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 他国に保護を求めて脱出済みとは手回しが良すぎる。

 やはりミカエルが黒か。


 しかし何故?

 そして手紙はどうやって?

 坑道の扉の破壊もどのように?


 謎が残る。


「ヴィート氏は何と?」

「奴はミカエルに次の様に保護を申し込まれたらしい『此度のコウモリ大発生は私を弾劾に追い込むための罠である』と」

「無実なら残って弁明すれば良いではないか」

「こうも言っていたらしい『自分はポリオリが謀反を起こさぬよう監視する役目を王都から賜っていた。実際、最近のポリオリには不審な動きが見られていた』とな」

「何をどう見れば我々が不審なのだ。清廉潔白なのは明らかであろう!」


 王子は声を荒げた。

 手紙についてはどうなのか気になる。


「怪文書もミカエル氏が出したってことでいいんですかね?」

「それについてヴィートが尋ねると『バルベリーニに手紙を出したのは私ではない』と語っていたそうだ」


 どういう事なのだろう?

 王子が長官に訊く。


「当然、父上はバルベリーニに罪人の引き渡し要求をしたのでしょうな?」

「無論だ。しかしミカエルが犯人である証拠がないと難しいだろう」

「証拠、、、」

「犯行計画のメモの発見や共犯者の密告、無いとは思うが本人の自白がなければ引き渡しには応じまい」


 バルベリーニ領の皆さんもグルなのだろうか?

 前からポリオリを狙ってたみたいだけど。


「長官、バルベリーニがポリオリをねらう理由って何です?」


 長官は顎に手をやった。


「以前、属国になれと迫られた時は単に領土を広げたいのだと思っていたが、、、」

「バルベリーニの財政ってどうなんです?」

「穀物の栽培に適した広大で豊かな平野と、ブドウ栽培に適した雨の少ない丘陵の両方を有している。夏城と冬城の両方を持つほどには豊かだ」


 金に困っている訳ではないのか。


「豊かであればあるほど強欲になるものだぞ、オミ」


 王子の助言が入る。

 確かに。金は幾らあってもいいもんな。


 でもなあ。


「ねえ王子。一年のうち半分が行き来できなくなる土地なんて欲しいですかねえ?」

「欲しいのだろう」

「正直言ってポリオリって直轄する旨みがあんまりないと思うんですよね」

「何だと?」


 言い方が良くなかったか。

 ポリオリを腐すような言い方をして王子の機嫌を損ねてしまったかも。


「ここはひとつバルベリーニの立場になって考えてみましょう」

「ふむ」

「王子もご存知の通り、ポリオリの主力産業は懐中時計の生産とガラス製品の生産です。それを輸出するにはバルベリーニを通らないといけない。だったら儲けは少なめですが通行料を今後ずっと取り続ける方が安全で楽です」


 王子は頷いた。


「それはそうかもしれん。しかし直轄すればその儲け全てが手に入るのだ。欲しいに決まっておろう」


 しかしこれは今だけのバブルだ。

 バブルはいつか爆ける


「未来のことを考えてみますと、ポリオリの先行きはあまり楽観できないと思うのです」

「どういうことだ、説明してみせろ」


 俺は指を立てた。


「懐中時計は他所より先んじていたからアドバンテージで儲けていますが、これから先は違います」


 なにしろこの世界にはまだ特許や知的財産権というものが無いのだ。


「我が国の時計技術は各国の職人に真似されて各地で作られるようになるでしょう。そうすれば値段は下がる一方です」

「確かに。王都産の時計とやらが出回り始めたとか聞いた事があるな」


 もうロンド氏の開発した懐中時計がリリースされてから十年以上経っているのだ。当然といえば当然だろう。


「となると、この先ポリオリの主力産業はガラスボトルのカイエンへの輸出のみとなります」


 王子は手を顎に当てた。


「ふーむ、、、」


 少々耳に痛い話ではあるよな。

 自分の国の主力産業の先行きが暗いなんて。


「ポリオリを直轄するとなると、近い未来、飢えた民に援助を与える必要が出て来ます。明らかにお荷物です」


 王子は考え込んだ。

 長官は面白そうに王子を見守っている。


 暫く考え込んだ王子は口を開いた。


「バルベリーニはそう予見していると?」

「はい、おそらく。何しろバルベリーニはかつての没落寸前のポリオリを見て知っているのです。そして、当時のその段階では直轄が最善手でした。王家は小さく、既に国民も減っていましたから」


 王子は苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 しかし幼い頃にポリオリが非常に貧しくて存続が危ぶまれていた状況だったことくらい知っている筈だ。


「つまり?」

「今では国民も増え、王家も力を付けた。バルベリーニがポリオリを手に入れたがっていると考えるのは間違いということです。リスクと負担が大き過ぎる」


 王子は耐えきれないように荒々しいため息をついた。


「だったらヴィートの姉君への求婚はどう見るのだ。血の繋がりが出来てしまったら援助しなければならなくなるだろう?」

「だって、長官にはそれくらいの価値がありますから」


 王子は目を剥いた。


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