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部屋に戻ると朝食と一緒にA4黒板が置かれメモが残されていた。
朝食が終わり次第クラウディオ王子の部屋に行けとの事。
珍しく朝食は麦のポリッジ(粥)だった。
アレかな、昨日の夜食として用意してくれてたヤツかな。
昨夜は俺はセルヴォワーズでお腹いっぱいで夜食はもらわなかったのだ。
ちなみに俺はたまに出るこの麦のポリッジが苦手だ。
グズグズとしていてムチムチとした食感のも入ってて繊維も口に残る。
塩で味付けはされているし、多分バターとかも入ってて美味しくなるように努力はしてると思うのだがどうにも口に合わない。
実は黒パンも最初はちょっとキツかった。
松の実や砕いたナッツも入っていて重く、そして生地の酸味が強くパンにしてはやけに味が濃いのだ。
スープと一緒にひと口づつ流し込む感じになるが、しかしこれが逆に薄いポトフのようなスープと合わせると滋味を感じて美味いのだ。
これには割と直ぐに慣れた。
しかしポリッジよ。
こいつは熱々にしてみても水で少し薄めてもどうにもならない。
魔術で加熱し続けると水分が飛んで炊いた米のようになるが味が変わるわけではないので美味くないことに変わりがない。
などと文句を言っても仕方ないので冷めたままのポリッジを黙々と胃に流し込むと木の枝で歯を磨き王子の部屋に向かうことにした。
「折角の特別な休みなのに呼び立てて済まなかったな」
「いえいえ、どうせ暇でしたから」
「オーリーズの部屋の見分の許可をもらった。オミも興味があるだろう」
ああ、バルベリーニに亡命したミカエルの部屋か。鑑識さんとかの仕事じゃないの?
頭にも靴にもビニールのカバー付けて手袋もしないと。
あと指紋を取るちっちゃいポンポンね。
アレ大事。
「もうルカやサビーノによる見分は済んでいるのだが、一応な。午後には片付けられてしまうらしい」
なんだ。
プロの仕事の後か。
でも誘ってもらえて嬉しい。
探偵ごっこは誰だって好きだろ?
てか、人ん家を見るのってなんか楽しいよね。
虫眼鏡を用意しておけばよかったな。
オラヴィ親方の息子さんがレンズ工房やってるって話だったもんな。
でもどうせ高くて買えないか。
そんな事を考えながら王子を後を付いて行き、城おじのルカの部屋に来た。
「オーリーズの部屋の鍵を借りに来た」
「はいはいこちらです。昨夜から誰も入っておりません。何か気づいた事があればワシにもお知らせ下さい」
用意してあったのだろう。スムーズに鍵を借りるとミカエルの部屋へ。
鍵はいわゆるザ・鍵といった感じの鍵。
絵本やアニメでしか見ないタイプのヤツ。
鍵を開けて部屋に入ると窓に嵌め戸は付いておらず明るかった。
俺はミカエルの部屋も、城おじのルカ氏や第一王子の教師のテレジオ氏の執務室のような感じだろうと想像していたのだがそれは間違いだった。
大きな違い。
それはベッドの存在。
ミカエルはここで生活してたのか。
部屋に入ってすぐ中央に机。
右奥にベッド。
左奥には衝立が立っており何かを目隠ししている。
まあトイレだろう。
城で働く人々の中でも、城内で暮らす人も居れば、敷地内の共住棟に部屋を持っている人、宰相付きの文官のウベルティ氏のように町の居住棟に部屋がある人、また引退した参謀のマッテオ氏のように町に家を持って家族と暮らしている人など色々なタイプが居る。
俺はミカエル氏の初老と言っても差し支えなさそうな見た目のせいで住み込みだとは思っていなかった。
でもアレか、王都から呼ばれて来てるって話しだったから単身赴任なのかもな。
「ミカエルさんて結婚とかってしてないんですか?」
「奴は独り身だ。しかし王都から連れて来た書生がいた筈だ」
「その書生さんは?」
「もちろん連れて逃げたのだろう。ここで一緒に暮らしていた筈だ」
「ええっと、その書生さんて男性ですよね?」
「うむ。ここに連れてこられた時はまだ十代だった筈だ」
ああ、、、そういう感じ?
俺は一つしかないベッド見て何かを察した。
でもまあ珍しくはないんだよね?
時代的にも。
いや、今も昔も人ってあまり変化がないんだよな、きっと。
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