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翌朝、長官に起こされて目を覚ました。
昨夜は結局ドワーフのおじちゃんおばちゃんたちと雑魚寝をして、、、
あれ?
気付けば、俺はドワーフのおばちゃんに腕枕してもらい抱きしめられて寝ていた。
仁王立ちして見下ろす長官を見ればやはりニヤニヤしている。
クソ、面白がってるな。
「私はカイエンに戻らねばならない。バルベリーニまで送ってくれ」
聞けば、バルベリーニに自分の馬が預けてあるとの事。
俺の仕事は長官とバルベリーニまで馬で同行して長官の乗っていった馬をポリオリに連れて帰るというものだ。
普段は騎兵か馬子の仕事らしい。
お安いご用で、と俺はドワーフのおばちゃんの腕をそっと外して起き上がった。
「今何時です?」
「ちょうど夜が明けた頃だ」
じゃあ五時半くらいだろうか?
ここは空が見えないし鶏の声も聞こえないから時計がないと時間が分からない。
立ち上がって寝ているだろう王子を目で探すが見当たらない。
その辺に寝ていた筈なのに。
「あれ、王子は?」
「若い娘の宿坊だろう」
「え」
「早くに寝ていたからな、早めに酔いも覚めて夜中に起きたのだろう」
え、それって王子とドワーフ女子が二人だけで抜け出したってこと?
いいの?
「ほら、早く行くぞ」
「は、はい、、、」
俺たちは寝ているドワーフを踏まないように跨ぎながら部屋を出た。
俺は悶々としている。
王子は確か一個上だから十三歳。
もう経験しちゃうの?
早くない?
しかも異人種と?
ハレンチじゃない?
うーん、、、でもなんか王族っていうと早くからメイドとかに手を出して済ませてるイメージもあるしなあ。
もう既に風呂のメイドさんとかがそっちもアレな感じかもしれないよな。
あのメイドさんも相当美人だったし大変けしからんな。
そんな事を考えていたら、いつの間にか坑道の外に出ていた。
崖でVの字に切り取られた空には朝焼けで赤く染められた雲が層を作っており、振り返ればそびえ立つポリオリ城がピンク色に染まっていた。
何か恣意的な眺めだな。
「良い朝だな、早く出発したい。厩舎まで走るぞ」
走り出した長官を慌てて追いかける。
長官は随分と飲んでいたように思うけど酒が残ってないのだろうか?
俺はというとまだ若干酔いが残っている感じがある。
走りながらも魔術で口の中に水を作り、軽くゆすぐようにしてから飲み込む。
これだけで大分すっきりした。
城の脇を抜けて馬場に辿り着くと既に馬子さんたちは馬を馬場に出していた。
「バルベリーニに帰る。馬を二頭貸してくれ。オミが連れて戻る」
「はい、ただいま」
馬子さんたちがテキパキと鞍の準備をして鞍の後ろには小ぶりな桶を括り付けた。
道中、馬に水を飲ませる用かな。
「さあ、行くぞ。早く早く!」
馬子さんと世間話しをする俺を急かせて俺たちは出発した。
門をくぐる時に長官は門兵に声を掛けた。
「クラウディオはドワーフの所だ。昼前には帰ろう! ではさらばだ!」
速足から駈歩に切り替えて城下町を一気に駆け抜ける。
そして町から出て畑の畦道を駆けていく。
畑では既に農民たちが種蒔きをしていた。
そうか、種蒔きの季節なのか。
何人かが長官に手を振り、長官が振り返す。
広大な畑を抜けてバルベリーニへの道に入り、ようやく長官は駈歩から速足に戻した。
馬は軽く汗ばみ大きく息をしている。
乗っているこちらも同じ状態だ。
俺は額の汗を拭い上げると長官に訊いてみた。
「何故そんなにお急ぎなんですか? 誰かとお約束でも?」
「ハハハ、逃げただけだ。クラウディオを連れ出してドワーフの宴会に参加させたなどと知られたら母君から叱責を喰らうからな」
あ、やっぱりいけない事だったんだ。
そりゃあね、、、
「昔は普通だったのだ。むしろ王の務めであった」
「ドワーフとの宴会が?」
「いや、ドワーフの娘を孕ませるのが」
マジか。
「ポリオリは元々ドワーフの治めるドワーフのための王国だった」
「はい、知ってます。エルフから逃げた人族を労働移民として受け入れてくれたんですよね?」
「そうだ。その時ポリオリは人口減少で苦しんでおった。食事は足りておるのに育たぬ子が増えたのだそうな」
それで労働人口を維持できなくなっていたのか。
それは歴史授業でも習わなかったな。
「血が濃くなり過ぎるとそういう事が起こるらしい。エルフのドームでも同じ事が起きていた」
ああ、新陳代謝の無い閉鎖空間だもんな。
育たなかったっていうか、障害持ちが増えたというのが真相かもしれないな。
「しかし余りに自由に交流が進むと公序良俗の乱れが指摘されるようになった」
そりゃそうだ。
人族の女性は気が気じゃないよね。
「それで人族の代表の者が責任を持ってドワーフの元に通うことにした。ドワーフたちは女系で自由恋愛だから問題にはならなかった。ドワーフたちの人口問題は解決した」
そうだったのか。
「人口問題に目処が付けば外へ出て行こうとする者が増えるのも道理。そこで新素材の鉄がもたらされ鉱脈も発見された。当時のドワーフ王は時代の要望に呼応する形で遷都を決めポリオリを出た」
面白い。
ちゃんとドワーフ視点のポリオリ史をやってもらえば良かったな。失敗した。
「ポリオリに残る事を選んだドワーフは、その時の人族の代表を王に望んだ。多くの士族の父である男を王に据えることはドワーフにとって自然な流れだったのだ。ドワーフが人族を差別しないのはそのような歴史があるからなのだ」
「ははあ、、、そんな歴史が。その辺の話ってポリオリに住んでる人はみんな知ってる事なんですか?」
「まあ、ぼかして語られるが概ねな。ちなみに母君は他所から来た王女だからこの風習が受け入れなくてな」
人族の女性は嫉妬深いからね。
いや、俺が逆の立場だったとしても到底受け入れられないから、人族は男も女も嫉妬深いのだな。
「父君も子らも通いを禁じられてしまったのだ」
「それは法律か何かで?」
長官は失笑した。
「母はああした人なのだ。会ったお主は分かるだろう?」
ああ、気合いと押しの強さでか。
「そんな訳で、オミも戻ったら母上に呼び出されるだろうけど、私に命令されたから仕方なく行ったと言っておけば良い」
え、嫌だ〜
ウルズラ王妃に会うのはもう勘弁願いたい。
何を約束させられるか分からないじゃないか。
今頃、シーツを替えに入ったメイドが王子がいない事に気づいたりして騒ぎになってるのか。
門兵の皆さんも怒られたりしてそう。
俺もこのまま逃げたい。
カイエンまでお供して船で六月までに王都に行けば良くない?
馬泥棒で指名手配されるかな?
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