饉が去り、リサが生まれ育ち我々は子宝に恵まれた。その間、人口が増えずにいたのはドワーフたちも同じだ」
ああ『王室は落ち着いたみたいだからぼちぼちこっちにも』って事か。
「ウルズラには辛い思いをさせた。お主も聞いていると思うが、リサの前に育たぬ子が何人かおってな」
そういえばルカに聞いたな。
長官は三歳を越えた初めての子という話だった。
「子を失う悲しみというのは親にとってつらいものだ。特に腹を痛めて産んだ母親にとっては」
そっか、お腹の中でずっと育ててきてるんだもんな。
「ようやく育ったリサも言葉が遅く、目に障害があるのではと言われた時には私だって目の前が真っ暗になって感じたよ」
うーん、話が重い。
「それら全てをウルズラは自分の所為なのではと思い込んでしまってな。かと言って第二夫人だ妾腹だと言うほど我が国の財政は余裕が無かった」
その悲しみと重圧を乗り越えて王子たちを産んだのか。
そう聞くとウルズラさん尊敬に値するな。
「そんなこともあって、あいつは過保護な母親になってしまった。ドワーフへの通いもどうしても許せないと言ってな。しかしこのままドワーフが減り続けて良い筈もない」
え、誰か適当な人を通わせるのは駄目なの?
「そして気づけば国民の殆どがイリス教徒になっていてな。知っておろうがイリス教は人族優生主義とも言える民族主義宗教だ。異人種との混血なぞあってはならないというような空気が平民にも行き渡っておって自然な交流はもう望めなくなっておったのだ」
なるほど、そりゃ頭を抱えるな。
そこへ来て今度の外泊だったのか。
しかし、それはそれで良いとして。
王子ももっと早く帰ってきてくれれば俺がこんな長々と説教を喰らわずに済んだのではないだろうか?
昼過ぎまでイチャコラか?
おおん?
「それで、、、こんな事を聞くのはアレなのだが、、、息子の相手をしたのはどんな子だったかお主は見たか?」
「いえ、綺麗どころに囲まれてお酌されてるのは見たのですが、どの娘の宿坊に連れて行かれたかまでは存じません」
「そうか」
「でも、どの娘も美しい褐色の肌を持ち、小柄だけども豊かな感じで羨ましい事この上なかったですね」
「そうか」
領主氏はなんだか嬉しそうだな。
「王子は、その、胸元や腰が豊かな女性がタイプとおっしゃってましたので好みにはピッタリかと」
「そうか、あやつそうだったのか、、、」
俺はいつも難しい顔をした領主氏しか見たことがなかったけどこんな風に笑うんだな。
俺は少し気が楽になったのでスプーンを取り上げ、フルーツヨーグルトを平らげた。
すると背後の謁見の間のほうが騒がしくなってきた。
「ですから奥様のお部屋の方にと、、、!」
「ドワーフから王への献上品があるのだからこちらを優先するのが筋であろう。急ぎの用があるのなら母君がこちらに来れば良いのだ!」
「そうは言いましても、、、」
領主氏が立ち上がった。
「息子はこちらに来たようだな」
領主氏は笑みが噛み殺しきれてない。
そんな顔をウルズラさんに見られたら怒られるよ?
「どうした?」
「おお、父上。昨夜は外泊しまして、ただいま戻りました。こちらドワーフの長老からの献上品と書簡を預かって参りました」
大ぶりな木の箱を兵士二人が運んできた。
手紙は王子が直接領主氏に渡す。
「ふむ、開けて見せてくれ」
領主氏は玉座に座って手紙の蝋を外して広げた。
兵士は箱の蓋をバールでこじ開け、運ばれて来たワゴンに中身を出した。
俺は何処に居ればいいのか執務室から顔を出してキョロキョロしていたら王子が俺を見つけて手招きしてくれた。
王子の隣で王子と同じように祭壇の下で片膝を付いて領主の返事を待つ。
ワゴンに載せられたのは見事な細工が施してあるガラスの水差しとそれに併せて作られたグラスが数脚。
所々に金があしらわれており、気合の入った技ものであることが素人目にも分かる。
手紙は数枚あり、読むのに時間が掛かった。
そうこうしているとウルズラさんが戻ってきた。
王子を見るなり金切り声を上げようとする王妃に領主氏はドワーフからの手紙を渡した。
その手紙を読んで黙り込む王妃。
読み終わる頃を見計らって領主氏は口を開いた。
「ウルズラよ、我々にとってドワーフ達も大切な国民なのだ」
とだけ言った。
王妃は王子を見て、献上品を見て、俺を睨んで、何も言わずに踵を返して謁見の間を去った。
俺たちは扉が完全に閉まるのを見届けてからホッと胸を撫で下ろした。
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