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寝てしまうドワーフが増えてくると、まだ起きている酒に強い連中だけが集まり酒樽の近くのちゃぶ台に移動して陣取った。
寝てしまっている者は邪魔なので、脚を持って引きずって移動させ部屋を整理する。
こんな雑な扱いでいいのか疑問に思うが、こういうものらしい。
ドワーフにとって、盛り上がっている宴会の音を聞きながら酔って寝てしまうというのは最上の贅沢ということらしく、多少雑に扱われようがむしろそれが良いと感じるのだそうだ。
王子はというと、いつの間に膝枕ではなくドワーフ女子の腕枕で両側からピッタリと寄り添われて寝ていた。
その顔にも背中にもドワーフ女子の豊かな胸が押し付けられている。
酒池肉林とはこういう事か。
スマホを持っていたら確実にカメラに納めていただろうな。
SNS時代じゃない事に感謝して貰わねばならない。
“ポリオリの王子、若いドワーフ女子複数人を侍らせ酒池肉林!”
みたいな見出しでネットニュースを飾ることになったに違いない。
俺は老ドワーフに訊く。
「若い子が王子に群がってますがああいうのは良いんですか?」
「ああ、うん。全くもって構わんよ? 人族から子種をもらっても生まれてくるのはドワーフだし問題ない」
「ええっと、、、王族の継承権とか、、、?」
「若いのは奔放に楽しんでおるから誰の子か証明するのは難しいし、我々は誰の子種かは気にしない。他の子と同じように士族の子として育てるまでじゃ」
そうか、女系ってそういうことか。
それ以上に新しい血が入るから必要な事なのかもな。
偶客婚って言うんだっけ?
「それにしても、お主には全然寄って来なかったな。珍しい」
「と言いますと?」
「普通は人族の客人が来ると、ここぞとばかりに若い女が群がるんだがの」
「え」
「オミちゃんは若い子に不人気なようじゃな」
ガーン。
超ショック。
この世界に来てから割とモテるのではと思っていたのに。
横で俺たちの話を聞いていたおばちゃんはひっくり返って笑いだした。
酷過ぎる。
俺だってコンパクトグラマーなドワーフ女子と酒池肉林したかったのに!
異世界ハーレムチャンスだったのに!
おばちゃんが涙を拭きながら教えてくれた。
「違う違う、オミちゃんがモテないんじゃないよ。アンタが早々に何かの設計図出して長老格連中と商談を始めたから邪魔しなかっただけだよ。お酌しようにもオラヴィがアンタを離さなかったしさ」
そ、そうなの?
俺にも脈ある?
「アンタにその気があるなら日を改めてまたおいでよ。そしたら今度は誰かが宿房に誘ってくれるかも知れないよ?」
おお、そんな事が!
希望の光!
ハーレムチャンス再び!
「はあ、私は少し寂しいよ。あんな可愛かったオミが異人種と女遊びだなんて、、、」
ぽつりとそう言ったのは長官だった。
ハッとして振り返って見るとその顔はニヤニヤしている。
くそ、揶揄われたか。
ちょっと焦ってしまったではないか。
「違いますよ。僕は王子を心配しただけですよ」
「ああそうか。済まなかったな。私の弟への監督不行届きのせいでお主を心配させてしまったか」
長官のニヤニヤが止まらない。
「そ、そうですよ。それに僕には婚約者だって居ますからね」
「おや、オミちゃん。婚約者が居るのかい? じゃあ、そっちを大切にしてやらなきゃ。人族の女は嫉妬深いんで有名だからね。結婚した後になって実はドワーフの娘を孕ませてました、なんてバレたら家庭崩壊だよ」
「そうじゃな。悪さはしないのが家庭内安全保障の肝心要じゃぞ」
ぐぬう、、、
長官とドワーフの共同戦線で俺のハーレムチャンスは封じられてしまった。
俺も何も知らないまま酔っ払って寝てしまっていればドワーフおっぱいに挟まれて寝れたかも知れなかったのに。
変に酒に強いのも考えものだな。
俺は腕に残ったユオマをぐいと飲み干した。
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