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誤って前回と同じものを投稿してしまいました!
改稿しました!
報告してくださった方ありがとうございました!
肩を落とす夫人を尻目に長官が話を補足した。
「オミには前に話したかもしれんが、王都は異世界人を集めている。その異世界人にも色々あってな、我々よりも遅れた世界の者、同じくらいの技術レベルの者、進んでいる者、理解が及ばぬほど進んでいる者と分けられる」
なるほど。
「オミ、お前はかなり進んだ世界から来ていると言える。王都が求めているのはごく僅かに進んでいる世界の者だが、運良くそうした世界から来た者であっても専門職や技術職に就いていた者でないと大して役には立たん」
となると、やっぱりロンド氏は大当たりだったんだな。
「しかも言葉が通じぬ事が殆どだ。何年も掛けて教育してやっと聴けた話が全く役に立たんというのは担当者全員が経験している。お主は船で我が兵を救うことが出来たのだから大当たりだ」
慰めてくれて長官は優しいな。
「そう言っていただけると助かりますが、でもロンドさんなんか懐中時計でしょ?」
「ああいうのは本当に特別だ。雷に撃たれるよりも稀有なことよ」
宝くじかっつの。
てか、長官に話しかけられてペラペラ軽口をきいてしまったけど夫人の御前だった。
俺は背筋を伸ばして夫人に向き直った。
夫人は気持ちを改めたようで気落ちした感じは消えていた。
「分かりました。ではオミクロン、あなたリサと一緒になりなさいな」
「はい?」
「年上の女房というのも悪いものではありませんよ。歳の差だってたったの十でしょう?」
「僕だって相手が長官なら全然嬉しいですけど、、、」
「なら決まりね!」
夫人は微笑んで手をパンと打った。
「いやいやいや、僕が良くても長官の気持ちというものが、、、」
「リサはあなたとなら結婚してもいいそうよ?」
「えっ?」
長官を見るとうんざりした顔で母親を見ている。
これで頬を赤らめて俯いていたりでもしたのなら可能性がない訳ではないのかも知れないが、これはナシの反応だ。
残念だがホッとした。
いや、ホッとしたけど残念だった。
だって婚約者云々は置いといて、長官は俺がこの世界に来てから一番仲良くなった女性なのだ。
軽口もきけるし知的好奇心も満たしてくれる。
人柄も尊敬できるしルックスも抜群だ。
嫌がったらバチが当たる。
「ほら、そんな顔して。あなただってリサが欲しいんでしょ、オミクロン?」
「いえ、あの、僕にはこの世界に婚約者が居まして、、、」
「聞いてるわよ村娘でしょ? いいじゃない両方娶れば。この際、どちらが先でも良いわ」
そんな冗談を長官と言い合ったことはあったけど、、、
「両方娶ってここで暮らせばいいじゃない。クラウディオだって相談相手が必要なんだし。オミクロンならどんな職に就いても誰も文句は言わないでしょ?」
「しかし長官は旅を続けたいと、、、」
「ウチから調査隊として何処でも好きに行けばいいじゃない! サナだろうが海の果てだろうが好きに目指して良いわ。なんなら新しく造船してあげても良い。ただし必ず孫を産んでくれるのが条件だどね?」
スゲエ厳かな人かと思ったけど、めっちゃ喋るやん。
しかも早口。
「決まりね? ならばオミクロンにもアカデミーを出てもらう必要があるわ。今年、クラウディオと一緒に受験して最速で卒業して帰ってきなさい」
ええ、俺も?
「リサ、あなたアカデミーにそれくらいの都合は付けられるでしょ?」
しかも裏口&口利き?
「大袈裟な婚儀は行わなくても良いわ。アタシが赤子を側に置いて大事に育てていればみんな勝手に推察するでしょう」
あ、孫を取り上げて自分で世話するつもりなのか。
なんでそんなに長官の子に固執するのだろうか?
「あの、、、ひとつ質問をよろしいでしょうか?」
「いいわよ、何?」
「ウルズラ様は何故、長官のお子さんにそこまで固執されるのですか?」
王子たちが居るのだからあと数年すれば孫なんて抱き放題になるだろうに。
「あなたたち男には分からないでしょうが、娘が産んだ子というのは母親にとって特別なのです。他所から来た女が産んだ子とは訳が違います」
あー、なるほど。
分からんちゃ分からんが俺なりに分かった。
より濃い血の繋がりを確信できるって事だろう。
他国から来た嫁の子だと子育てに口出ししにくいってのもあるだろうし、もしそれが不貞を働いた間男との子供であったなら全く血の繋がりのない赤の他人という事になってしまう。
娘ならアレッシア姫も居るが、彼女は他所へ嫁ぐ事が決まっている存在だ。
だから長官の子なのか。
「分かったかしら? とにかくアタシはリサの子が抱きたいの」
俺は頷いた。
「リサも分かった? オミクロンがアカデミーを卒業して戻ってくるまでに軍の仕事にケリを付けなさいな。その頃にはアナタもう二十五歳を越しますよね? 今でこそ引く手数多と思っているかも知れないけれど、その頃には行き遅れの大年増ですからね? そうなったら貰い手はオミクロンくらいしか残っていないのだから覚悟なさいよ?」
長官はゆっくりと立ち上がった。
そして口を開いた。
「母上、孫を抱かせれば新造船との約束。言質はいただきましたぞ?」
「ええ、いいわよ。なんなら証人を立てて証文を交わしましょうか?」
「そうですね、証文は必要ありませんが父上に確認はさせていただきましょう」
「お好きなように」
夫人はニタリと笑って長官もそれに応えて口角を上げた。
何なの、怖い。
誤投稿すみませんでした!
みなさんのチェックで成り立ってます!
いつもありがとうございます!




