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 王子はアレッシア姫に俺の説明を追加した。


「コイツの使う魔術は本当に珍しいものでな。おい、オミ。例の氷の魔術を見せてやってくれ」


 氷の中空キューブのことだろうか?

 年頃の女の子にただの正方形ではつまらないだろう。

 俺は口の中でブツブツと呟くと、精霊にお願いして氷で一茎のスズランの花を作りアレッシア姫に手渡した。


「僕の里に咲くスズランという花です」

「まあ、蘭の花ですの? 小さくて珍しい、、、あ!」


 か細い氷の花はすぐに茎の部分が溶けてアレッシア姫の手から落ちてしまった。


「オミよ、女性に花を渡すのは求婚の時と相場が決まっている」

「え、それは失礼しました!」


 王子から解説が入って俺は慌てて頭を下げた。


「わたくしお受けする事はできませんが、嬉しく思いましたわ。こんなの初めてですもの」


 姫は優しくそう返してくれたが俺は頭が上げられない。


「スズランというのはどういうお花ですの?」


 俺はしどろもどろで返事をする。


「スズランは一見可憐なのですが実は根に毒がありまして、、、」


 言いかけて失神しそうになった。

 可憐な少女に渡す花じゃない。

 なんかそういうあてこすりみたいじゃないか!


「しかし、、、用法を間違わなければ薬として使うことのできる有効な植物、、、だった筈、、、です、、、」


 俺は冷や汗ダラダラである。

 王子か長官が突っ込んでくれないかな。

 そうすれば笑いになるかも、、、ならねえか、、、


「まあ、毒ですの、、、」


 やっぱり不愉快だったか!

 しっかり謝罪せねばと俺は膝を付いた。


「他意はないのです。失礼しました!」

「あらあら、まあまあ、、、」


 俺は顔を上げることができない。

 王族を毒呼ばわりしたら絶対にヤバい。

 この場で切られることもありそう。

 失敗した〜!


 すると頭上で剣を抜く音が聞こえた。

 やっぱ首を落とされるか、、、


 そして流石の長官も庇ってはくれないか。

 王子も一言も喋らないし。


 こんな簡単な間違いで人って死ぬんだな。

 異世界を舐めてたぜ。

 なんだかんだ今まで順中満帆だったからな。


 痛くないと良いな。

 でも一瞬で終わるか。

 どうせ一度は死んでるんだしな、、、


 俺は固く目を閉じてその時が来るのを待った。


 すると俺の肩に剣先が置かれるのを感じた。


 いよいよか。

 ままよ!

 イータ、迎えに行けなくてごめんよ、、、


 最後に頭をよぎるのはズタ袋を着た婚約者のことだった。

 リンにも求婚まがいなことを言われたが、なんだかんだ村を離れた初期の一番不安だった時に心の支えになったのはイータの存在だったのかも知れない。

 前世からこのかた生まれて初めて告白をして、なんと結婚を了承してくれたのだ。

 俺の全てを肯定してくれた気がしたものだ。

 あの時聞いたファンファーレは調子っぱずれだったけど忘れることはできない。

 俺の人生の絶頂はあの時だったか、、、


「、、、立ちなさい。今日から其方は私の剣。騎士の誓い、しかと受け止めました」


 え、なに?

 耳に届いた言葉の意味が全く理解できない。


「立て、オミ」


 王子にそう言われ、ようやく立ち上がるとアレッシア姫が俺の肩に剣先を置いたまま俺を見つめていた。


「汝、オミクロン。其方は真理を守るか」

「はい、守ります」


 それ以外どう答えろと言うのか。

 俺に選択肢はない。


「其方は教会と孤児と寡婦、祈りかつ働く人々の全てを守るか」

「はい、守ります」

「私、アレッシアに絶対の忠誠を一生持って仕え、命をかけて主人の命にしたがうか」

「従います」


 アレッシアはようやく俺の肩から剣を下ろした。


「もう一度言います。今日から其方は私の剣。騎士の誓い、しかと受け止めました」


 え、なんと返せば良いのだろう。

 俺の返事を待たずアレッシアは語を続けた。


「なれど、私はまだ宮に身を置く身。必要が来たら呼びにやります。その時には何をおいても私を助けなさい。其方を信じます。いいですね?」

「は!」


 俺は改めて頭を下げた。

 なんだなんだ、どうしてこうなった?


誤字報告ありがとうございます!

いよいよストックがなくなり、書いて出しになってきました。

誤字脱字、変な文章など増えると思いますが温かな気持ちで誤字報告及びコメントでの修正依頼などいただければと思います!

今後ともよろしくお願いします!

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隙あらば……w 首に紐つけられちゃった
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