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それからは長官が中心になって話し合いが進み、ひとまず試作品を作ることになった。
充分に性能が発揮される物が出来たら試作品を領主に献上して生産許可をもらい、生産に入るという流れだ。
そして意外なことに流通は長官がひと噛みすることになった。
長官のプランはポリオリ発のキャラバンが出ると同時に王都でも売り出すというもの。
予め長官の船で商品を王都まで運んでおいて、幾つか料理屋に先行して売り込み、挽肉料理を流行らせると同時に販売開始すれば肉屋だけでなく王都に住む貴族達もこぞって買うだろうというのだ。
貴族は常に新しい話題に飢えているし、先に貴族に広がればポリオリ産の挽肉器がブランド化するだろうという読みがある。
そうすれば類似品が出回っても貴族は必ずポリオリ産を買い求める。
実際、偶然ではあるが懐中時計がそのような扱いになっているらしい。
なるほどなあ。
しかも船を使えば重さをあまり気にせず長距離を運べるもんな。
私物の船を持つ長官の強みだな。
試作品は俺がまだポリオリに居る六月半ばまでに完成させることに決まった。
そんな全力投球で大丈夫なのだろうか?
もっと時間をかけても良いのに。
それに俺は実際に挽肉器を使ったことなんて無いからちゃんと評価できないぞ。
俺にできるのは試食くらいだ。
と思っていたら長官に促され、ドワーフの女性たちに挽肉を使った料理のアイデアを紹介させられた。
こちらでは細かくした肉の使い道はスープ料理しかないらしい。
まあ、そうだよな。
基本毎日ポトフみたいな感じだもんな。
ドワーフに至っては主食がキノコか酒だしな。
挽肉は丸めて焼けば塊になるし、混ぜながらフライパンで焼けば粒状になるし、何か生地に入れても良いし、逆に何かを入れる事もできるのだ。
安いし美味いし挽肉最高!
ひとまず汎用性が高いのは肉団子だよな。
スープにも入れられるし。
そんな話をしていたらあれよあれよと料理指導まですることになってしまった。
挽肉器はまだ完成していないのにどうするのと尋ねたら手で刻むから大丈夫とのこと。
まあ、挽肉料理が流行るかどうかで売れ行きが決まるからな。
前世では挽肉器が発明されたおかげでハンバーガーが普及したのだっけ?
なんとなく思うに、この世界ではハンバーガーはまだ早い。
産業革命が起きて忙しく働く労働者階級というものが生まれないとファストフードは流行らないのだ。
先ずは肉団子、ハンバーグ、ソーセージだな。
腸詰の類はまだこの世界で見たことがないから後で長官に相談しよう。
許可が出たら馬子さんたちに内臓の扱いについて相談してみるかな。
俺はポケットからメモ帳を出して書き留めた。
鉛筆は無いから代わりに炭である。
なので小さく書けない。
これも早急になんとかしたい。
気付けば、そこここで寝てしまうドワーフが出てきて、王子はどうしたかなと見てみると可愛いドワーフの女子の膝枕で寝ていた。
何人ものドワーフ女子が王子を取り囲み、みんな王子の寝顔をうっとりと眺めている。
なんとまあこの差よ。
俺は同じドワーフでもおじちゃんおばちゃんに囲まれてオミちゃん呼ばわりされているのに。
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